4話目
時刻は現在午後8時30分、そろそろRFZにログインしようと思う。
オープニングイベント終了までは歩くことしかができず、起こせる行動といえばRFZ内で説明書を読むくらいしかないのだが、現実でもやることがないのでさっさとログインしてオープニングまで待機することにしよう。
そうそう、RFZを始めるにあたり大変重要なものを一つ選ばなければならない、それはサーバーの選択である。
このRFZの初回版は限定5万個販売され見事完売した。つまり、5万人が最初にプレイするわけだが、5万人のデータを一つのサーバーにまとめてしまうと容量的にツライ。
じゃあどうするかというとサーバーを複数用意し、同じ世界を何個も作ってその中から一箇所選んでプレイするのだ。
地球をサーバーにして例えると地球が1個だと60億人が同時に動いているので地球の負荷が非常に大きい。そこで地球を10個作って一個に約6億人づつ住んでもらう。すると負荷は約10分の1で地球にやさしい。
で、俺達プレイヤーはその中の一個を選んでプレイするというわけだ。ちなみに他の地球の人に会うためにはもう1つキャラクターを作る必要がある。
こんな説明で分かるかどうか不安だが、要は全部でプレイヤーは5万人いるけど、実際に会うのは同じサーバーの人だけ、今回は10個なので1サーバー辺りだいたい5000人前後だということだけ覚えてもらえれば問題ない。
ちなみにサーバーにはそれぞれ名前が付いており、頭文字がA~GとX~Zとなっている。何故Gの次がX~Zなのかというと、X~ZはPK(プレイヤーキル)が可能な設定になっており、目立つようにアルファベットを遠ざけたのだと思う。PKは人を選び、忌避する人も多いことから可能なサーバーと不可能なサーバーを分けているのだ。
ちなみに俺は頭文字がDのサーバーにした。理由は大きく三つあるのだが、まずPKはノーセンキューだったことからXYZはなし、人が多すぎるのはちょっとなぁと思ったので現在一番人数が多いA以外、最終的にに決め手になった要素は名前で削られたダイクンの頭文字がD、という適当な選び方だ。現時点でログイン数は4000人ほど、人数もいい感じである。
というわけでRFZにログインしたところ、首都っぽい場所まで飛ばされた。周囲を見渡すと座って説明書を呼んでいる人がたくさんいて少し引く。知り合い同士で固まってるグループもあれば一人で座ってる人もいる。これからどんどん人増えていくんだろうなーと思いつつそこら辺に座り説明書を読みながら待機する、が集中できない、くそっ、早く9時にならないかなーと待ちきれないからだ。
9時になった。周囲はプレイヤーで大賑わい、もはや爆音である。そしてオープニングイベントがスタートした。打ち上がる花火、空飛ぶドラゴンと魔法少女、中学生の頃に行ったテーマパークなんて目じゃない豪華絢爛な光景が今目の前に広がっている。
うおーすげーと感動しているとクライマックスと同時に
”それではこれよりリアルファンタジーゼロの正式サービスを開始します”
というアナウンスがかかり、皆拍手している。なんでこの国の人ってこの開始時に打ち合わせもないのに皆拍手するんだろう、この日本に生を受けて18年、この疑問は未だに解けない。
そしてアナウンスは更に続ける。
”なお、正式サービス開始にあたり、説明書の一部に訂正箇所がありますのでこの場にて伝えさせていただきます”
早速説明書に不具合って……大丈夫なのか?というかアナウンスで告知する前にちゃんと直しておけよと思わなくもない。周りからは「しっかりしろよ運営ー」というような野次も聞こえてくる。
”本説明書7ページにありますログアウトに関する項目ですが、こちらを全面削除致します。本ゲームはこの告知を持ちましてログアウト機能を当面の間停止させて頂きますと同時に、リアルファンタジーゼロはデスゲームとしての要素を持つことになります”
瞬間、音が止まった。