エデンの園にさようなら
長官「どうだ⁉進んでいるか?」
学者「これはこれは長官、ナイスタイミングですなぁ、ひひひ」
長官「ずいぶんと機嫌がいいな正直、気味が悪い」
学者「私はいつだって上機嫌ですよ、頭を悩ませてる時だってね。しかし、まぁ、こういう時は特別素晴らしい気分ですがね、ついに完成したんですよ!」
長官「なに⁉『エデン』が完成したのか?」
学者「えでん?なんですかなそれは?」
長官「なんですか?って今、最も重要な計画だろうが!『エデン』プロジェクト、国家間の緊張が高まる今、核シェルターの開発が急務だろうが!」
学者「核シェルター?あぁ、10003456886442688997785番のことですか。やですね長官、完成したのは9647976688631390747904番のことですよ」
長官「なんだそれは?番号じゃわからんプロジェクト名で言え」
学者「核シェルターに『エデン』なんて中二くさいネーミングセンスのプロジェクト名より番号の方がすっきりわかりやすいと思うんですがね」
長官「そそっ、そんなのはお前らだけだっ!この変態どもめっ!」
学者「おやおや、命名者は長官でしたか」
長官「ちちち、違わい!」
学者「まぁ、そんな事はどうでもよろしい。それよりも、今日、完成したこいつを見てください」
長官「…そんな事って…ん?なんだこれは?」
学者「これこそ、十年前、トイレで天啓を受け、私を今まで悩ませ続けた発明!見て下さい、ここをこう引っ張ると、トイレットペーパーがキッチリ一枚分…」
長官「それこそ、どうでもいいわ!」
学者「長官は一枚分じゃ足りない方ですか」
長官「そうじゃないっ!いいか?いつ大規模な核戦争が起きるかわからないんだぞ!そんなもんより!核シェルターの開発の方が重要だろうが!進み具合はどうなってるんだ!」
学者「完成しましたよ」
長官「え⁉」
学者「そんなものとっくに完成しましたよ」
長官「なっ、なんだと⁉そんな報告は受けてないぞ!」
学者「えぇ、報告する程の事でも無いと思いまして」
長官「最重要プロジェクトだと言ってるだろう!まぁ、いい。で?どうなんだ?」
学者「どうとは?核シェルターなんですから核ぐらい防ぎますが」
長官「当たり前だ!問題はどの程度かって事だ」
学者「そうですね、計算上では100発程なら直撃しても平気です。放射能を含めた有害線の99.78%を防ぎます。まぁ、核戦争程度なら楽勝でしょう」
長官「凄い自信だな…生活可能な期間はどれ程なんだ?人類が滅亡するほどの攻撃の後、すぐにはでれんだろう?生き埋めと同じ状況になっては元も子もない」
学者「長官…杞憂はよして下さい。核シェルター内でも半永久的に生活が可能です」
長官「そんな訳ないだろう⁉」
学者「私を誰だと思ってるんですか。いいですか?長官の為に物凄く簡単に説明すると、人工太陽の搭載、空気生産装置、食物生産工場、循環システムによって、人間が生活するために、必要なもの全てシェルター内で生み出すことができます。無駄は一切なく循環するため資源は尽きません」
学者「何世代にも渡って生活する事も可能です。それこそ半永久的にね、もう、地球なんて必要ありませんよ」
そう言うと学者は顔を歪めて笑った。