7話目
”集計が終わったので発表しよう、最後のサービスはグランドクリア共有権だ。以上でルール説明を終了する。なお、このアナウンスが終了次第全員マイルームに一旦送られる。最後にアドバイスだが説明書はしっかり読むように、では検討を祈る”
うーんグランドクリア共有権か。まぁデメリットはないし文句はないんだけどさ。ちなみに俺が難易度低下を選択した理由はPK可能なデータサーバーの存在だ。正直あの3データサーバーはグランドクリア無理じゃないかなと思ってる、多分PKでもLP減るんだろうし。10個のうち3個は期待できないのに共有してもなぁ~という考えからだったが多数決で負けたのだから仕方ない、ただ、PKありの3データサーバーは大半が共有を選択したんだろうなーと思っている。
現在地はマイルーム、机には二冊の本が置かれている。手に取り見てみると
ブルーノ=フェルセンは 序盤に役立つ知識及び説明書 を手に入れた
ブルーノ=フェルセンは モンスター図鑑 を手に入れた
多分これ全室に置かれてるんだろうなー、というかこれ渡すために強制的にマイルームに飛ばしたんじゃないだろうか。で、ちゃんと読めよってことか。説明書はページとしては20ページくらい、ベッドで読むか。
……ふむ。どうやら最初の3日間は宿屋に泊まるとマイルームという場所(俺の現在地だね)に入れるらしい。ここにはベッド、シャワールーム、机、椅子がある。ビジネスホテルのシングルタイプの部屋そのまんまである。一点だけ違うのはファンタジーの世界とは似つかないパソコンが1台机の上にあることだ。
パソコンは掲示板、ブログ及びSNS機能等が使えるそうだが、LPショップでアカウントとパスワードを購入しなければ使用できない。だがこの3日間だけは体験版ということで使用可能なので使える間は積極的に使っていきたい。ただこのパソコン、3日間はいいが、それ以降は皆が利用しないとゴミという難点がある、迷いどころ。
モンスター図鑑は戦ったモンスターや情報を手に入れたモンスターの情報が自動で記載される図鑑であり、例として5匹の情報がすでに書かれている。生態や攻撃パターン、それにドロップアイテムが分かるようになっている、これは重要アイテムだわ。
そうそう、何故宿屋を利用するかだが、VRMMO内ではそこまで疲労感が出ないので休む必要はないと思うかもしれないが、RFZでは長時間活動していると疲労度が蓄積されHPやMP、STの回復効率が落ちるので一日8時間はゲーム内で睡眠する必要がある。8時間未満でも活動できるが総合的なデメリットの大きさを考えると割りに合わないと思う、やるときは個人責任でどうぞってやつだ。
ちなみに宿屋を利用せずにゴロ寝でもOKだ。が、しかし、街中でゴロ寝は正直嫌だし疲労度の減少速度が遅い、それにいくらリアルが売りとはいえリアルホームレス冒険者にはなりたくない。街中以外はモンスターに襲われるフラグが立っているのが見える。パーティーなら交代制で寝ることは可能だが、全員が起きているときに比べ死亡のリスクが高いのは言うまでも無い。
他にもたくさんあるが割愛、明日から旅をしながら説明しよう。では今回のデスゲームの一番の目玉、LPショップを覗こうと思う、NPCのショップは渋滞緩和のためにマイルームからでも購入及び売却が可能なのだ。クエストも受けれるので便利だ。
そしてLPショップのラインナップで今の俺に関係ありそうなのは……
入手経験2倍(永続) 220LP
アイテムブラックホール強化 20LP
デスペナルティ回避(1回) 20LP
宿屋マイルーム化 5LP
どこでもマイルーム 10LP
パソコン使用権 10LP
他サーバー掲示板閲覧機能 10LP
魔法カード【瞬移】3枚 5LP
うーん、こんなところかな。これ以外にもいろいろあるのだが、生産職になる予定はないのでそっち方面なのは省略した。
ぱっと見て効果が分かりにくいものだけ説明すると、アイテムブラックホールというのは昔ながらのアニメで例えると”4次元ポケット”だ。モンスター倒す系のゲームで主人公達がどうやってこんな大量のアイテム持ってるんだと思うことがあるかもしれないが、このRFZではブラックホールが出てきてそれに入れることができる。ちなみに、ブラックホールなのに重量制限があるのは気にしちゃいけない方向で。否定したらリュックサック担いで敵倒すことになってしまう。なお、アイテムブラックホールを強化するとアイテムの重量や個数に対する制限がなくなるのが魅力的。
どこでもマイルームは同じアニメで例えると”他人に見えないどこでもドア(ただし行き先はマイルームに限る)”である。マイルームなら宿屋に行けばいいじゃないと思うかもしれないが、どこでもマイルームは街の外でもマイルームに行くことができる。そして最大のメリットは夜に街の外で安心して眠れるという点だ。これで野宿はちょっと……という人も安心である。ちなみに宿屋マイルーム化を購入しないと意味がないので注意が必要。
あと魔法カード【瞬移】は今までに行ったことのある街や村に瞬間移動できる魔法だ。高いと思うか安いと思うかは人次第である。
さて、今後の俺の方針だが、情報を収集しながらソロでモンスターと戦い、魔法カード【脱出】を手に入れ可能なならばグランドクリアを目指すという夢あふれる、人によっては無謀という方針で行くことにする。パーティーを組んだほうが安全確実では?という意見があるかもしれないが、俺はデメリットを多く感じたからだ。
パーティーを組んだ場合、俺が良しとしない行動を取り、それが命取りになることがるかもしれない。あとはパーティーの方針ということで入手経験2倍やどこでもマイルーム等のアイテムの購入を強要される恐れがあること。
細かく言うとキリがないが、つまり俺は死ぬなら自分で判断し行動を決めて死にたいのだ。無論死ぬつもりなどない、前世より長生きするのが今世での目標なんで。
実はあともう一つ理由がある。これはただの俺の杞憂かもしれないのだが、”序盤に役立つ知識及び説明書”の最終ページに首都案内図という地図があり、店の場所などが書いてあるのだが、この首都は実に特徴的な形をしている。そう、俺が1年前の修学旅行に行った北海道の函館にある五稜郭の形そっくりなのだ。だからどうした、と思うかもしれないが俺はすごい気になっている。現在時刻は午前0時、8時間眠ったあと確かめにいくことにする。
《1日目(4月1日) 午前8時15分》
宿屋を出て首都の中心部に向かう。そこには首都最大の建築物である城が建っており、王族はここで暮らしている。さらに西側には政務部本部、東側には騎士団本部があり非常時の情報伝達が速やかに行えるように繋がっている。
うん、間違いない。ここ、前世の世界の首都そっくりだわ。