18話目
《3日目(4月3日) 午後7時40分 残LP398》
マイルームは今日の午前10時で使えなくなったため、NPCのところまで行かないとアイテムが買えなくなってしまった。というわけで調合ギルドへ補充に行くことに。宿屋マイルーム化(5LP)を購入するかは検討中。
調合ギルドに到着、一応憲兵がいないよなっと入り口から確認、セーフっぽいな。調合用のアイテムを補充して帰ろうかなと思ったら、昨日とNPCが違うことに気づく。調合に関してお金を出せば答えてくれるNPCが昨日の長髪のヒョロい男から短髪の大柄な男に変わっている。名前は覚えてないが、さすがに昨日話しかけたNPCだけあって明らかに別人だと分かる。名前はダミアン、一応話しかけてみようか、用はないけどさ。
「ん、冒険者か。何の情報が聞きたいんだ…………ハァッ」
なんか元気がなさそうに見える、ティンときた、これはクエストゲットのチャンスだな。きっと何かを無くしたから入手して欲しいとか、そんな感じのクエストが発生するに違いない。何かお悩みですか?と聞いてみる、なんだかこうして聞くと俺宗教家みたいだな。
「いや、実はなぁ、ギャンブルで今月の小遣い全部吹き飛んじまってよ……まだ3日だぜ、今月」
なんだ、ただのギャンブラーか。
「このままじゃ葉巻も買えねぇし、ハアッ、また母ちゃんに怒られちまうよ」
そりゃ大変ですねぇと生返事して一応ハシシ草とブエノン草の調合について聞いてみたが教えれるわけないだろと昨日と同じ返事、当然だけどさ。
! ちょっと面白いことを思いついた。俺はアイテムブラックホールからキャッシュカードを取り出す。このゲームの売買は基本カード払い、ワンコカードやセブンコカードみたいなものだと思ってもらえば分かりやすいだろう。硬貨や紙幣での支払いが面倒だというプレイヤーの要望により、現在のVRMMOではどのゲームでもカード払いが採用されているのだが、雰囲気が大事というプレイヤーの要望もあり、お金を硬貨や紙幣にアイテム化することもできる。
いくらくらいかな、とりあえず100ゴルでやってみるか、100ゴルを硬貨にして取り出す。
まず少し位置を変える、他のNPCには俺の背中しか見えないようにする。ハシシ草の調合ってどうやるの、と聞きながら俺の胸のほうから100ゴル硬貨をチラチラちらつかせる。
ダミアンの視線が一瞬下がり、俺の顔を見た。
「教えれるわけないだろ。まったく、今日は”5倍”にできると思ったんだけどなぁ”倍”に」
俺はウンウンとうなづきながら、まぁ、運がないときもありますよハハハッ。さっさと終わらせてどこかで酒でも飲もうかな、どこの酒場がいいですかね。……何時(小声)
「ルイダの酒場がいいんじゃないか、俺の行き着けだ。……9時30分(小声)」
そして俺はダミアンと別れた。薬草はクエスト用に取っておく方針にした、合計10個以上届けると新しいクエストが発生するらしいので。
時間もあるので宿屋にチェックイン、有料になっていた(80ゴル)。一息ついてシャワーを浴びる、この辺りは変わっていなくて嬉しい。そして時間までパソコン……パソコンがない、そういえばパソコン使用権(10LP)買わないと。LPショップにて購入後パソコンを求めてパソコン喫茶へ、15分20ゴルという値段、ここも有料か。1時間ほど過ごしてルイダの酒場に向かう、初日の夜に来たときは何の意味もないNPCがいるだけの酒場だったが、こんな使い道があったとは驚きである。
午後9時半を過ぎたころ一人の客がやってきた、大柄な男ダミアンである。ダミアンは俺の座っていた丸いテーブルに腰掛けダミアンは酒を頼んだ。
「アンタは何か飲まないのかい?」
未成年でもVRMMOの中ならば酒を飲むことに問題は無い、もちろん酒を注文。飲み物も到着しお話し合いがスタート。ダミアンが金額で若干ゴネたがこの場は俺がおごることで合意、ブエノン草、ハシシ草、パラライ草の正しい調合方法を無事入手したほか、今の俺にとって貴重な情報も何個も手に入れた。
まず、ダミアンの話を聞いて俺が失敗した理由が判明した。この毒草達は調合難易度が高く、調合レベルが高くないとどのような手段を用いても失敗してしまうこと。そして、調合方法がちょっとゲームチックになっていた、ようは俺の前世での製法と少々違うのだ。詰まる話、製法も違う、調合レベルも足りないという絶対に成功しない状態だったということだ。
そして何故ブエノン草やハシシ草は10本近く生えていて、薬草が3、4本しか生えていないのかであるが、草類は時間経過で一箇所に3、4本ずつ生える、そしてその場所で10本前後生えるとその場所はそれ以上増えないそうだ。薬草は生えた傍から採取されているから3、4本づつしか見つからない、俺が先ほど立てた仮説は正解だったようだ。
ちなみにこの情報は調合ギルドで累計1000ゴル以上のお買い物をすれば教えてくれる情報なんだとか。これは今はまだ未掲載だが数日以内に誰かが得る情報だな、掲示板に匿名で書いておこう。
ダミアンと1時間ほどで別れた。別れる前にダミアンから、また何かあれば教えるぜと言われた、お金に余裕があればまたよろしく。
600ゴル消費し、所持金がさびしくなったのでアイテムを売ろう。NPCのいる施設は閉店していた、俺は黙ってLPショップに行き宿屋マイルーム化を購入した(5LP)。
ああ、これでもうストレスなくやれる。宿屋マイルーム化もったいなくないかと思う人もいるかもしれない。だが、あの便利な環境の中で3日を過ごした後で、あの設備で1年近く過ごすのは俺の精神的に無理だ、無理。それにマイルーム化しなかった場合、売買をするときは、毎回店まで行かねばならず、余計にかかる時間は1年もあれば恐らく5日、120時間以上あるだろう。よって無駄ではないと確信している、自己弁護も兼ねている。
快適な空間になったところで掲示板チェック、パソコン使用権を買ったプレイヤーは何割くらいか気になるところだ。掲示板は昨日より少し書き込みが少ないが、かなりのプレイヤーが購入したようだ。以降はLPが0になるプレイヤーが出ない限り人数は減らないので一安心。これだけの人数がいればかなりの情報が掲載されるだろう、期待している。
無論俺も情報は書き込むのだが、毒草とレベルアップの件はどうしようか。別に情報を出すことに抵抗はない、しかし変な混乱を呼ぶ恐れがある。 発見しようとするプレイヤーが出ても毒草は名前が表示されていないため、広大な森の中に大量に生えている雑草の中から極々少数の草を目視で発見する必要がある。俺には探している間にフォレストキャット辺りに奇襲されて死亡する未来しか見えない。
名前が表示されない理由であるが、本来名前はギルド等でクエストを受けたりして見た目や特徴等の情報を入手することで表示されるようになる。逆に言うと、プレイヤーがどれだけ詳細に知っていたとしても、正規の手続きで情報を入手しなければ目の前に生えていても名前が表示されない。
ちなみに毒草とレベルアップの件は迷ったが、書き込むことにした。俺の伝えた言葉だけの情報を信用するか、実行するか、発見できるかはプレイヤー次第だ。
情報は様々な種類の情報がある。掲示板に乗る情報は大半が良い情報だ、参考になる。中にはガセ情報や知らなきゃよかったと思える情報もある。そして見てしまった、倍速生産職が忙しくて依頼を受けられないという情報だ。といっても分からなくはない、誰だって強い装備が欲しい、よってレベルの高い生産職に依頼が集中するのは十二分に理解できる。問題は、その中の一部の倍速生産職が多忙につき知り合い以外の生産依頼を受けつけない宣言をしてしまったこと。独占が、始まる。
と、悲観的に状況説明をしたが、実は俺にとってはそこまでの話ではない。等速生産職(入手経験2倍じゃない生産職)は十分な数がいるので、俺が適正レベルの生産職装備を買えない状況になることはないだろう。たまに倍速生産職のおこぼれが来ればラッキー程度に考えれば気楽なものだ。
一番不味いのは倍速生産職の支援を受けることができない倍速戦闘パーティーだ。Lvはどんどん上がるのに装備更新が追いつかなくなってくる。そうなると狩場のランクアップが遅れ、他の倍速戦闘パーティーに差をつけられる展開になる。他の戦闘パーティーを出し抜いてダンジョンクリアを目指すのが目的なのに、自分達より強い連中を作るのはそれだけで致命的なものになる。
このような状況を機に、倍速生産職増えないかなぁ~と期待しながら就寝。明日は別の街に向かう予定である。




