2話 異世界転生1日目 転生
作者自身設定に矛盾があるのではないかという不安に駆られています。
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1日目
真っ白な空間に自分はいた。
それはどこまで続くのかもわからないそんな空間。そしてそこには知らない何人かの男女と、世にも
美しく、世にも怖く自分たちとは決定的に違う何かがいた。
白くただ白く、黒くただ黒い。本来同時に持ち合わせることができない相対する2面の顔を持ち、それでいて動物的本能に訴えてくるかのような美しさそして怖さを持っていた。
それを見て畏怖する者、呆然とするもの、混乱する者、そんな俺らを尻目に、それはこう言った。
「あなた達に、私たちの世界で魔王と呼ばれる存在をたおしてほしい。」
「あなた達は、選ばれた。」
「お願い」
ゆっくりただゆっくりと紡がれていくその言葉、感情を持ち合わせていないようなその言葉。
しかし俺たちは何も発することができなかった。いや発することが許されなかった。
時間にして30分くらいたったのだろうか。いつの間にか目の前にあったはずの存在は消え、そして意識も光に包まれていくかのようにすっと遠のいていった。
彼らが目を開けるとそこには彼らが普段住んでいる場所とは明らかに異なった場所にいた。
そこは4方石壁に包まれ、窓もなく、ドアもも一箇所しかない。暗く、湿っぽく不気味な部屋。
これが夢ではないことは彼らは直感的に理解した。
それと同時に扉が開く音がした。
光のさす方向に目を向けたとき、そこには中世ヨーロッパの王様のような人物と、彼らがアニメやゲームなどでみたことがあるようなような魔法使いがいた。
彼らは満面の笑みを浮かべた。
「転生者達よ、ようこそ我が国へ。君たちを歓迎しよう。」
「ここはどこなんだよ!!」
「俺たちはどこにいんだよ!!」
気性の荒そうな男が叫び、その怒号に誘発されるかのように周りの男女が叫び声をあげた。
その怒号は収まることを知らず、しかし王はそれに圧されることもなく、うざったいような態度をとることもなかった。
しかしなにを考えているかわからない、そんな態度が冷静になった者たちに、不安と恐怖を与えていた。そんな態度に業を煮やした激情に駆られていた者はその態度をとる者達のほうに、駆け出し、その顔に一撃をくらわせようと拳を振り上げた…
その拳が振り下げようとするその一瞬の硬直の間に、彼の時間は止まった。
そして崩れ落ちていくその時間を彼らはスローモーションで再生されているかのように感じていた。
崩れ落ちた時彼らは恐怖に駆られていた。未知なることへの恐怖。自分もその者のようになるのではないかという恐怖。先ほど騒いでいたものでさえ一切怒号をあげることもなかった。
そして静寂がやってきた。そしてその静寂を王でありそうな者が破った。
「先ほどは驚かせてしまって済まない。先ほどの状況では、何を言っても聞いてもらえないと思ってね。安心したまえ、彼は眠っただけだ。まず君たちは君たちの世界から私たちの世界に来てもらった。魔王を倒してもらうために」
「まずはこんな場所ではなくしかるべき場所に案内しよう。なにもせずに私たちについてきてもらいたい。君たちが傷つく姿を私は見たくないからね」
彼らは拒否という選択肢がないことを悟り、いわれるがままについていった。