表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
味方を殺した罪で事実上追放された私は、死んだと見せかけて旅に出ることにしました 〜生きているとバレて戻ってくるよう命令されてももう遅いです〜  作者: 横浜あおば
第3章 凋落王政の国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/86

第38話 別れの時

 リュウによる会見が終わったと同時、電話が鳴り響いた。


「はい、漆原うるしばらです」


 美空みくが受話器を取ると、慌てた様子のティーラシンの声が聞こえてきた。


『漆原様、テレビは観ていましたか?』

「ええ。どうやら私は、テンシャンから宣戦布告されたみたいですね」

『そこでこれから、王宮まで来て頂けないでしょうか? 一度話し合いを行いたいと思いまして』

「分かりました。すぐに向かいます」


 やはりこういう流れになるか。

 王室側は自分のことを守ろうとしてくれている。きっとどうやって切り抜けるかの相談をしたいのだろう。


 受話器を置いて振り返ると、メイフェンとシェンリーが不安そうな表情でこちらを見つめていた。


「美空さん、大丈夫なんですか?」

「美空お姉さん、どこも行かないよね? ずっと一緒にいてくれるよね……?」


 心配してくれるのは嬉しい。引き止めてくれるのも嬉しい。

 でも、もうここは自分の居場所ではなくなった。


 美空は姉妹の方へ向き直り、真剣な眼差しを向ける。


「私はこの国を守るために、行かなくてはいけません。そして、生きて帰っては来られないでしょう。……シェンリーさん、メイフェンさん。短い間でしたが、ありがとうございました。今までに無いくらい、とても楽しい時を過ごせました」


 最後に深く頭を下げ、そして笑顔を見せる。

 本当に楽しかったのだと、感謝しているのだと、心からの想いを込めて。


「美空さん……」


 俯き、溢れる涙を袖で拭うメイフェン。


「美空お姉さんはすっごく強いんだよ! だから、絶対に死なない! いやだ、そんなの嫌だよ……」


 勇気付けようとしながらも、素直な感情を抑えきれないシェンリー。


 二人の涙が痛いほど心に突き刺さる。

 本音を言えば、自分だって離れたくはない。

 しかし、美空が行かなければこの国は壊滅する。そうなれば二人を守ることも叶わない。行くしかないのだ。


「シェンリーさんとメイフェンさんには、これから先もっと楽しいことがあります。素敵な出会いがあります。だから、そんなに泣かないでください」


「私が今生きているのは、美空さんのおかげです。美空さんに出会わなければ、私はどうなっていたのか……」

「どんなに楽しいことよりも、どんなにすごい人よりも、私は美空お姉さんがいいのっ! 泣かないでなんて無理だよ……!」


 そんなことを言われると、自分まで泣きそうになってしまう。

 美空は姉妹に背を向け、涙を拭った。

 そして最後に、笑顔で振り向いて告げる。


「さようならは、私も辛いです。だから、またお会いしましょう」


「うんっ、またね!」

「はい、早く帰って来てくださいね」


 この別れに、『また』なんて無い。絶対にここに戻っては来られない。

 それでも美空は、また会おうと言った。


 その理由はただ一つ。シェンリーとメイフェン、その姉妹の笑顔を目に焼き付けておきたかったから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=550432391&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ