久しぶりの出会い
始めは弟のように好いてくれてると思っていた。けど茜の気持ちは、多分本物だ。前世も含めて彼女なしな俺にも分かった。けど茜は妹で、ずっとそう見てきた。
俺はこれから、どうしたらいいんだろうな。おむつを変えた事もある子を、妹を…いっその事、全て話してしまうか?いや、どう考えても信じられないし、かわいそうな子を見るような目で見られたくはない。
アカトリエル、俺、どうしたらいいんだ?こんなに近くに転生しなければ。いや、記憶がなければこんなに悩む事もなかったのに。アカトリエル!
「呼んだ?」
うっすらと見えるその姿は、確かに自分を転生させてくれた天使だ。
「ていうか何で呼べる訳?ちょっとあんた、おかしいんじゃない?」
「ひ…久しぶり。普通は呼べないのか?」
「一応呼べないことはないけど。少なからぬ関わりがあるから。でも覚えているはずないのに」
「いや、覚えているけど?アカトリエルの事も前世の事も」
「あちゃー、やっちゃったわ。忙しかったから、忘れさせるの忘れてた。透君、ごめん」
「記憶があったのは、転生特典じゃなかったのか」
「そんな訳ないでしょ。要らない混乱を招くだけだし。近くに転生させて、本来受けるべきだった愛情なんかの気持ちを、多少なりとも受けさせるためよ。で?どうしたの?」
「それは、どうやら茜が俺を好きみたいで」
「ああ、元妹さんね。良いんじゃない?別に」
「は?良いのかよ」
「だって本来なら覚えているはずないんだし、結婚しても遺伝子上何の問題もないじゃない。後は当人同士の気持ち次第じゃない?透君としてはどうなの?ちっちゃな妹さんより小さくなっちゃって、戸惑ってるとは思うけど。今更記憶消す訳にいかないから」
「消さない方がいいよ。二人ずつの両親も、茜の事も覚えていられて嬉しかったから。ありがとう、アカトリエル。俺、この家に転生出来て良かったよ」
「そう?ま、頑張って寿命まで生きてくれれば、こっちはそれで良いわよ。今度こそ幸せになりなさい」
「勿論。また呼んでいいかな?」
「それは駄目。本来なら死ぬまで会う事はないんだし、忙しいんだから」
「そっか。だよな。じゃあ、何十年か後に」
「ええ。あなたがいい子で良かったわ」
アカトリエルの姿はすうっと消えた。
「成るようになれ、だな」