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味方を殺した罪で事実上追放された私は、死んだと見せかけて旅に出ることにしました 〜生きているとバレて戻ってくるよう命令されてももう遅いです〜  作者: 横浜あおば
第3章 凋落王政の国

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第24話 王宮に群がる国民

 列車がシャムコン王国の首都バンタイに到着したのは夜八時を過ぎた頃だった。予定時刻より一時間遅れての到着だ。


「はぁ〜、やっと着いた〜」

「長かったね」


 ホームに降り立つや否やシェンリーとメイフェンは大きく身体を伸ばした。


「普通列車で移動するには少々きつかったですね……」


 美空みくも頷き、姉妹の意見に賛同を示す。

 そして、ホームを見回してから出口の方を指差した。


「疲れも溜まっていることですし、早く街に出て食事と宿を探しましょう」


 改札を抜け、そのまま外へ出る。


 本来、隣国へ出入国する際には身分証明書を提示したり危険物チェックをしたりするものだが、ハノミン人民共和国とシャムコン王国は東南同盟の加盟国なのでそれらの手続きが免除されている。

 お尋ね者状態の美空たちにとっては、この制度はとてもありがたかった。


「さて、どちらへ行けば中心街に出られるのでしょうか……?」


 右手には小さな川が流れていて、そこに架かる大通りの橋には数え切れないほどの乗用車や三輪自動車が行き交っている。橋を渡った先の方が栄えているようにも思えるが、土地勘が無いので何とも言えない。


 とその時、大通りを複数の警察車両がサイレンを響かせながら通過していった。


「何かあったのかな?」

「美空さん、この国の治安はどうなんですか?」


 首を傾げるシェンリーの頭を撫でながら、メイフェンがそう問いかけてくる。


「皇国にいた頃は、特段危険な印象は持っていませんでしたが……」


 シャムコンは東南連盟諸国の中でも比較的安全な国のイメージがある。

 皇国系企業も拠点や工場を構え、旅行先としても人気。ただ、近年は台風や洪水など災害が多く、ビジネスや観光には僅かながら影響が出ていると新聞で読んだ記憶があった。


「少し様子を見に行こうよ! 何があったのか分かれば、ここが安全かどうかも分かるでしょ?」


 無邪気に言うシェンリー。だが、その考えは一理ある。

 姉妹を危険に巻き込みたくない思いはあるが、十分に安全マージンをとれば最悪自分が対処出来ると判断し、美空は首を縦に振った。


「そうですね。離れた位置から様子を見てみましょうか」


 美空と姉妹は橋を渡り、緊急車両の進んでいった方向へ歩くこと数分。

 何かの施設の前。そこにはプラカードを掲げた人だかりと、その人だかりを囲む警察官の姿があった。


「これは一体?」

「みんな何してるのかな?」


 遠巻きに眺めてみるも、状況がいまいち読み取れない。

 美空は二人にここで待っているように伝え、もう少しだけ近づいてみることにした。


「とても豪華な建物ですが、誰かの家ですかね……?」


 豪邸と呼ぶにふさわしい建物を横目に、人だかりへと歩み寄る。

 そして、ようやくプラカードの文字がはっきりと視認出来た。


 王室を改革せよ

 議会即刻解散

 不敬罪反対! 直ちに廃止求む!


「これはつまり、ここは王宮で、彼らは王族へのデモ行為をしていると」


 美空は呟き、建物へ目を向ける。

 都会の一等地に広大な面積を有した豪邸。王宮と言われれば確かに納得だ。


 しかし、ここまで大々的に王族批判をする国民がいるとは。

 皇国で皇族を批判しようものなら警保局に逮捕され重い刑罰を科されることになる。


 最初は静かに見守っている警察官だったが、デモ隊が騒がしくなるにつれ、緊迫感が漂い始めた。


「おい、離せ! 俺たちは何も間違ってないはずだ!」

「大人しくしろ! 公務執行妨害の容疑で逮捕する!」


 一人の男性が手錠をかけられ、警察車両の後部座席に押し込まれる。

 それをきっかけに、デモ隊と警察官の衝突が一気に激化した。


 やはりこの国でも王族批判は罪にあたるらしい。


「さすがにこれ以上は危険ですね。早くこの場から離れるべきでしょう」


 美空は踵を返し、シェンリーとメイフェンの元へと急いだ。

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