チャレンジ!異世界転生『今市カケル』
『……慎重に選考いたしました結果、今回は今市様のご期待に添えない結果となりましたことを……』
ちっ、なにが「今回は」だよ。次があんのかよ?
またバイトの面接に落ちた。何回目だろう。数えたくもない。
たかがコンビニのくせに。日本語も怪しい外国人留学生は雇うのに、日本を愛する純日本人の俺はダメだってのか?
まあ、理由はわかっている。学歴だ。
面接官のあいつ、店長だか副店長だか知らないが、笑いやがった。俺の履歴書を見て、高校中退の文字を見て、「フンッ」って鼻で笑いやがったんだ。
学歴だけでなにがわかるっていうんだ。中卒だってピンキリだろ?日本には小卒の総理大臣だっていたんだぞ?(ま、いまで言う中卒らしいが)
勝手に決めんなよ。ろくに話も聞かずに、それだけで能力を、人の限界を決めんなよ。
ああ、すっきりしねえ。イラついたせいか、腹まで鳴ってきやがった。
ふと交差点の時計台に目をやると、もう午後1時を過ぎていた。
しゃーねえ、どっかで飯でも食ってから帰るか。
信号を待つ俺は、スマホを取り出した。
店を探すわけじゃない。ソシャゲだ。
午後1時は、いつもスタミナがあふれそうになる時間なのだ。
ログインし、適当なクエストでスタミナを消費して、1日1回の無料ガチャを回す。
画面が白い光に包まれ、女神が降臨して、選ばれし勇者である俺のもとに新たな戦士を召喚した。
……ちっ、☆1か。使えねぇな。こういう気分のときくらい、いいの出させてくれよ。
まあいい。適当な主力キャラに合成して、経験値の足しにでもするか。あばよ。
合成画面を見ながら、横断歩道を渡りだす。
「おい、危ない!まだ赤だぞ!!」
えっ?と顔を上げたときには、もう遅かった。
ドーーーーン!!
……
気がつくと、目の前には白くまぶしい光。
その中心に、見覚えのある女神の姿があった。
「よく来ましたね、新たな戦士よ……」
ここは……ここは!
俺は一瞬で状況を理解した。異世界転生モノで読んだことがあるぞ!
俺は、交通事故に遭って死んで、直前までプレイしていたソシャゲの世界に戦士として転生したんだ!
「戦士よ、名はなんと言いますか?」
「俺か?俺は……カケル。戦士カケルだ」
「戦士カケルですか。なるほど。
HP151、攻撃力77、防御力60、スキルなし……
勇者よ、どうしますか?」
女神に勇者と呼ばれた男は俺には目もくれず、気だるそうに女神に問い返した。
「女神よ、そいつのレアリティは?」
「☆1ですね」
「ちっ、使えねぇな。適当な主力キャラに合成して、経験値の足しにでもするか。あばよ」