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32話目

《134日目(8月13日)午前8時10分 残LP227》

「こちらは昨日から準備万端です、いつでもいけますよ、今すぐ行きましょう」

 うん、ちょっと落ち着こうか。赤原猟犬のメンバーは話が早かった。こんなにやる気に満ち溢れたパーティーを見るのは初めてなので俺が若干引いているくらいだ。多分一人メンバーがいなくなってどん底な状態だったのが、ダンジョン攻略の鬼である俺(掲示板ではそう見えるらしい)からので連絡で、一気に反転してテンションがおかしくなっているんだろう。まだダンジョンクリアしたわけじゃないのになぁ。


 今回のダンジョン”画廊の切り裂き魔”に出るボスはよくRPGに出現する分身するタイプのボスだ。しかし敵の種が割れている以上俺達の勝利は揺るがない、さっさと死んで【脱出エスケープ】になるがいい!



《134日目(8月13日)午前10時35分 残LP227》

 北東の地方都市ジャネイロを出て森の中を歩くこと2時間ほど、森の中にある白い現代風の建物”画廊の切り裂き魔”ダンジョン前に到着した。赤原猟犬のメンバーは首都にいたときとテンションとは違い、時間が経つにつれ無口になり、今は誰もしゃべっていない。気負いすぎなければいいのだが、若干不安になりつつ看板を確認。


 ダンジョン:画廊の切り裂き魔

 制限人数:10人

 制限時間:なし

 クリア条件:サトクリフの討伐

 特殊事項:なし

 現在の参加パーティー:0組


 よし、間違いないな。準備がいいなら行こうと思ったが、皆の顔を見ると死んだら終わりという恐怖からか数人の顔が白い。今までもいたけれど今回は特にひどい、大丈夫かコイツら、と思っていたらリーダーのカズヤさんが激を飛ばしてくれた。最後は円陣を組み、やるぞーと皆で叫んでからポータルに乗った。全員が男だからか若干体育会系である。



 ポータルを抜けると、短い廊下、すぐ目の前にはドアがある。このドアを開けて入れば扉が閉鎖されボスが出現する。作戦を説明し、カズヤさんが先頭でドアを開けてまとまって入場、思っていたよりは狭いかな。

 そこは画廊だった。広さは50メートル四方ほどの平屋建ての明るい画廊、周囲を見渡せば壁一面に様々な絵が飾られている。ドアが閉まり目の前にこのダンジョンのボス、人型のモンスターサトクリフが4つの武器を持って出現した。

 サトクリフが4人に分裂する。最初4つの武器を持っていたサトクリフは今1人1個の武器を持っている。ナイフ、斧、ハンマーそれと日本刀、この中の1人が本物であり、3人が偽者。偽者はHPが低いが攻撃力防御力は本物と同じなのでダメージでは見分けがつかない。本物に一定ダメージを与えると、一旦1人に戻り再度4人に分裂する。その時は武器もシャッフルされるので武器で見分けることはできない。

 そしてサトクリフのヤバイところは、3回4人に分裂すると、4回目から8人になる。7回目には16人になったという報告もある。そのパーティーはそこで全滅したため以降は不明だが倍々ゲームで増えていくのはさすがに卑怯だと言わざるを得ない。


「本物はハンマーだ!ナイフから狙うぞ!」


 戦闘の指揮はカズヤさんに任せてある。俺はそもそもパーティーで動いた経験すらほとんどない、俺が変に指示を出すより他の8人がやりやすいだろう、描写していないが実は今までのボス戦は全てそうしてきた。俺は大きな流れの指示をしながら攻撃を防ぐだけだ。


 さて、何故すぐに本物が分かったのか、実は簡単に見分ける方法がある。本物には影があるという単純なものだが、案外気づかない。動いている敵の影なんて普段見る習慣がないから仕方ない。カズヤさん達の動きは軽快、動きも硬くない、円陣が良かったなカズヤさんグッジョブだ。軽度な被害で偽者3人を排除する、ここまでは順調だ。


「3人目終わりっと。ここからが本番だ、気合いれていけよ!」


 先ほど影の有無で敵を見分けることができると言ったが、実はそれは以前他サーバーの掲示板に書かれており、現在このサーバーでは誰もが知りえる情報だ。では俺が掴んだ情報とは何か。それは、サトクリフ”本体”の情報だ。


「行くぞ、まずはあの女の絵からだ!」


 俺達は走り出す、行き先は入り口近くの壁に飾られている絵。3人はハンマーを持ったサトクリフの攻撃を防ぎ回復する役目、残りの7人でバリアの張られた絵を破壊しようと攻撃を加える。バリアには耐久度がある、攻撃を加えるたびに亀裂が走り、ひびは大きくなり、完全に割れたところで絵を叩っきる!これはハズレか。次の絵にも同じように攻撃を加えて飾られた絵をどんどん切り裂いていく。



 サトクリフの本体。それは一番HPの高い影があるサトクリフではない、本体はこの画廊にある絵のうちのどれか一枚。分裂するサトクリフは4人とも偽者という、実にゲーマー泣かせの仕様なのだ。

 本物、と称されるHPの高い影があるサトクリフ、実に本物臭い。HPが高い、一定ダメージを与えるとまた分裂、影がある、とRPGゲームで考えれば間違いなく本物の挙動だ。故に罠にかかってしまう、4人に分裂するのだからどれかが本物、そして影で本物を見分けることができるボスだ、という思い込みを利用した罠。今回も情報無しで勝つのは本当に厳しいボスである。



 サトクリフの本物に攻撃を加える必要はない。ダメージさえ与えなければ再度分裂することはないので2人で攻撃を防御し、1人が消耗したHPを回復していればいい。7人で猛攻撃を加えれば1枚1分ペースで破壊できるが、画廊だけあって枚数が多い。壁に飾られた絵は全て破壊、残りは部屋の中心部にある絵だけだ。早く本体に当たってくれ。


 残り5枚、運が悪いな。しかし俺達の勝利は揺るがない、盾役がサトクリフの本物を押さえている限り敗北はない。残り4……3……2……。


 これで最後、最後の絵は悪人のような顔をした壷の絵。醜悪な面しやがって、これでラストだ、バリアが崩壊し、カズヤさんが絵を真っ二つに切り裂いた。これでクリア……じゃない?本物のサトクリフはまだ盾役に攻撃を仕掛けている、何故だ、全部絵は破壊しただろ!?


「どこか見過ごしたか?探せ、どこかに残っている絵があるはずだ」


 そうだ、これだけ広い画廊、どこかを見落としたに違いない。2組に分かれて画廊中を探すが、無い。無い無い無い無い無い無い、見落としているはずの絵が無い。何故、どうしてっ、意味が分からないぞ。


「おい、どうなってるんだ、話が違うじゃないか、俺達を騙したのか!」


 分からない、どうなってるんだ。どうなってるなんて俺が言いたいくらいだよ。

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