実家?に帰る
1歳になり、よちよちながら歩けるようになった俺は、近所の公園に連れてこられた。地面は近いし、バランスも悪くてちょっと怖い。
ちなみに俺は、生まれ変わりの事も文字が読める事も話してない。まだ口がうまく回らなくてうまく説明出来る自信もなかったから
ランドセルを背負った近所の小学生が走ってくる。そのうちの一人に、目が止まる。茜、なのか?俺が死んだ時は、来年から小学生だった筈だ。でも、面影はある。耳の上で二つに纏めたツインテールは、髪の毛量が少ないので、ねずみの尻尾みたいだ。
「あかねー?」
「えっ、この子誰?優ちゃん知ってる?」
「知らなーい。でも可愛いね」
母さんが、迎えに来たようだ。
「そこのマンションに住んでいる宇賀神透よ、よろしくね?」
「茜ちゃん家だね」
「うん。工藤茜です」
「あら、良かったわね、透。仲良くしてね。茜ちゃん」
小学校3年生位だろうか?どうやらすぐに転生させてくれたらしい。こんなに側に転生させてくれた事も、茜に会えた事も、何もかも感謝感激だな。おまけにこんなに可愛いくなっちゃって、兄ちゃん今から虫の心配をしなきゃならないよ。
あれから月日がたち、俺も今日から小学生だ。でも前世の記憶がある俺にとっては、今更って気になる。あれだ、体は小学生心は大人な大人気推理アニメを思い出す。
茜は今日から中学生で、懐かしい制服を着ている。いいよな、セーラーって。昔は何とも思わなかったけど、茜が着ると、感慨深い。
「透ちゃん、ピカピカのランドセル、良いねー、可愛いよ?」
「お姉ちゃんも、可愛いね」
割と本気でそう言ったけど、笑って流されてしまった。今日から電車通学だけど、痴漢とか心配だな。茜は可愛いから。
母さんが出て来て、茜に定期券を渡す。久しぶりに見るけれど、少し痩せただろうか?…ごめん、母さん。親より先に死んだ親不孝者で。
「行ってらっしゃい、茜。気を付けて。透君も今日から学校かな?ランドセル姿、格好良いね!」
「ありがとう、お姉ちゃんのお母さん」
今更言えないよな。どう考えても常識じゃ考えられないし、下手すりゃ精神病院行きだ。
日曜日、思い切って遊びに行ってみた。久々に実家に帰る感覚で、敷居が高く感じる。
「あら、透君、いらっしゃい」
母さんに招かれて、懐かしい我が家に足を踏み入れる。リビングには父さんがいて、新聞を読んでいた。
転生してから初めて見る父さんは、老けたなと感じた。何度か釣りにも連れて行ってもらった。その場で塩焼きにして食べた魚は、美味しかったな。
いつの間にか泣いていたらしい。母さんが、顔を覗き込んできた。
「どうしたの?茜ちゃん、すぐ来るわよ?」
「うん?その子は?」
「前に言ったでしょ、宇賀神さんの所の透君」
「ああ」
「茜ちゃんのお父さんは、釣りをするの?」
釣った魚の写真が、相変わらずコルクボードに貼り付けてある。
「ああ、それな。…最近は行ってないけど、おじさんは凄いんだぞ。こんな大きな魚も釣っちゃうんだ」
両手いっぱいに広げて見せるけど、嘘だって息子だった俺には分かる。相変わらずだな、父さん
「透ちゃん、いらっしゃい。寝てたからごめんね」
顔色は悪くなさそうだから、寝坊か?ちゃんと着替えている所は、偉い。…あ、寝癖ついてる。
「お姉ちゃん、遊ぼ」
「いいよー?公園に行く?」
「お家がいいな。お姉ちゃんの部屋行きたい」
無邪気なふりをして、元俺の部屋を開ける…やばい。また泣きそうだ。
部屋の前で固まる俺を、茜は向かいの部屋に、手を引き入れる。
ざっと見ただけだけど、綺麗に片付いていた。家具なんかはそのままで、勉強机の上には、花があった。好奇心で覗いてしまったけど、失敗した。心が折れそうだ。
「何して遊ぼうか?ゲームあるよ」
「うん!」
もう少しほのぼのいきたかったんだけど、ちょっと重いですね