異世界転生0日目 prologue
1日目
『大学から帰って飯食って寝た。
意識がはっきりしたとき真っ白な空間に自分はいた。
それはどこまで続くのかもわからないそんな空間。そしてそこには知らない何人かの男女と、世にも
美しく、世にも怖く自分たちとは決定的に違う何かがいた。
それを見て畏怖する者、呆然とするもの、混乱する者、そんな俺らを尻目に、それはこう言った。
「あなた達に、私たちの世界で魔王と呼ばれる存在をたおしてほしい。」
「あなた達は、選ばれた。」
「お願い」
そして奇妙な異世界での生活が始まった。それを忘れないように、思い出にのこるように、
無駄になんないように、そして冗談のようにこの話を語れるように、この日記に残していきたいと
思う。』
0日目
伊達裕也は、大学にて暇を持て余していた。
講義を終えたら仲のいい友人と喋って遊んで帰る。
そんな生活を送っていた。
彼には不満があるわけではなかった。ただ毎日が胸躍るような大学生活とは無縁な生活を送っていた。
しかしこの日は彼の友人と講義の予定が会わなかったため彼のこの日の最後の講義に出席したあと早々と一人家路につき、一人自室で過ごしている。高校時代仲が良く今は難関大医学部を目指し浪人している友達とラインで会話しているうちに、彼の胸中で哀しさであふれていた。
なぜ自分はあの時頑張り切れなかったのだろう
なぜ浪人するまでの熱意を持てなかったのだろう
なぜ自分の力を過信してしまったのだろう
なんで浪人している友達に劣等感を感じるのだろう
彼の中にあるのは、自己嫌悪と後悔のみだった。どうしても今通う大学に熱意を持てなかった。
受験時期になっても真剣に勉強に取り組むことができず、彼は元々の第一志望からかなり下げた大学に受験していた。
彼は当然何をすべきかもわかっていた。必要なのはそこに入って何をするべきかも重々承知していた。
だが実行に移すのが彼には異様にも難しかった。
努力できることも重要な能力、それは一朝一夕でできることではない。
-----そして努力しきれない自分、不合格だった時まっ先に出た感情に悲しみはなかった。ただ悲しむほどの熱意を持てなかった自分に憐れみを持った。
努力している友人と自分をどうしても比較してしまう。そして自己嫌悪に陥ってしまう。他者と比べ何をしているかと比較してしまうため自分自身を否定してしまう。そんな状況であった。
友人との会話を終えて、食事、入浴を済ませ就寝する準備に入った。
最近彼の寝つきは、最悪であった。将来の自分に関して考えずにはいられないのであった。
そして彼は、この日の友人とのラインを反芻し、胸中葛藤を続けた。
彼の意識が沈むのには相当な時間がかかった。