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夜中の勢いシリーズ(短編)

私しか知らない

作者: あしたば

 夜中に失礼します。今回も夜中の気分で書いてるので、文章はまちまち。ご了承ください。

 このシリーズ初の恋愛もの。

 手を伸ばしてみたけど触れられなくて。こっち向いてってどれだけ願ってみてもそんなの届くわけなくて。無性に泣きたくなった。


「話しやすいんだよね、あいつ」


 友達が若干顔を緩めて彼を見てそう言った。その顔を友達は隠し通せたつもりだったのかも知れない。でもね、私には分かっちゃったんだよ。だってその顔は、私も彼を見てしちゃう顔だから。だから気付いちゃったんだ。友達も私と同じ気持ちなんだって。――好きなんだって。


 彼が友達に話しかけられて笑う。彼だけの表情で、少しはにかんで。その笑顔は私を幸せにしてくれる。すっと心が晴れるんだ。

 いつ好きになったのかなんて、覚えてない。いつのまにか。それが一番正しい答えなんだと思う。

 でもどこを好きになったのか、それは分かる。自分の意見をちゃんと言うのに、間違ってたら直ぐ誤魔化すように笑う顔だ。その顔が私は堪らなく好きだった。

 友達も一緒だったんじゃないかな。直接は聞いてないけど。でも聞かなくったって彼女が彼を好きなのは変わらない。だから私は今日も二人が喋ってるのを後ろで見守る。


「これどう思う?」


 友達と話してた彼に話しかけられて少し驚いた。それと同時に嬉しさが勝って、でも話を聞いていなかったから聞返して。そんなやりとりさえも愛おしく思った。

 その後も友達にはばれないように、彼にも気付かれないように彼の姿を追った。諦め切れたらよかったんだけど、そんなことできるわけがなかった。好きっていう感情はそう簡単じゃない。

 それでも、お似合いに見える二人を見るのは辛かった。胸がきゅっとしめつけられて、自分でもなんとも言えない感情が溢れてきて。少しずつ、彼を避けるようになっていた。


「最近、元気ないな」


 夕日が綺麗な放課後。俯いて歩いてた私に話しかけてきた彼。前は話せることがあんなに嬉しかったのに今は凄く逃げ出したかった。なのに喜んでる自分がいて、その矛盾に頭が混乱する。

 どうしよう、どうしたらいいんだろう。今まで避けてきた分、溜めてきた感情が口から溢れ出しそうだ。

 好きです、あの子じゃなく私を見て。

 口を開いたら言ってしまいそうで、返事をしなきゃいけないと思うのに口を噤むことしかできない。

 言いたいけど言えない。言ったら全部壊すことになる。それは、いやだ。


「……そんなこと、ないよ」


 頑張って言いたかった言葉をすり替えた。頑張ってちょっとした笑顔も見せた。上手くできてたかは分からないけれど。

 彼が何かを紡ごうとした。でもそんなの聞きたくなくて、これ以上そこにいたくなくて、それを聞く前に彼の横を通り抜けた。明らかな拒絶。私の少しの反抗心。

 これでいい。気持ちなんて伝わらなくていい。何も言わなくても分かってほしいなんて言わない。だから、もう、……そっとしておいて。

 振り返らずに階段まで行く。私はそこで蹲って、声を殺して泣いた。今までの全てを流しだすように。


 彼が振り向いた時の哀しげな瞳。

 それを私が知ることはなかった。



 お読みいただきありがとうございました。ちょっとだけ補足説明。これは間違いなくすれ違いです。ただ二人はくっつくことなく終わります。最後の文章が「なかった」と書かせていただいたのは、この後もくっついたという可能性がないことを表すためでした。

「知らない」にしようかとも考えたんですが、そうしてしまうとその時は知らなかっただけでその後はくっついたかもしれない可能性が生まれたからです。くっつかなかったからといって、彼が友達とくっつくこともないでしょうが。

 少し長くなってしまいましたが、お付き合いいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  女性の日常に、くすっと笑ってしまいました。 [一言] 叶わないものの象徴は恋なのかもしれません。
2015/09/16 07:21 退会済み
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