楽しい?露天風呂
俺がしょっちゅう工藤家にお邪魔しているからだろうか、親同士も仲良くなり、一緒に食事したりもするようになった。俺としては嬉しい限りだ。
今日も一緒に紅葉狩り。ただ、父さん達は参加しない。父さんは相変わらず忙しく、工藤父も、友人とゴルフだそうだ。好きじゃなくても、大人は、付き合いが大事。一緒に紅葉狩りに行けなくて、残念がっていた。
大人は楽しめても、子供はそうはいかない。葉っぱの色が変わったからって、嬉しくもない。茜はイヤホンで音楽を聞いているし、俺もただぼんやりと外の景色を見ている。
「透ちゃん、もう少しだよ」
「?何が?」
「お母さんから聞いてない?露天風呂に入るんだよ」
「そうなの?」
「うん。私が体洗ってあげるね」
「えっ…僕は男湯に」
「お父さんたちいないんだから、駄目だよ」
「だ、駄目だよ!」
「小学1年生が、一人で入る方が、駄目だよ。どうしたの?透ちゃん。恥ずかしいの?」
「当たり前だよっ!」
「良かったじゃない?大好きな茜お姉ちゃんが、洗ってくれるって」
「僕、恥ずかしいよ」
「何言ってるのよ。お家のお風呂じゃないんだから、駄目。10才になったら一人で入っていいから」
「酷いよ。母さん」
「さあ、着いたよ!…ほら、観念なさい」
「透ちゃん、おばさんが洗ってあげようか?」
「じゃあ、それで」
「駄目だよお母さん、弟の体は、お姉ちゃんが洗ってあげるんだから」
「はいはい。茜は、透ちゃんが可愛くて仕方ないのよね」
こうなったら、一番に入って体も洗う。それでさっさとお風呂に入る!
温泉は、内湯が檜で出来ていて、外は結構本格的な露天風呂だ。仕切りの向こう側には色づいた山肌が見え、日本庭園風に造られた一角にも、細いながらも楓が植えられている。
「捕まえた」
「ええっ?!」
「嫌がってたくせに、走って行っちゃうんだから」
振り返ると、タオルを首にかけた茜がいた。こら、少しは隠しなさい!いくら微妙な膨らみでも、女の子なんだから。…別に妹の裸を見たからって、何とも思わないぞ。まだまだ子供だし…うん。大丈夫。
手を引かれ、洗い場に連れて行かれる。油断していた。さっさとタオルを捕られてしまった。…けど、7歳の裸を見られたからって、なんてことは無いはず。…ないったらない。よな?
洗い終えて露天風呂に入ると、やっぱり子供の体では、座ってゆったり浸かる事は出来ない。必死に首を伸ばすが、無理そうだし、疲れる。
茜がそれを見て、なんと自分の膝の上に俺を乗せて、後ろから抱きしめてくる。ちょっとたんま!いくら何でもそれは反則だろう。茜にしてみれば、落ちないようにしてくれているだけ…の筈!!…落ち着け、俺。今の俺は、7歳の子供なんだから。
「気持ちいいね、透ちゃん。私、露天風呂大好き」
いや、こっちはそれどころじゃない。よくラノベでは、精神が体に引っ張られると言うが、全世の記憶をしっかり持っている俺には、そんな事全くない。ドキドキが止まらない。妹だからって、今は血の繋がりもない。俺より6つも年上だし、何と言っても可愛い。
やっと風呂から出た時には、俺は疲れ果てていた。色々な意味で。
「ふふっ、また一緒に入ろうね!」
普段の可愛い微笑みが、この時ばかりは悪魔の笑みに見えた。