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第四話:犬社会、人間社会

僕はそっと家の中へ入っいった。中は静まり返っている。もう皆寝てるみたいだ。部屋に入るとすぐに暖房を入れた。

「寒かっただろ、ごめんな、純平。ちょっと待ってろ。」

そう言って僕は急いで純平の冷え切ったマフラーを首から外して僕のセーターを被せた。すっぽり入って頭だけがひょこんと出ている。

「今ミルク温めてくるからな、ちょっと待ってろな。」

{うん、有難う}

僕は台所に入り牛乳を温めていた。

「本当に良かった。」

僕は心からそう言ってほっと息をついた。どうやってこれから育てていこうか迷うけど取り合えず生きていて本当に良かった。僕は暖まった2人分の牛乳を持って部屋へ入り、器を純平の前に置いた。

「あったまるよ、さあ、飲んで。」

{有難う}

純平と僕は牛乳を飲み始めた。温かい牛乳が喉を通り体を溶かしていくのが分かる。

「ごめんな、純平。もう、絶対あんなことしないからな。」

僕は純平の頭を撫でながら心に硬く誓った。次の日僕は満に早速相談をもち掛けていた。

「んー、困ったな。どうしようか。」

満が腕組しながら言った。もちろん僕は昨日の詳細を詳しく言ったわけではない。家がどうしても反対してると軽く説明しただけだ。

「本当は家で飼いたいんだけどな。」

僕が言うと、

「あ、そうなの?なら飼えばいいじゃん。」

と軽く返してくる。

「だから、そういうわけにはいかないんだって。家では飼えないから何とか飼い手を探してるんだから。」

「まあな。」

「でも、見つかったら、今度こそどうなるか・・。」

僕はそう言って、少し体をこわばらせた。

「どうなるかって、何かなんの?」

不思議そうに尋ねてきた満に、

「え、いや、っていうか家じゃ飼えないし、そしたらまた野良になっちゃうだろ。可哀相だなって思って。」

と、慌てて答えた。

「まあ、そりゃそうだよな。」

「うーーん。」

二人で悩んでいると遠くの方から声が聞こえてきた。振り返ってみると庄ちゃんが小庄太を連れて散歩していた。

「おおー、珍しいねー、三人揃うなんて。」

庄ちゃんが話し掛けてくる。

「ああ、本当だね。昨日はどうも。」

僕が挨拶すると、

「昨日はどうもって?秀一お前昨日庄ちゃん家行ったの?」

と、びっくりした口調で満が聞いてきた。

「あ、いや。道で会っただけだよ。」

「ああ、なんだ。」

残念そうに満が言う。

「なんだって、何かあったの?」

「あるともさ!俺の力作中の力作、NEWプラモがさ。」

満はガッツポーズをしながら言った。

「え、完成したの?」

「ううん、後ちょっと。壊すなよー、庄ちゃん。俺の力作を。」

「だったら、自分の部屋に置いとけよ。何で自分の家で他人のプラモを気にかけにゃならんのだ。」

「まあまあ。そう固い事いわないでさー。」

庄ちゃんの肩を軽く叩きながら満は言った。

「全く、調子のいい奴だなー。秀ちゃん、今は大事な時期なんだから、あんまり近くに寄らないほうがいいぞ。阿呆がうつるぞ、満の阿呆が。」

「それ、どういう意味だよ。秀一、庄ちゃんこそ近寄るな。犬バカがうつるぞ、犬バカが。」

「あ、ひどい。俺と小庄太は友達なんだぞ。行け!小庄太。一発ガツンとやってやれ。」

{了解!}

小庄太は立ち上がって、満に近づいた。

{ウウー}

「冗談だろ、やめろ、小庄太。この前、お前の好きな肉買ってきてやっただろ。」

{あ、そういえば}

小庄太は吠えるのをやめた。

「そういえば、あれはかなり喜んでいたな。まあいい、今回は許してやるか。な、小庄太。」

庄ちゃんが小庄太の頭を撫でながら言う。

{ああ、しょうがねえ。肉に免じて許してやるよ}

小庄太は座りなおした。

「全く、お前小庄太を餌付けしたな。」

「まさか、サービス、サービス。」

「本当に調子のいい奴だ。秀ちゃん、こんな満みたいに犬を肉で釣るような調子のいい大人になってはいけないよ。」

「はあ・・。」

「つうか、俺と秀一、同い年だっつうの。秀一お前も何で肯定的な返事してんだよ。こらっ。」

「え、ああ別に。ごめん。」

「いやいや秀ちゃん、こんな奴に謝る事ないって。ごめんが勿体ないよー。」

「庄ちゃん、あんたね・・。」

横目で見ながら満は言った。

「でも、こんなところで何話してたの?進路相談?んー、でも秀ちゃんはともかく満には必要ないしなー。何の話してたわけ?」

「いちいち、一言多い奴だなー。」

「で、何話してたの?」

「・・えっと・・何だったっけ?」

「・・・満、あんたね・・。」

僕はこけそうにになりながら、庄ちゃんに事情を話した。

「んー、それは、どうしよっかね。」

庄ちゃんは腕を組んだ。

「秀ちゃんはどうしたいの?」

「え・・僕?」

「うん、僕。僕はどうしたいんだい。」

「そりゃ、家で飼えるなら飼ってやりたいけど。」

「んじゃ、飼えばいいじゃん。」

庄ちゃんは軽く言った。満と同じこと言ってる。それが出来てりゃこんなに悩まないんだって。

「家はどうしても駄目なの?」

庄ちゃんが聞いた。

「う、うん・・。僕の家も犬飼ってるし、僕も受験だし。」

「ああ、そうなんだ。秀ちゃん受験だもんなー。あ、そうだ。じゃあ満に飼ってもらええばいいじゃん。」

「そうくると思ったぜ。だから俺も受験生なんだつーの。」

「あ、そうだったっけ。気付かなかったー。てっきり唯のプラモおたくだと・・。」

「本当白々しい。しかも、おたくになってるし。」

「あれ、違った?」

「当ってるよ。」

すぐに話が逸れていく。

「あの、ごめん。純平のことなんだけど。」

「ああー、ごめん、ごめん。純平君ね、って誰それ?」

「あっ、ごめん。その犬の名前なんだ。」

「ふーん、もう名前付いてるんだ。」

「ああ、いや、でもこれは仮っていうか。拾ってから大分経ってるし、何か名前ないのも、呼びにくくて・・。」

「ふーん、成る程ね。でもきっともうその子、自分を純平って認識してるんじゃない?」

「あ、いや、どうだろう・・。」

「名前で呼んだら、振り向かない?」

「あ・・、振り向く。」

「ふーん、もうお手とか出来たりして。」

「え・・、あ・・出来てる・・。」

「結構手掛けてんじゃない、やっぱりそのまま飼ってあげたら?」

「・・でもそうしても駄目なんだ。」

「どうしても?」

「どうしても。」

「泣いて頼んでみるとか。」

僕は首を横に振った。

「じゃ、可愛く頼んでみるとか。」

「・・・。」

しばしの沈黙。

「ごめん。そんな冗談通じなさそうだもんね。秀君のお母さん。」

僕は首を縦に振った。

「んー、じゃあ別に僕の家で飼ってもいいけど。」

・・・・意外な言葉が飛び込んできた。僕は驚いて庄ちゃんを見た。

「本当に、良いの?」

「まあ、別に。向こうが嫌がらなければ。こいつは大丈夫だろうから。」

そう言って庄ちゃんは小庄太を見た。

{ワン ―良いよ、別に。顔が可愛けりゃ}

小庄太は軽く返事をした。

「性格、悪くないよね。たまに犬同士も対立しちゃうから。」

「ううん、凄くいい子だよ。とっても可愛い奴なんだ。」

{ん、可愛い?}

小庄太の耳がピンと立っている。

{それは凄く楽しみだ}

「でも、秀ちゃん、あくまで飼い主は秀ちゃんってことで。」

「え、どういう事?」

「一応僕の家で面倒みるけど、ちょくちょく顔は見せてやってほしいし。受験終わったらもう一度説得して秀ちゃんが飼えばいいじゃん。本当は飼いたいんだろ?」

「うん・・。」

「だから、預かるってことで。どう?」

「うん・・分かった。」

「んじゃあ、決まり。こんなことなら、早く相談してくれれば良かったのに。」

早く相談・・?

「んじゃあ、皆、そろそろ帰るか。」

頭を掻きながら満は言った。

「満、お前・・昨日も庄ちゃん家にプラモ作りに行ったんじゃなかったの?」

僕は横目で見ながら満に言った。

「え。さあ、家帰って勉強しなきゃ。」

「逃げるな、満。」

庄ちゃんが言う。

「僕がこんなに悩んでたのに、お前って奴は、相談もせずにプラモデルだけ作りに行きやがって。」

僕は膨れっ面になりながら満に言った。

「あ、いや。そんな事ないよ。他の奴には色々聞いてたんだぜ、本当に、本当に。」

満があたふたしながら、弁解する。

「お前、ほとんど毎日の様に俺の部屋来てプラモデル作ってなかった?」

庄ちゃんが満に拍車をかける。

「そうだったっけ?幻じゃない?庄ちゃんの。」

「んなわけあるか。じゃあ、あのもうすぐ完成するプラモはどう言い訳するんだよ。日々ハイスピードで組み上がってたぞ。」

「あはは・・。」

「満―。お前って奴は、本当に・・。」

僕は叫んでいた。

「秀一、本当に色んな人に聞いてたんだって。ただちょっと、庄ちゃんの家に行った時はプラモに夢中で、つい、夢を追いかけてしまったというか・・」

「夢を追いかけるったって、俺が横に座ってんだから、すぐに聞けただろ。どんだけ、長い夢語るつもりだったんだよ。」

「いや、まあ、だって、ほら。庄ちゃん、影薄いし、横にいても気付かなかったっていうか。」

「お前、俺の部屋勝手に使っておきながら、部屋の主人に対して影が薄いとは何だ、影が薄いとは。失礼にもほどがあるぞ。おい、小庄太、こんな奴やっちまえ!」

{ワン! ―ラジャー!}

小庄太は再び立ち上がって満に近づいた。

「うわー、小庄太、やめろって。肉やったろ。」

{問答無用!}

「肉?何の事かな?行け、小庄太!やってしまうのだー。」

「うわー、庄ちゃん、覚えてろよー。」

「何の事かな?どうせ、俺は影が薄いよ。」

「冗談だって、冗談。ほら、やめろ、小庄太。いい子だろ。今度また肉買ってきてやっから。」

満と小庄太がじゃれ合ってるのを見て僕と庄ちゃんは笑っていた。僕は何か久しぶりに大声で笑った気がしてこんな時間が長く続けばいいとずっと思っていた。


秀一はあの日以来、学校帰りに庄ちゃんの家に寄らせてもらっていた。

「こんにちは。いつもお邪魔してすみません。」

秀一は庄ちゃんのお母さんに挨拶した。

「いいえー、とんでもない。いつでも好きなときに遠慮なく来てね。家はそういうの全然気にしないから。」

「すみません、ありがとうございます。」

穏やかでいつも優しい、庄ちゃんのお母さんって感じがする。秀一は裏庭に歩いて行った。小庄太さんと僕は仲良くご飯を食べていた。

{あ、純平、ご主人が来てくれたぞ。}

{ん、あ、本当だ。お帰りなさい。秀一さん}

僕は尻尾を大きく振っている。

{純平、そんなに振ったら尻尾切れるぞ}

{いいもん、切れたって。だって秀一さん来てくれて凄く嬉しいんだから}

僕は食べかけていたご飯もそっちのけで秀一さんに歩み寄った。

{まめだねー、秀ちゃんも。ほとんど毎日来てるもんな。友達いないんじゃないか}

{なんてこと言うんですかー、小庄太さん。そんな事ないもん。秀一さんは優しいんだから、きっといっぱいいるよ}

{ふーん。さいですか。分かったよ}

「純平、元気にしてたか?」

秀一さんが話し掛けてくる。

{ワン ―うん。元気だよ}

「ちょっとしか来れないけど本当にごめんな。でもしょっちゅう来るようにするからな。」

{ワンワン ―うん、平気だよ。秀一さんもあんまり無理しないでね}

秀一さんはずっと僕の頭を撫でながら言った。

{あんたら、恋人同士か}

小庄太さんが疑わしい目で僕達を見ながら言った。

{何?羨ましいんでしょう、小庄太さん}

僕は得意げに小庄太さんに言った。

{んな訳ないだろ。俺には庄ちゃんがいるからな。一応}

{一応ってまたそんな言い方して。素直じゃないよね、小庄太さんって}

{うるさい奴だなー、お前さんが甘えん坊すぎるんだよ。ほら鎖外してやっから、思う存分甘えてきな}

{ありがとう、小庄太さん!}

小庄太さんは口で僕の鎖を外してくれた。外に出て行かなければ別に構わないのだ。小庄太家のルールである。絶対外に出ない代わりに家(庭)では自由。二人が、いや一人と一匹がしばしじゃれ合う。

「じゃあな。純平、また来るからな。」

と和み惜しそうに秀一さんが言った。

{クウ― ―ええー、秀一さんもう行っちゃうの?}

「またこれから塾へ行かなくちゃならないんだ。」

{クウ・・ ―そっか・・。残念だけど仕方ないよね。大変だけど頑張ってね。}

「じゃあまたな、純平。」

{ワン ―はい、また秀一さん}

手を振って帰っていく秀一さんを僕はずっと見送っていた。

{まるで恋人との別れのシーンですな}

小庄太さんが言った。

{何、何が言いたいんですか?小庄太さん}

{いや、別に。ただ遠距離恋愛の別れのシーンのようだなっとね}

{良いじゃないですかー、別に。}

{いや別に悪いって言ってないけど}

{言ってないけど?}

{いや、昨日も会ったじゃん}

{・・・}

僕は少し赤くなって下を向いた。

{まるで何日も会ってなくて、本当に久しぶりの様なじゃれあい方をしとるなーと思って}

{何か悪いですか?}

僕は顔が赤くなったまま聞いた。

{いや、別に。・・家も近いのに}

{・・・。いいでしょー、別に。僕達はちょっとしか会えないんですから。ちょっと会えた時間も大事にしたいんです!}

僕は思わず声を大にして言って思わず口をふさいだ。家の人がびっくりしちゃう。

{とにかくいいんです。僕は秀一さんが大好きなんですから}

{ふーん。まあそりゃ、見てれば嫌でも分かるけどね}

{そうですか?}

{そうですかって何を今更。目が秀一さん大好きです!ってハートマーク飛び交ってますけど}

{嘘―、恥ずかしい!}

{いやいや、恥ずかしいも何も、今まで気付かなかった方がびっくりだよ}

僕は顔が更に真っ赤になっていた。顔が熱くなっていくのが分かる。

{でも辛いかも知れないが無理なんだぞ}

突然小庄太さんがしみじみ言う。

{無理って何がですか?}

{・・・秀ちゃんは男だ。お前も男だろ}

{・・・何考えてるんですか!そんなこと考えてませんよ!}

{あっ、何だ、そうだったの?}

{そうだったの?って、当たり前でしょ!僕はただ純粋に優しくして下さる秀一さんが好きなだけなんです!そもそも僕と秀一さんは人間と犬なんですから、そこからまず無理じゃないですか!}

{いやー、何かおたくら見てるとその壁すら乗り越えて行きそうな気がしちゃって}

{流石にわきまえてますよー。その辺は。}

{何だ、そうだったのか}

{当たり前です!}

小庄太さんはたまにとんでもない発想をして僕をいつもびっくりさせる。産まれてずっとこの家で本当の家族みたいに育ってきてるからかな・・。

{でもよく秀一さん寂しい目をするんです}

僕はいつも気になっていたあの秀一さんの目の事を切り出した。

{寂しい目?}

{はい、何かこう本当に寂しそうな目をするんです。遠い目をしてるっていうか・・}

{ふーん、早くもそんな事が分かるとは、だてに秀ちゃんを愛してないな}

{だからそんなんじゃないですって}

{どんなときに、そうなったりするんだ?}

{んー、どんなときって言われると難しいんだけど・・何か本当ふとしたときに・・}

{ふーん、そうなんだ。秀ちゃん今年受験だしね、色々進路とかで悩んでるのかも}

{庄太さんもそんなときあった?}

{うん、そりゃあ、あったよ。三日ぐらいだけど}

{三日だけ?}

僕は肩を外した。

{うん、ほら家の主人の庄ちゃんは元々性格があんなだし。どっちにしろ庄ちゃんはいずれ家を継ぐんじゃないかなー}

{そうなんだ}

{親は何にも言わないけどね。でもきっと継いで欲しいって思ってるし、庄ちゃんもそれを気付いてるだろうからね}

{そうなんだ}

{まあ人間社会も色々あるらしいぞ。人間関係が大変だって、よく庄ちゃん俺にぼやいてるもん}

{ふーん、そうなんだ}

{たまに酔っ払って帰ってくるし、そのときによく愚痴ってるかな。まあ、本音が出るんだろうけど}

{ふーん}

{またそれが酒臭いのなんのって。でも無視するのも可哀相だし、まあ、最後まで付き合ってやってるんだけどね}

{結構良いとこあるんだ}

{結構って、犬聞きの悪い。まあなんだかんだ世話になってるからね。俺達が出来る事ってそれぐらいでしょ}

{はあ、まあ。でももっと何か出来る事ないでしょうか?もっと何か秀一さんの役に立ちたいなあ}

{何と忠実な。人間社会から見て理想の犬の姿ですな}

{そんな事、普通ですよ。御主人に僕達が忠実になるのは自然なことなんですから}

{いやいや、意外とそんな事なかったりして}

{どういう事ですか?}

{お前は運が良かったってことさ。中には御主人を尊敬出来ずにいる奴もいるからな。それでも御主人の傍にいることが俺達の宿命ってやつなのさ}

{そんなことがあるんだ}

{そりゃそうさ、俺達は飼われる身、御主人を選べないんだからな。まだまだ世間を知らんなー。そういや、母さんとまだ一緒に散歩行ってなかったな}

{お母さん?}

{そう、庄ちゃんのね。一緒に行くと勉強になるぞ。人間社会の片隅を垣間見る事が出来る}

{人間社会の片隅?}

{そう、人間社会の階層や見栄とか意地とか、その他ご近所の色々な噂はここで情報交換されるのさ}

{見栄とか意地?何それ?}

{何だろう、俺達の世界には無い、人間社会の独特の世界なんだ。俺も小さい頃はずっと分からなくて、でもずっと聞いてると分かるようになってきたんだ}

{へえー、その見栄とか意地が?でもよく分かりましたねー、犬の社会に無い事を理解するなんて流石です}

{まあな、伊達に何十年人間と暮らしてないって。しかし、これが大変な事なんだが我々が人間と共に生活をしていこうと思ったら、この人間社会の仕組みを理解せにゃならんのだ}

{え、そうなんですか?}

{そう、その中で俺達は御主人様を始め、周りのご近所との付き合いを深めていかにゃならんのだ}

{・・ご近所付き合い・・。何か難しいですね。出来るかなー、そんな事僕なんかに}

{まあ、自然に分かっていくもんだよ。焦りは禁物だからな。ちなみに、もっと言うと男と女の人では人間社会がまたちょっと違うんだ}

{えー、そんなにややこしいんですか?僕そんなに理解出来る自信ない}

{いやいや、そこまで知らなくても大丈夫だよ。でもそれだけややこしい分、人間社会っていうのはストレスがかかっている世界なのさ。でも、とにかく、まずは御主人の気持ちを察知してあげるのが僕達のまず始めの使命なんだから}

{うん、それなら何とか出来そう。何だか凄いなー、小庄太さん、何でも理解してるんですね。尊敬します}

{そんな、尊敬されるほどの事じゃねえよ。俺達の周りの奴らは皆やってることさ}

{へえー、皆凄いなー}

{ジョンなんかもっと凄いぜ、あいつ家族一人一人に対応変えてるもん}

{ジョンって?}

{ああ、満ん家で飼われてる奴さ。満は知ってるだろ?}

{はい、よく遊びに来てますもんね}

{そうそう、あいつ。あいつも今年受験なのに大丈夫なのかなー}

{確かに心配ですよね。でも、僕達に心配されるってよっぽどな気がしますけど}

{そうだよなー。根はいい奴なんだけどね、まあ、どっか受かってくれればいいんだけど}

{はい。でもなんか、私達が心配してるほど本人はあまり気にしてないような気が・・}

{・・確かに}

僕達は顔を見合わせた。一番心配してないのは、むしろ満さんなのでは・・。

「散歩行くわよー。」

庄太さんの母が裏庭にやって来た。

{お、噂をすれば今日は母さんが散歩か}

{そのようですね}

{初のご近所デビューだな}

{何ですか? それ?}

{んー、まあ、言ってみれば人間社会の公園デビューみたいなもんだな}

{余計訳分かんないですよ!}

{まあまあ、行けば分かるって}

「さあ、じゃあ、お二人さん行きましょうか。」

{ワンワン! ―はーい!}

僕達二匹は大きな返事をして尻尾を振っていた。


僕はいつになくキョロキョロしながら付いて行った。庄太さんと行く道とは全く違う、人が僕達を連れて歩いている姿が沢山目に入る。

{ここはいわゆる散歩コースみたいなとこなんだ}

小庄太さんが教えてくれる。

{何か僕凄く見られてる気がするんですけど}

{気がするんじゃなくて見られてるんだよ}

{えっ、何で?}

{見ない顔だからさ。珍しいんだよ}

{そうなんだ・・}

僕は何だか恥ずかしくて少し下を向いた。

{大丈夫だって、純平。気にすることないよ}

小庄太さんが気遣ってくれる。

「まあー、奥さん久しぶり。」

満の母が声をかけて来た。

{お、来たな}

小庄太さんが言った。

{おおー、久しぶりだねー。小庄太。あれ、何か見かけない奴がいるけど}

{おおジョン相変わらずだな。そうなんだ、実は当分の間俺ん家で居候する事になった、純平っていうんだ}

{へえー、可愛い顔してるねー。よろしく、名前は?}

{いや、だから純平だって。お前俺の話聞いてねえだろ}

{あはは、聞いてるよ。ねえ、純平君、こんな奴より俺ん家来ない?こんな可愛い奴、傍にいたら飽きないだろうねー。家においでよ}

{お前何引き込もうとしてるんだよ。やめとけ純平こいつの家だけは。びっくりするほど小さいんだぜ。お前の寝るスペースなんてないぞ}

{あ、お前、そうやって傷つく事言うなよなー。家に帰るの嫌になるっていつも言ってるだろ。本当に辛いんだからよー}

{ああ、悪い、悪い。俺達はいつも並んで優雅に寝てるもんなー、純平}

{また、そうやって嫌味を言って俺を傷つけるんだから。純平ちゃん、いつでも俺の家に遊びに来てね}

僕は笑って頷いた。

{ところで満ちゃんは受験大丈夫なのか?さっきも心配して話してたんだぞ}

小庄太さんが聞いた。

{んー、どうなんだろう?遅くまで部屋の電気は付いてはいるんだけど・・}

{ふーん、じゃあ、何だかんだ勉強はしてるのかもな}

{うーん、どうなんだろう?}

{どうなんだろうって?}

{んー、たまに笑い声が聞こえてくるんだ}

{笑い声?}

{んー、マンガ読んでるな}

{・・多分}

{本当能天気だなー。満ちゃんは}

{んー、まあね}

二匹の会話に僕は口を挟んだ。

{マンガって何?}

二匹は驚いた顔をして、

{何って言われても説明するの難しいけど。絵が書いてあって話が展開していくんだ}

{ふーん、絵本の事?}

{んー、ちょっと違うけど。今度俺ん家来たら見せてあげるよ}

{満いっぱい持ってそうだもんな}

{庄ちゃんも負けてないと思うよ}

{確かに}

・・マンガかあ。秀一さんはそういうの読んでたの見た事ない気がするなあー。たくさん文字が詰まってる参考書って言ってたっけ・・。

{あらー、皆久しぶり}

声がして振り向くとまた知らない犬が立っていた。

{おお、久しぶり、マミ。元気だったか?}

{ええー、なんとかね}

マミさんって言うんだ。毛並みが綺麗に手入れされている。

{あら、新顔ね。庄ちゃん新しく飼ったの?}

{違うよ。一時的に引き取ってるだけだよ}

{あら、何だ。てっきり小庄太に愛想付かしたのかと思ったわ}

{お前な・・}

{でも可愛い顔してるわねー。お姉さんの家来ない?}

そう言ってマミさんは僕の顔を覗き込んだ。

{ジョンもマミも思考回路一緒だな}

小庄太さんが言うと、

{まあー、ジョンと一緒にしないでよ}

マミさんが速攻返し来る。

{そうだ、マミなんかと一緒にするなよ}

ジョンさんもすかさず返す。

{なんですって}

{なんだよー}

二匹が冗談交じりで睨み合う。

{まあまあ、お前ら。どっちも一緒だってーの。純平がまじで引いてるだろ}

{そんなことないわよー、ねえ、純平ちゃん。いつでも遊びに来てね、こんな可愛い子大歓迎だわ}

{お前が言うと、何か身の危険を感じるな}

{失礼ね、取って食いはしないわよ}

何か凄いな・・。僕の話す隙が無い。

{でもじゃあ、もとは何処の子なの?}

{ああ、秀ちゃんが御主人なんだ}

{秀ちゃん?何か聞いた事あるような・・。あ、もしかして親が代議士か何かってとこ?}

{ああ、そうそう}

{あら、でもあそこ別にいてない?何か血統書付きで何でもコンクールか何かに出てるって聞いた事があるけど}

血統書付きなんだ・・。コンクールにも出てるなんて・・。どうりで何か僕とは雰囲気違うと思った・・。

{ああそういやそんな事聞いた事あるな。すっげえ、金掛かってるって噂で聞いた事ある}

へえー、お金掛かってるんだー。でも、何処に掛かってるんだろう?そんなに、言うほど美人でもなかった様な・・。ああ、でも、毛並みは確かに綺麗だったかな・・?

{そうなのよー、確かそうだったわ。だから内の主人あそこの家嫌ってるのよねー}

{何で?}

何で?

{家もあっちのほうが凄いのよ。しかも犬でも負けてるって。失礼しちゃうわ、そんな事なら私なんか飼わなきゃ良かったのよ。私もその方がずっと幸せだったわ}

{・・幸せじゃないんですか?}

思わず僕はマミさんに聞いた。

{当たり前じゃない、あんな見栄の塊みたいな人。自分ばっかり着飾って私達は見栄を張るための道具にしか過ぎないんだから}

{確かに、それは寂しいよな}

{そうでしょ、この耳に付いてるリボンだって鬱陶しくて仕方ないんだから}

{結構、似合ってますけど}

僕は言った。ジュエリーさんよりかは・・ですけど。

{じゃ、あんた付けて見なさいよ。結構重いんだから。これはあの人の自己満足にしか過ぎ無いのよ。こっちが痛いだの重いだの、全然分かんないだから。あの人は、こんなに着飾ってる私を他人に見せて自慢したいだけなの。お金が掛かってればもっとね。私は着せ替え人形、それをあの人は楽しんでるだけなの}

{そうなんですか・・}

{ほら、聞いてごらん。今もその話で私の御主人自慢しまくってるわ}

僕達は話をやめて耳をすました。

「あら、奥さん。でもこの首輪そんなに高くなかったのよー。ちょっとだけダイヤが入ってるけど10万もしなかったの。」

{ほらね}

{ほんとだ}

{でも高くなかったって言ってるよ。高くないなら自慢じゃないよね}

僕が言うと、

{バカねー、見栄張ってるのよ}

{見栄?}

さっき聞いてた言葉だ。

{高いお金で買ってるのにあえて安かったって言って、こんな高い買い物は私にとっては安いって言ってるの}

{・・・・・・?}

{私はあなた達よりもずっとお金持ちだって言いたいのよ}

{・・そうなんですか・・・?}

「あらー、十万なら安いかも。今度行った時見てみようかしら。」

満の母だ。

{ちなみに、今のが意地です}

ジョンさんが言う。

{え、嘘、何で?}

僕が尋ねると、

{だって俺ん家そんな金あるわけねーもん}

とあっさりジョンさんは答えた。

{そうなの?でも、安いし行ってみようって、今ジョンさんのお母さん・・}

{それが意地な訳よ。本当は十万も出すお金なんか、さらさらあるわけないし買えるわけもないんだけど、あえて買うような事言って嘘ついてるのさ}

{・・・・・・・?}

僕はまた首を傾げた。

{つまり何が言いたいのかというと。分かるかい?純平君}

得意そうな顔でジョンさんは言った。

{・・全然分かんない}

{素直でよろしい。では教えましょう。俺の母、いわゆる満の母は、十万なんてお金これっぽっちも持ってないけど、相手に貧乏だって思われるのが悔しくて、まあ、十万だったら安いわねーと安くもないのに安いと嘘をついてるのであります}

{何で、そんなことするの?お金無いならないって正直に言えばいいのに}

{それを言うのが悔しいから嘘をついてる訳なんだよ}

{何が悔しいの?}

{人間っていうのはお金がある方が、裕福で幸せな事だと思っているからさ}

{お金がある方が?}

{そう。人間は何でもお金で物を買わなきゃいけない動物なんだよ。食べるものも着るものも家や娯楽も何でも全てを}

{そうなんだ}

{ああ、そうさ。毎日俺達が頂いてるご飯だってそのお金ってやつで買ってくれてるから、俺達も毎日自分で探さずにご飯を頂いてるって訳。人間にとってお金は生きて行くうえでなくてはならないものであり、簡単に言えば無いと生きて行けないんだよ}

{・・なるほど。お金が人間にとってとても大事で、なくてはならないものだって事は良く分かりました。・・でもそれとさっきの見栄や意地はどう関係があるの?}

{贅沢もお金で買うからだよ}

{贅沢をお金で・・?}

僕は余計に頭が混乱してきた。

{より贅沢に着飾り、より大きな家に住み、より贅沢な暮らしを、そして誰よりももっともっと贅沢を!人間にとってなくてはならない大事なお金。だからこそ贅沢もあえてお金で手に入れる事によって、その人は周りの誰よりも自分の方が裕福であると実感する。それが、幸せそのものに結びついて、お金持ちイコール私は他の人より幸せ者だと人間は思う動物なのだよ。ここまでは分かったかな?純平君}

{・・はあ、何となく}

{よろしい。そしてじゃあ、何故人間は見栄を張ったり意地を張ったりするのでしょうか?}

ジョンさんが突然聞いてきた。

{それが、分かんないからさっきから聞いてるんじゃないですかあ}

{まだ分かんないのかー。仕方ないなー。では先生が教えて上げましょう}

・・・いつから先生に?何かこういう調子のいい所、満さんにそっくりだな・・。飼い犬は飼い主に似るって言うけど、物凄く当ってる気がする。

{人間というのは誰でも幸せになりたいって願う動物なんだよ}

{幸せを・・願う・・}

{そう。人間は僕達と違ってただ生きて行く為にエサを取って食べたり、生存競争に勝つための技術を身に付けたり、生きて行くことだけを必死に毎日を生活する僕達動物全般とは違って、生きて行く意味を考える動物なのさ}

{生きて行く意味・・}

{そう。生きて行く意味を。だから幸せを願わずにはいられないのさ}

そう言ってジョンさんは続けた。

{そしてだんだんその幸せに欲が出る。もっと上をもっと上を。周りの他の誰よりももっと自分は幸せに。そう、まるで生存競争に勝ち残る事の様にー。その物差しになる一つがお金っていうことなのさ}

{・・・そうなんだ}

{だから私はこーんなにお金を持ってるのよ、ってアピールする事で、自分はこの人達より幸せだと人は実感する、あるいは実感したいって思う動物なんだ}

{ふーん、じゃあ、さっきのジョンのお母さんの意地ってのは?}

{ああー。あれは恥ずかしい話、私はあなたには負けてない、っていうアピール。人は他の人より自分の方がが幸せになりたいっていう願望を常に持ってるからね。負けてない事をアピールする事で、あなたは決して私より幸せではないのよーー、つまり、相手の方が幸せかもしれないって思いたくなくて自分を思わず守っちゃうみたいな。いわゆる防御法みたいな感じかな。んで、買えないのに買えるみたいな嘘をついちゃうのが意地って訳。まあ、飼われている俺の方が見てて恥ずかしくなっちゃうけどね。これで少しは人間社会ってのが分かったかな?純平君}

{・・・・}

僕はほとんど固まっていた。聞けば聞くほど、訳が分からなくなって、頭が混乱する。

{人間社会って大変なんだね}

僕はボソッと呟いた。

{そうそう。思ったより、かなり大変みたいね}

マミさんが言った。

{最近の現代社会はさらに複雑らしいぞ}

小庄太さんが続く。

{らしいねー。若い子の自殺も多いって聞くし}

{うん、そうらしいな。犯罪もますます低年齢化して。インターネット犯罪や、事件事態もどんどん複雑になってるし}

{ええ、事件解決の糸口がどんどん複雑になってきているわ}

{確かに、それはあるよな}

三匹が頷く。

{・・あの誰なんすか?皆さん。確か僕達犬だったのでは・・・?}

・・・僕達は顔を見合わせた。

{確かに。そういえば、そうだった}

{うん、ついうっかり忘れてた}

{忘れるって・・。見た目からして思いっきり犬ですよ、僕達}

{・・・いや・・そんなことないぞ。それだけ俺達が人間社会と共に生活してるって証拠だ}

{うん、そうだそうだ。お前もこういう話についてきて初めてご近所の犬達と仲間になれるってもんだ}

{そうよそうよ。これからもう少し修行が必要かもね。分かんないことがあったらいつでも聞きにいらっしゃい。お姉さんが教えてあげるわよ}

{・・あ、はい}

{まあー、いい子。本当可愛いわ、純平ちゃんは}

{純平、悪い毒牙に掛かる前にあんまり近寄らんこった}

{まあー、失礼。大丈夫よ、純平ちゃん}

{はあ・・}

{そんなことより、今日はきっとご機嫌斜めになっちゃうんだろうから、ちゃんと癒してあげなきゃ駄目よ}

マミさんがジョンさんに言った。

{お前に言われなくても分かってるよ。だいたい、お前の主人が余計な事言うから、俺が毎回苦労してんだぞ}

{分かってるわよ、そんなこと。でもあの人は、ああでもしなきゃストレスが発散出来ない可哀相な人なのよ}

・・・僕達犬が交わす会話だろうか・・

{とにかくお前の主人と会った後は本当大変なんだから}

{・・何が大変なの?}

不思議になって僕は聞いた。

{後の処理}

{後の処理?}

{そう。満のお母さん、マミの主人とさっきやりあってただろ。それで、悔しくて、帰り道切れまくってるらしいんだ}

小庄太さんが言った。

{そう。本当大変なんだ。まあ、でも俺はもう慣れてるし、こういう時の扱いも熟知してるから、お手の物だけどね}

{・・・そうなんですか}

{そうだぜ。俺はそういう意味じゃ、癒しのプロだって自分で自負してるくらいだからね}

ヘヘンという感じでジョンさんは言った。

{うーん、確かに上手いよな}

納得しながら、小庄太さんが言う。

{手馴れてるもんね}

{そうそう。俺様の手に掛かればいちころってもんよ。こう、コロコローってねー。}

本当、満さんに似てる・・。

{お、そろそろ帰る時間らしいぞ}

{あ、本当だ。動き出したわ}

{おお、じゃ、またな}

{ええ、またね。癒し、頑張ってね}

{分かってるって。だから誰のせいで、全く}

{あ、じゃ、さようなら、皆さん。また}

僕はペコリとお辞儀しながら言った。

{純平ちゃん、またねー}

僕達はまた飼い主の鎖に引っ張られて行った。

{何か、色々大変なんだな}

今日は頭がいっぱいでとにかくこんがらがっていた。人間社会。凄く複雑で凄く難しい。

{もっと、簡単じゃ駄目なのかな}

僕はこの時犬で良かったと心から思った。唯一つ、秀一さんと喋れない事を除いては。

{秀一さんも、こんな複雑な人間社会の中にいるのかな・・}

僕は心地よい風に吹かれながら、ゆっくりと歩いていた。そう、僕はこの時秀一さんの心の闇をまだ知らずにいたんだー。


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