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味方を殺した罪で事実上追放された私は、死んだと見せかけて旅に出ることにしました 〜生きているとバレて戻ってくるよう命令されてももう遅いです〜  作者: 横浜あおば
第2章 一党独裁の国

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第21話 選択

 国家主席は美空みくに対し、二つの選択肢を与えた。

 まず一つはこの二発でシェンリーとメイフェンを撃ち殺すこと。そうすれば美空の命は保証すると約束された。

 そしてもう一つはそれを無視し抵抗すること。その場合、自分も姉妹も抹殺すると脅された。


 有って無いような選択肢だが、最初からやることは決まっている。


「魔法能力者とはいえ、君も人間だ。命は惜しいだろう? なら、どちらを選ぶかは迷うまでもないと思うがね」


 不敵な笑みを浮かべこちらの行動を観察する国家主席。

 その言葉に美空は小さく頷き、口元を緩めた。


「……そうですね。こんな二択、悩むまでもありません」

「では、引き金を引くが良い。私は君の選択を歓迎しよう」


 美空は引き金に指をかけ、照準をシェンリーに向ける。


「美空お姉さん? 待って、撃たないよね……?」

「美空さん、殺すならシェンリーじゃなくて私を……」


 顔を真っ青にして怯える妹を、姉が肩を震わせながら庇う。

 素敵な姉妹愛。二人の絆が赤く染められる瞬間を待つ国家主席に、美空は最後に問いかける。


「あなたは私の選択を歓迎すると言いました。二言はありませんね?」

「当然だよ。そして約束は守ろう」

「……分かりました。私たちの抹殺、やれるものならやってみてください」


 直後、美空は国家主席に銃口を向け引き金を引いた。

 乾いた銃声が無機質な地下室に響き渡る。


「ぐはっ!」


 何が起きたのか理解が追いつかない国家主席は、撃ち抜かれた胸を押さえながらこちらに視線を向ける。


「逃げますよ。シェンリーさん、メイフェンさん」

「う、うんっ……!」

「あ、はい……」


 姉妹も突然の出来事に困惑している様子だが、ゆっくりしている余裕は無い。宮殿に常駐する護衛がこの異変に気が付くのは時間の問題だろう。いや、既に気付いていても不思議じゃない。


「ま、待て……! ここから逃げられると思わないことだな……」


 苦しそうにしながらも、なお抵抗を続ける国家主席。

 美空はそちらへ振り返り、無感情に告げる。


「あなたはこの国の誇りを汚しました。引き金を引いたのは私ではなく、この国を正すために命を賭した軍人が引いたのです。私が抹殺される条件は満たされていません」

「戯れ言を……」

「それでは角度を変えましょう。あなたは強者の懐に入り込むことが最善手だと言いましたね? この場において強者とは誰でしょう。これを理解していなかった時点で、弱者は負けなのですよ」

「小娘が、調子に乗りよって……。今すぐ地獄に葬り去ってやろう」


 国家主席が腰のポケットに手を入れ、何かを取り出す。

 それを見て、美空は思わず目を見開いた。


「そうだ、この宮殿の爆破スイッチだよ。私が押した瞬間、建物ごと御陀仏だ」

「そんなこと、させませんよ」


 美空は右手を伸ばし、暴挙を防ぐべく魔法を発動させようとする。

 しかし、それより早く国家主席はスイッチを指で押し込んでしまった。もう爆破は止められない。

 多くの犠牲が出ることは明らかだが、自分ではどうすることも出来ない。

 仕方なく、美空は発動予定の魔法を切り替えた。


「魔法目録十五条、転移!」


 姉妹の身体を引き寄せると、同時に視界が光に包まれる。

 爆炎が襲う寸前、美空たち三人は宮殿から脱出することに成功した。




「この私が、あんな小娘に負けるなど……。魔法能力者、彼女たちの評価を改めなければな……」


 炎に飲み込まれた地下室の中、国家主席は負け惜しみのように小さく呟く。

 あっという間に火の手は広がり、死を悟った国家主席は静かに目を閉じた。

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