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味方を殺した罪で事実上追放された私は、死んだと見せかけて旅に出ることにしました 〜生きているとバレて戻ってくるよう命令されてももう遅いです〜  作者: 横浜あおば
第3章 凋落王政の国

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第31話 普通の人生

 翌日、聖暦二〇二一年一月二十日。

 高級タワーマンションの二十八階の一室、リビング備え付けのテレビにはお昼のニュースが流れている。


『速報です。先ほど午前十一時半頃、テンシャン人民共和国のマ・シブン外務大臣とリュウ・ロン軍統合本部長がバンタイ国際空港に到着されました。マ外相とリュウ氏は今晩、チャナティップ国王とティーラトン、ティーラシン両王子と会談を行う予定で、その内容については明らかにされていません。以上バンタイ国際空港からの中継でした』


 映像がスタジオに切り替わると、ソファでテレビを眺めていたシェンリーが口を開いた。


美空みくお姉さん、今日の夜この人たちと会うんだよね?」

「はい、そうですよ」

「緊張しないの?」

「まあ、全くしないと言ったら嘘になりますが……。なるようにしかなりませんからね」


 肩を竦めてそう答えると、シェンリーは「ふ〜ん」と頷きテレビに視線を戻す。


「美空さんって、本当に達観してますよね。つい年下だということを忘れてしまいます」


 すると、台所で昼食の用意をしていたメイフェンが話しかけてきた。


「私の場合、特殊な人生を送ってきましたから。一般的な同い年の人と比べられるものでもないかと」

「子供の頃からそんな感じだったんですか?」

「どうたったでしょう……。幼い頃は年相応に笑ったりはしゃいだりしていたと思いますが」

「なんか想像つかないですね」


 美空の子供時代を想像し、メイフェンがクスクスと笑う。


「私は十歳の時から魔法訓練を受け、護衛隊には十三歳で入隊しました。いわゆる飛び級と呼ばれるものですが、皇国ではあまり広がっていない制度なので周りの大人は不思議な目で見ていましたね。護衛隊員になってからは同僚にイジメられていて、いつしか笑うことも無くなってしまいました。今の自分が出来上がった大きな原因は恐らくこれでしょう」


 何でこんなことを話しているのだろう。自分の過去なんてメイフェンには関係の無いことなのに。

 美空は慌てて「忘れてください」と言おうとしたが、それよりも早くメイフェンが料理の手を止め、聖母のような微笑みを浮かべ口を開いた。


「……でも、美空さんの笑顔はとっても素敵です。これからはもっと笑って、子供みたいにはしゃいでほしいです。そんな美空さんを、私は見たいです」


 その優しい瞳で真っ直ぐ見つめられ、美空は思わず泣きそうになった。


 もし自分に違う人生があったとしたら、メイフェンやシェンリーのような友達が沢山いて、普通の少女のように青春を謳歌出来たりしたのだろうか。一緒に笑って、一緒に馬鹿話して、そんな当たり前の学生生活が待っていたりしたのだろうか。


「ダメですね、私は……」


 呟き、美空は溢れる涙を袖口で拭った。

 そして、力強く顔を上げると。


「私のやることが終わって、この国で安心して暮らせるようになったら、一緒に遊園地でも行きませんか?」


 思いつく限りで一番子供っぽいと、そう思える提案をした。


「はい、行きましょう!」

「なになに? もしかして美空お姉さん、遊園地に連れてってくれるの!?」


 それに対し、メイフェンは大きく頷き、ソファに座っていたシェンリーは喜び飛び跳ねた。


 この約束を果たすために、まずはテンシャンとの交渉を成功させる。

 その日の夜。美空は決意を胸に、会談の会場である国際会議場へと向かった。

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