終わった不幸と始まった不幸。
これから、頑張っていきますので、よろしくお願いします!
ああ、誰でもいい...助けて...
俺は、目覚めると、知らない部屋の床に寝転んでいた。そこは、酷くボロボロで、臭いのする部屋だった。
床や壁、天井などが木で、できている。丸太を組んだような感じだ。その丸太も、カビが生えており、非常に汚い。隙間も、いたるところにあるので、今にも壁が倒れてきそうだ。しかも、臭い。本当に、臭い。
「ここ、どこだ?」
俺は、床に寝転がったまま言った。
俺は、この部屋に入った覚えはない。ましてや、こんな部屋で、寝てたなんて。こんな部屋に、好きで入る奴なんて、ホームレスぐらいだろう。
というか、俺は一度死んだはずなのだ。誰かに言ったら、お前バカが?と言われるだろう。でも、一度俺は、死んだ。いや、本当に。
両親が、一家心中を行ったからだ。
理由は、借金を返しきれない、と両親が諦めたからだ。借金は、どんどん増えていった。なんで、借金することになったのかは、知らない。両親に聞いても、はぐらかされたからだ。
そして両親は、自分達だけで死ぬのは、怖かったらしい。俺を巻き添えにした。
俺は、両親が心中するのを知り、逃げようとした。でも、両親から逃げきれなかった。
あれは、本当に怖かった。
鬼の形相をした父に、追いかけられ、玄関からでる前に、捕まった。その後は、リビングに連れ戻された。抵抗する力なんて、なかった。
そして俺は、包丁を持った母に刺された。腹の当たりをグサッと。血が吹き出す、俺を見て両親は、何も言わなかった。ただ、冷たい視線を向けられただけ。もう、俺のことを大事に思ってないのかと思った。実際そうだったのだろう。
借金は、優しい両親でさえも、変えてしまったのだ。
俺は、燃えるように痛い傷を、どうにもすることができなかった。腕はもう、動かなかった。そのまま、目だけを両親に向けると、母が自分のことを刺し、父は倒れた母の体から、包丁を抜いて自分を差した。
その時、俺の目は、死ぬ両親の姿が焼き付いた。もう、忘れることは、できないだろう。
今になって思えば、本当に不幸な終わりかただった。
でも俺は、生きている。どうして?考えても仕方がない。
そう思って、床から立ち上がり、ドアのない出口に向かって歩いていると、足元から、何かを踏んだ感触がした。
「なんだぁ?」
俺が、自分の足元を見ると、そこには、薄汚れた鏡が落ちていた。鏡の一部も割れている。俺は、それを拾って、鏡に映った自分を見た。
「これが俺?」
そこには、俺の知らない顔があった。15とか16歳ぐらいの、まだ幼さの残っている顔だ。
床などの汚れで、髪は薄黒く、ところどころ緑のところがある。多分、元は緑色だったのだろう。頭の皮膚には、白い粉が。明らかに洗っていない。
そして、顔は整っているものの、汚れている。生気はなく、やつれている。ところどころ、腫れている部分もある。それが、整っている顔を、全て台無しにしている。
これが俺?え?顔が元の俺と違うよな?入れ替わった?いや、それはないだろう。他は...まさか、転生?それも、ある程度肉体が育ってから、前世の記憶が戻るやつ。でも、前の記憶ないしなぁ。でも、転生だろう?よっしゃ!
俺は、浮かれていた。転生だったら、死んで、終わったはずの人生をやり直せるから。
でも、その浮かれていた気持ちも、すぐに消え失せた。
出口から誰かが入って来たからだ。誰だ?と思い、入って来た男を見る。その男は、俺の顔を見ると、
「父親に向かって、挨拶もなしか!?」
と言いながら、殴ってきた。その後も蹴りや殴りも加えて、俺に暴力を振るう。
どうやら、この男が俺の父親らしい。クソみたいな、父親だな。挨拶なしで、殴りかかってくるなんて。
「おいおい、返事をしろよ!」
男の暴力は、どんどん悪化していく。
「なめてんのか?!」
「父親を何だと思ってんだ!!?」
「クソみたいな、存在のクセに!」
「ああ、なんでお前なんかが、産まれたんだ!!」
「返事ぐらいしろ!怠け者が!!」
男は、俺の顔から血が垂れているのを見て、「きたねぇ!」と言いながら、俺を殴るのを止めた。いや、あなたも汚いんだけどなぁ。
借金を抱えていた、前世の両親でさえも、ここまで酷くなかった。それに比べて、この男はなんなんだ?
暴力が終わったお陰で、俺は解放され、ホッとした。でも、あの男は、父親らしいので、これからも殴られたらどうしよう?ここが、家みたいだし...怖いな...
一週間後
俺の心配は、現実となった。あれから一週間たったが、男の暴力は止まらず、むしろだんだん悪化していた。
俺の精神は、擦り切れていった。体もそこらじゅうから、痛みがする。でも俺は、まだ淡い期待していた。彼が、暴力を振るわなくなるのではないかと。
1ヶ月後
この頃には、俺の淡い期待も、粉々に砕け散った。俺が、あの男に貰ったのは、暴力と暴言だけだ。
俺は今、家から出て、街の栄えているところを歩いている。おそらく、飲食業で栄えている部分だろう。俺は、まともなのを食わせてもらってないからなぁ。死なない為に食べたのは、道端に落ちていた、ゴミなどだ。
やばい、ここは俺の食欲にとって、本当にやばい。ちゃんとした食べ物があるなんて...
驚いたのは、この世界の建物が、日本にいたころの建物がと、全く同じということだ。街並みも、似ている。ただ、普通の住宅街に、スラムがある。俺の家もこのスラムの中の一つだ。他にも、使う言語なども同じだ。スマホまである。
ここは、日本なのか?でも、みんな髪の色や、目の色も違う。顔立ちも違う。じゃあ、外国?でも、こんなにいろいろな、髪の色が違う国なんて聞いたことない。神のを染めているわけではない。地毛なのだ。赤、水、ピンクなど、いろいろある。それに、スラムなんて...俺が認識があっていれば、日本になかったはずだ。まぁ、本当は、あったのかもしれないが。
「おい!スラムのガキ!どっか行け!薄汚い」
周りの野郎から言われる。どうやら、俺はスラムのガキらしい。はは、やだな。でも、確かにそうだ。なんで、まだ生きようとしてるんだか...
俺は、野郎の言うとおりに、ここから離れる。別に、怒ることはしない。自分でも、食べているところに、汚れている奴なんて、いてほしくない。
しばらく歩いていると、公園を見つけた。夜なので、遊んでいる子供はいない。俺は、公園のベンチに座り込んだ。歩き疲れたのだ。ろくなものを食べてないからな。栄養失調なのだ。
俺は、どれくらいここにいたのだろうか?気づくと、目の前に女性がいた。その女性は、俺に笑いかけた。
「どうしたの?こんなところで?あなたの年頃の子は、もう家に帰る時間だよ?」
このときからだろう。俺の人生が、変化し始めたのは。
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