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14話目

 道ではない道を全力で駆けた。持っていた弓矢はもう投げ捨て、背負っていた荷物も駆ける途中で無理やり脱いだ。息は上がるというよりは呼吸の仕方を忘れたかのようになっている。どれだけの距離を、時間を逃げたかは分からない、誰かに聞くこともできない、周囲を見渡すが誰もいない。何度か足がもつれ転び足が少し痛い、本当はもっと痛いのかもしれないがあまりの恐怖の存在に痛みを忘れたかのような不思議な感覚に陥っている。


 なんとか呼吸のリズムを取り戻した。これからどうするか、一旦村に帰るしかないだろう。打ち合わせでも逃げろの合図がかかったら各自でトズケイ湖、若しくは村まで戻ることとしていた。帰りたいのは山々だが現在地が分からない。俺もこの山で狩りや薬草集めなどを行っていたのだが、がむしゃらに走った先なので現在地は分からない。確実に知っている道に行くためには逆走、つまり引き返す必要があるのだがそんなことできっこない。

 よって太陽で方角を決めて歩き出す。正直絶対に戻れる確信はない、だがあの化け物のいる方向に足を向ける度胸もない。アレがいませんようにと祈りながら歩くが、次第に日が傾いてきた。拙いな、と思ったが天は俺を見放さなかった。


 川だ。この川は、村の近くに流れている川ではないだろうか。俺は川の水を一杯だけ飲み、この川に沿って降りはじめた。しばらく下ると灯りが見えた、村だ、俺の村だ。疲れが吹き飛ぶような感覚、足が自然と速くなる。村の手前で誰かが松明を掲げている、村長の息子カレヴィだ。今回カレヴィは討伐隊には参加していない、もしかしたらこのような事態に備えていたのかもしれない。

 カレヴィに声をかけるとえらい驚かれた、道じゃないところから来たから当然か。大丈夫かと聞かれるが、大丈夫なわけないだろうと心の中で思う、広場で手当てを受けれるので行ってくれと言われ俺は向かった、肩くらい貸して欲しい、足痛いんだぞ。


 広場では5人の討伐メンバーが手当てを受けていた。オーギュストの姿もある、ハンターの一番大事なことは生きて帰ることと毎回言われていたが、実践できるところはさすがである。


「ブルーノ、無事だったんか、よかったな」


 オーギュストから明るい声で歓迎されたが顔色はよく見えない。他の皆は?と尋ねたが


「半分は戻ってきたべが、残りはまだ帰ってきてねぇ」


 そうか、と一言つぶやいたところで村の医者的ポジションのクッカ婆さんに治療してやるからさっさとこっちに来いと怒られた。


「軽い擦り傷ばっかじゃな、自分で塗りな」


 塗り薬を渡されるどころか自分で持っていけと言われた、昔この婆さんに薬草類の採取や薬の作り方を教わっていたので知識はあるし、保管場所も分かるけどもう少しやさしくしてくれてもいいんじゃないですかねぇ。

 薬を塗り終えたところでオーギュストから今日は帰って休め、明日の日の出に村長の家に来いと言われた、俺何かしたっけ?


 

 翌朝村長の家に行ったところ、カレヴィと俺で騎士団呼んで来いと言われた。なんで俺?と聞いたら生き残った討伐隊で馬に乗れて怪我してないのは俺だけらしい。オーギュストさん馬乗れるでしょ、そっちのほうがいいんじゃない?と言ったら、オーギュストは生存者の探索に行くとのこと。自分がいけると判断した負い目はあるのだろうがよく行けるなぁと感心した。俺とか絶対無理。


 というわけで久しぶりに首都に行った、馬を使って片道3日で到着。が、遊んでいる暇はない、騎士団本部に行って事情説明をしなければならないからだ。兵士に道を聞いて地図を見つつ街の中央にある騎士団本部へ、お、建て替えたのか前のボロかったしなぁ。ダイクン村派遣依頼ですとカレヴィが受付に伝えると奥に案内された。応接室に案内されてしばらく待つと見た目からして偉そうな騎士と年配の騎士、それと若い騎士の3人がやってきた。

 カレヴィがメインで話すため俺は見たモンスターの特徴を伝えるだけだ。俺はホワイトシープの2倍以上でかかった、雄たけびを上げたら白い毛が黒くなった、体から鎌が出てきた、2本足で立ったと伝えた。偉そうな騎士と年配の騎士が小声で少し話をした後、少し待っていてくれと言われて3人の騎士は退室した。なんだろう?とカレヴィと話す、10分ほどして3人が戻ってきた。

 

 偉そうな騎士の話によると、あの黒い羊はデスバフォメットという国内でも10年に1匹出るかどうかの危険極まりない大物モンスターだそうだ、よく生きて帰れたな俺。非常に危険らしいので1個騎士団50名が派遣されることになった、しゅ、出費が痛い、カレヴィを見ると頭を抱えている。ただでさえ働き盛りがごっそりいなくなったのにこの派遣の出費はきついよなぁ。


 うちの村への到着予定は5日後の午前になると言われ、よろしくお願いしますとカレヴィが伝えて退室した。首都で買い物したいなぁと思うがそんなことしている暇などない、村に直帰です。

 村に帰って村長に報告、俺達が首都に向かった後オーギュストが二人発見救出したという朗報、マジ尊敬するわ。しかし行方不明・死亡者11名という俺が生まれてから最悪の被害が出たという事実は覆らない。落ち着いたら知り合いの墓作りの手伝いをしよう。


 俺達が村に着いて二日、騎士団ご一行様到着。村長に挨拶した後討伐に出発、道案内はオーギュストとエンシオが担当。エンシオはかなり嫌がっていたが、オーギュストによる説得と騎士団の人数を見てしぶしぶ承諾。残った俺達は騎士団用の食事と水の準備をした、どうか早く見つかって討伐されますように、出費的な意味で。



 夕方になり騎士団が帰ってきた、出発時に比べて傷ついている騎士が多い。そして最後尾に近づいたところで毛の塊(デスバフォメット)がリヤカーに乗せられ引かれている、やったのか騎士団。

 夜は村で宴会となった。騎士団付きの司祭が今回の犠牲者への祈りと送りの儀式を行い、黙祷を行ったのちに死者の魂の送別式という名の宴会が始まった。無礼講というほどはっちゃけていいことではないが酒を飲める機会に沈んでいるのは損だし、明るくしないと魂が安心して離れられないと言われている。俺も酒は飲めるほうなので一杯飲んだ後ヘイモに絡みにいった。


 ヘイモと分かれた後カレヴィの元に行くと最初に会った若い騎士と年配の騎士と話していた。俺も乱入、お疲れ様でしたーと入っていく。

 年配の騎士が今日の自身の活躍を語っており、いやー、マジすごいっすね、どうやって倒したんですか?と聞いたら、なんでも後頭部に毛に隠れて見えない小さな角があり、そこが力の源だそうだ。それをへし折れば一気に弱体化するとのこと。毛に隠れてるのに場所分かるんですか?と質問を投げかけたら、魔法を使うときに発光するからそれで場所が分かるのさと笑いながら教えてくれた。酒飲んでいるとはいえベラベラしゃべっていいのかなと思ったがこの広い国で10年に1匹ペースだからもう俺が出会うことはないのかもしれない、出会いたくもない。もう二度とゴメンである。


 翌朝騎士団は出発した、この辺りが不作だったのは騎士団も知っていたので支払いについては分割払いにしてくれた。ロハで頼むよとも思うが、初日に見つかったため金額は予想よりは少ないのが救いか。今回、未知の生物と戦うのに楽観的に考えるのは非常に怖いということを身をもって知った。すぐに来ないと予想していたのだから情報を集めれば今回のような無駄な被害を出すことはなかったのだ。今後のモンスター討伐に生かしたいところである。




《ブルーノ=フェルセンin森 LP399》

 昔のことを思い出してしまった。昨日ゴブリンと戦わなかったのも、今助けに向かわないのもこのような過去の経験から来ているのだ。ああ、あんなこともあったなぁ……と懐かしい記憶を呼び覚ましているとブラックウルフと戦っていた女性プレイヤーは死んだ、潜伏状態解除、逃げよ逃げよ。


 逃げた先でST回復、地面に腰を下ろし一息ついたところで運命的な出会いがあった。何故、と思った、どうしてここにコイツがいるのかと。それは地面にあった。俺以外の人間が見ればその辺りに生えているただの雑草。しかし俺はこの草を知っている、これは雑草ではない、その草は俺にとっては切っても切れない縁があった。この草の名前はブエノン草、前世の俺を死に至らしめたと思われる毒草である。世界が変わってもなお俺の目の前に現れるとは、まさしく運命的な出会いとしか言いようがないだろう。

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