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味方を殺した罪で事実上追放された私は、死んだと見せかけて旅に出ることにしました 〜生きているとバレて戻ってくるよう命令されてももう遅いです〜  作者: 横浜あおば
第3章 凋落王政の国

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第28話 異例の厚遇

 美空みくは口の中の物を急いでスープで流し込む。

 食べながらで良いと言われても、さすがに一国の王子相手にそんな不敬な真似は出来ない。


「まず最初に、一つ謝罪せねばなりません。漆原うるしばら美空様とシェンリーさん、メイフェンさんのことはテンシャン政府から通達がありまして、名前も罪状も僕たちは全て把握済みなのです。しかし、僕はもちろん王族全体の意見として、あなた方を逮捕拘束することや強制送還することには反対です。むしろシャムコン国民の一員として迎え入れ、安全安心にこれからを過ごして頂ければと考えています」


 つまりティーラシンは、自分たちが自衛のためとはいえ警察署を破壊したり高速鉄道を乗っ取ったりしたことを知りながら、この国の永住権を付与してくれようとしている訳か。

 異例中の異例であろう厚遇に、メイフェンも困り顔だ。


「あの、美空さん。これもまた罠なんじゃないでしょうか?」

「可能性は捨てきれませんが、今回ばかりは罠ではないような気がします……」


 小声でそんなやり取りを交わし、美空はティーラシンに向き直る。


「シェンリーさんとメイフェンさんを保護して頂けるなら、これ以上ありがたい話はありません。ですが、王族を助けるという条件の方がはっきりしない限り、受け入れることは出来ません。私は具体的にどうすれば?」


 すると、ここまで静かに状況を見守っていたプロイが口を開いた。


「正直に申し上げますと、わたくし達にはもう何も思いつかないのです。あらゆる政策を講じ、多くの国民と対話し、可能な限りの手は打ち尽くしました。ですが、状況は悪化の一途を辿るばかり。たとえ美空様が何も出来なくても、わたくしはあなたを責めたりは致しません」

「じゃあ、ここで私が匙を投げたらどうするんです?」

「どうするもありません。美空様たちに永住権を与えた後、わたくし達が失脚の道を歩むだけでしょうね……」


 何もしなくても自分たちの安全は保証される。ならばこのままこの国で平和に過ごしてしまえばいいとも思う。

 だが、プロイの悲しげな表情を見ると良心が痛んだ。祖父である国王や父であるティーラシン王子を助けたいという想いがひしひしと伝わってきて、美空の中で助けないという選択肢がどんどんと遠ざかっていく。


「皆様の住居と生活資金は今すぐ用意致します。漆原様、この場で結論を出して頂かなくて結構ですので、協力の件ご検討頂けないでしょうか?」


 ティーラシンの心からの懇願。

 シャムコン王国の王子にここまでされて、無下になど到底出来るはずもない。

 そうでなくとも、まだ高校生ほどの少女であるプロイがこんなに苦しんでいるのだ。彼女のことを放っておくのは美空の信念に反する。


「いえ、検討するまでもありません。是非とも協力させてください」


 美空は立ち上がり、笑顔で手を差し出した。


 こんなすぐに決断すると思わなかったのか、ティーラシンは一瞬虚を突かれたような顔を見せる。そして、勢いよく立ち上がるとパッと表情を明るくして。


「ありがとうございます漆原様。あなたにお力添え頂けるなら百人力です!」


 と、美空の手を強く握った。


「今回ばかりは役に立たないかもしれませんが……」

「そのお心が何より嬉しいのです」


 ティーラシンは本当に困っていたのだろう。

 自分がいくら自信が無いアピールをしても、彼は感謝の言葉を何度も何度も述べ続けていた。

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