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茜の引っ越し
俺はやっとこの春から中学生で、茜は大学の法学部に進学。家からでは遠いので、引っ越すらしい。そうなると、色々な男が目に入るだろうし、気持ちも変わるかも知れない。かく言う俺も、中高一貫校に合格したので、通学時間が長くなる。虫の心配と、いい奴ならばと思う気持ち。相反するようだけど、茜を取られたくないという気持ちも自分に確かにあった。
「透君、絶対に遊びに来て、むしろ来てくれなきゃ怒るから」
こんな風に言うくせに、茜ははっきりと自分の気持ちを言わない。年齢を気にしているのか、言われたいのか。あくまでも軽く好きだよ。とは言うけれど。
「けど茜ちゃん、お互いに勉強も大変になるし」
「大丈夫。透君頭いいから」
そりゃ、中卒まで人生経験した記憶があるからな。
「泊まりに来てもいいんだよ?」
おいおい、茜さん?
「ていうか来てくれなきゃやだ」
「優しい透君は、寂しい茜の所に来てくれるよね」
「分かったよ。行くってば…わ!」
茜がぎゅっと抱きついてきた。
「透君大好き!」
もー、何処までの大好きなのか。…当たってるし。妹扱いも、限界なのかな。