茜の気持ち
茜は、中学に上がってから増えた恋バナに、正直参っていた。盛り上がるなら、勝手にやってほしい。茜の初恋は、兄だった。故に一生叶う事はない。兄が亡くなってもう7年。格好いいと評判の先輩も、つい兄と比べてしまう。
亡くなって美化し過ぎているのかも知れない。もし兄が生きていたとしても、半分は血がつながっていたんだから、結ばれる未来は、けしてなかったのだ。
ふと、同じマンションに住む、兄と同じ名を持つ男の子の事を思いだす。懐いてくれてるのは嬉しいけど、何処か子供らしくない。ちっちゃいくせに私の両親を気づかったり、大人顔負けな意見も言う。ラノベが好きで、兄が読んでいた物も、貸したりした。けど、小学1年生がラノベを読んだりするのだろうか?
不思議な子。目が離せない。
「聞いてる?茜。その時、ちょっとだけ目が合ったんだよ」
「そうなんだ。優ちゃんの事、覚えてくれるといいね」
「でも髪も乱れてたし、覚えていない方がいいかも。茜はどう思う?」
「先輩はアイドルみたいなものなんだから、目に止まったもん勝ちじゃないかな。先輩好きな人は、沢山いるんだし」
「そうかも。茜は?まだ好きな人出来ないの?」
「当分要らないかな。出来たらちゃんと教えるから。ごめんね」
帰り道、公園で遊んでいる透ちゃんを見かけた。知らず、口元が緩む。
「お姉ちゃん!お帰りなさい」
珍しく今日は、同じ年頃の子と遊んでいる。入学して2カ月。友達も出来るか。
頬に付いた泥を拭ってやると、くすぐったそうに笑った。
「お姉ちゃん、部活はやらないの?」
「運動苦手だし、帰宅部だよ。進学校狙っているから、塾には行くと思う」
「それって…」
透は、口籠もる。もしかして、俺を意識しているのか?
「どうしたの?透ちゃん」
「…何でもない、よ」
とてもそうは見えなかったけれど、追求はしなかった。誰かが兄の事、透ちゃんに話したのかな?…ううん、あり得ないよね。噂話だって、7年も前のこと、言ったりしない。
「そうだ!前に借りた本、読み終わったよ?また違う本、借りてもいい?」
「いいよ。お友達にばいばいして」
「うん!また明日ね!」
茜は、透の小さな手を握った。ぷにぷにしてて、可愛いな。
三月中は忙しいので、更新遅れます