第1話 転生の儀
セリフばっかりになってしまいました。難しいですね。
「……あれ、俺、生きてた?」
一寿は意識を取り戻すと、記憶の最後のシーンを思い出した。
「そうだ!あの女の子」
しかし、周りを見渡しても女の子どころか人の気配がない。静まり返ったその場所で、一寿は混乱していた。
「どこだ?ここは……」
そこは樹々に覆われ、森の中かと思われた。一寿の居る空間、およそ半径50mくらいだけ樹々が避けるように立っていた。
「ここは、転生の間です」
とても透き通った声が聞こえた。
「貴方は、以前の世界で亡くなり、魂だけの存在となっています」
「……あなたは?」
「私は、女神ビワフローラ。
通常、魂は女神により管理され、時期を待った後、転生することになりますが、貴方の場合、特例の措置がとられることになりました」
そう女神は語り始めた。見た目は膝まで伸びた長い金色の髪、昔のギリシャ神話に出てきそうな白い服に身を包み、錫杖のようなものを携えていた。
まだ夢か半信半疑なのだが、ひとまず話を聞きたい。
「どういうことですか?」
「……それは貴方が助けようとした少女に関係していることです。覚えていますね?」
「まぁ、はい」
「詳しいことは話せませんが、それが理由です。貴方は身を呈して少女を助けようとした。そのことへの報いだと思ってくれれば問題ありません」
「助けようとした、と言いましたが、結局その女の子は助かったんですか?」
「そうですね」
「それならまぁ……よかったです」
しかし、今の会話からするとあの女の子は女神の関係者だったのでは?考えすぎだろうか。
「ただ、貴方はあの世界で死んでしまったので、魂を初期化せずに同じ世界に戻すことは神界の法で禁じられています。ですが、元居た世界とは別の世界、異世界と呼ばせていただきますが、その世界で転生するのがよいかと考えています」
「もちろんあなたが望むのでしたら、ですが」
ふむ……死んだことは分かった。いきなり異世界って言われてもリアクションに困るもんだなぁ。
「その異世界というところは、どういった世界なんですか?
「大きな違いは、魔法が現実に存在し、人間以外の人族が存在することですね」
まぁテンプレ通りの異世界ってところか。だとしたら、何か特別な能力も欲しいところだが。
「わかりました。転生しようと思います」
「貴方は女神の力と相性がよく、私の加護も有意に役立つでしょう。転生先の世界では人に害を為す魔物も存在するため、私の加護のある武器を授けましょう。何か望みの武器はありますか?」
「なら、刀にしてください」
大体こういうのって剣とかなんだろうけど、別に勇者でもないし、やっぱり刀がカッコイイと思う。
「危険かもしれないのに、まったく動じていませんね」
「別に好きに生きていいんでしょう?これでも異世界生活は憧れでもありましたし」
「えぇ、貴方が望むように進めばよろしい」
「でしたら問題ありません」
「……では、そろそろ転生の儀を始めます」
そう言って女神は呪文のような言葉を紡ぎ、視界が少しずつホワイトアウトを始めた。
初めて見る魔法はとても神々しく、感動すら覚えるほど暖かかった。
少しずつ、自分の存在が消えていくような感覚を感じる。
今までの人生は普通に暮らしていたらそれなりに幸せだったのかもしれない。
けどそんな日常に自分は不満を感じていた。特に秀でた才能もあるわけでもなく、
必死に打ち込めるものがあったわけでもない。高校2年になっても将来のことは特に決まっていなかった。
大人になったら社畜となって愚痴を言うような光景だけが想像できてしまった。
自分で言うのもなんだが、性格は暗いと思う。子供のときはもっと普通に笑ったりできたはずなのに。
子供に戻れば思い出せるんだろうか。
「言い忘れていましたが、武器は転生後10歳を迎える日より召喚が可能になります。
それでは、よい人生を。……悔いることのないように」