死神に祈りを
「誰か私を車でひいてくれますように」
肩に強くくい込むランドセルの紐をギュッと
握り締めながら
初めて死神に祈った。
呪文のように繰り返し繰り返し
5㎞の通学路を、友達と流行りのテレビアニメの主題歌を歌いながら、死神とコンタクトをとろうと全力で祈った
途中、保育園の園長先生の家の横を通る
通学路を挟んで向かいには園長先生の家の農機具
小屋がある。いつも少しだけ農機具小屋の扉は開いている
覗こうと思えば、たやすく覗けるのだが、なんとなく農機具小屋の中を覗く事が怖かった。
怖かったと言うより
覗くにはまだ早いと感じていた。
まだ早い匂いがしたからだ。
今は2月。雪が積もる細い道を夏スカートとセーターという奇妙な組み合わせの服を着ている
私はアップリケをしたダサいコーデュロイのズボンが大嫌いだった。
母親が繕ってくれたズボン
履くと減る気がしていたから履かなかった
だから、大嫌いという魔法を自分自身にかけた
ある日保育園から帰ったら母親はいなくなっていた
それからコーデュロイのダサい大嫌いなズボンは履いていない
あれから4年経ち、私は今小学3年生です
今日も
「誰かが私を車でひいてくれますように」
と祈っている