表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハリボテロミオの夏の夢  作者: 矢倉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/31

第五幕:結果

「ん……」

 あれ……?ここは、どこだ?

 目を開ければ、そこには白い天井があった。LEDも白色なので、眩しくて眼を細める。おかしい。さっきまで舞台にいたはずなのに……。舞台は……?舞台はどうなったんだ?

 慌てて身体を起こして、周りを見渡す。目に入ってきたのはパイプベッドにクリーム色のパーテーション。一つだけ置かれた棚の上には、救急箱が置かれている。どうやら、ここは救護室みたいだ。


「玲央!気がついたのか?!」

「汐恩……?」


 僕が周りを見ていると、汐恩がパーテーションの奥から現れた。


「よかった……!お前、毒薬飲むシーンでガチで倒れたんだよ。で、幕が上がっても起きなくて……マジで心配したんだからな!」

「そうだったんだ……ごめん」


 まさかそんなことになっていたなんて……。僕は迷惑をかけたことを、素直に謝る。


「まあ、軽くのぼせただけだろうって。待ってろ。監督呼んでくるから」

「あ、うん……」


 そう言って、汐恩は救護室から出て行った。部屋には、僕一人。……だと思ったんだけど。


「お疲れ」

「お疲れ様です、玲央!」

「玲央、お疲れ様〜!」


 みんなも心配してくれていたようで、ずっと僕のそばにいてくれたらしい。


「あ……ッ」


 ありがとう。そう伝えるつもりで、口を開く。けれどみんなの顔を見たら、それより先に感情がぶわっと湧き上がってきてしまった。

 やったんだ。できたんだ。僕は、舞台の上で、大勢の観客の前で、ロミオになれたんだ。気持ちが溢れ出て、止められない。涙が、次から次へとこぼれ落ちて、シーツを濡らす。感謝の気持ちを伝えるつもりだったのに、喉からは全然声が出なかった。


「ッ……あ、ぁ……ッあ!!!!」


 急に、手も震え出す。今になって、急に舞台に立った時のプレッシャーがやってきた。本当に、みんなのおかげだ。みんなが僕に、勇気をくれたから……だからこうやって舞台に立つことができたんだ。


「みん、な……あり、がと……ッ!ありがとう!!!」


 泣きじゃくる僕を、みんなは黙って優しく抱きしめてくれた。

 しばらく泣いていて、ゆっくり呼吸を整える。すると冷静さも戻ってきた。


「そういえば……」


 涙を拭きながら、僕はみんなに聞く。


「大会って結局……」

「玲央!」

「玲央くん!」

「先輩!」


 けれど突然、部員のみんなが救護室に入ってきた。慌てて僕は涙を拭いて、みんなの方を見る。でも、視界はぼやけたままだ。それでも、監督の手に握られたトロフィーは、しっかり目に入った。


「あ……それ……」


 そこにははっきりと、「最優秀賞」と刻まれている。


「玲央くんのおかげだよ!お疲れ様!!!」

「へあっ?!」


 そう言って、朱里さんはいきなり僕に抱きつく。思わず、変な声が出てしまった。って、ちょっと待って。朱里さん何してるの?!どうしたらいいかわからず僕が固まっていると、上から言葉が降ってきた。


「朱里、玲央は起きたばっかりなんだぞ?」

「あ!そうだよね?!ごめん、玲央くん!」

「ったく……」


 蘭くんに言われて、朱里さんは僕から離れる。心臓がバクバクしていたのに、蘭くんの顔を見たら冷静になった。そっか、蘭くん……今日、見に来てたんだ。


「蘭くん……」

「……なんだよ。……ったく、最後の最後まで遅刻しやがって」

「あ……ご、ごめん」


 咄嗟に、僕は謝った。結果的に最優秀賞をとることができたけど、それはあくまで結果論だ。蘭くんが言うように、第一幕には間に合ってないからみんなに迷惑をかけたし、僕と蘭くんではロミオの解釈も違ってたから、蘭くんの思うロミオじゃなかったはずだ。きっと怒っているに違いない。僕は甘んじて蘭くんの怒りを受け止めるために身構えた。けれど、


「でも、良かったよ……お前のロミオ」

「え?」

「お疲れ」


 それだけ言って、蘭くんは救護室から出ていってしまう。思っていなかった言葉に、僕は何も言うことができなかった。


「おい、お前ら!玲央はもう大丈夫みたいだから、撤収準備だ!!!」

「はい!」

「玲央、お前はギリギリまで休んでろ」

「は、はい!!!」


 監督にそう言われて、みんなは足早に撤収準備に向かってしまった。けれど、


「玲央!」


 汐恩は最後まで部屋に残っていた。なんだろう?そう思っていたら、汐恩が無言で拳を突き出す。それを見て僕は笑いながら、汐恩の拳に向かって同じように拳を突き出した。そして、


「お疲れ!」


 二人でそう言って、コツンっとグータッチをする。改めて、今日の公演が無事に成功で終わったんだと実感した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ