表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

お飾りの王妃になった異世界召喚された聖女

作者: 月森香苗
掲載日:2026/04/25

※主人公の恋愛描写はありません。

※GLに見えるかもしれませんが違います。

 私は恋人同士を引き裂く趣味はこれっぽっちも無い。思いあっている二人を別れさせてその座に着くなんて事もしたくない。

 そもそもの話、異世界にいきなり召喚された挙句に王子と結婚しろなんて上から目線の命令に従う理由は無かった。


 私がアンドレス王国に召喚されたのは半年前のこと。

 高校での授業を終えて帰宅している最中のことだった。いきなり足元に大きな穴が空いて逃げ出す間もなく落ちた。最後の記憶は私の正面にいたおじさんの目を見開く顔だった。


 その次の記憶は、よく分からない石の床の上に座り込んでいて、周りには男の人ばかり。

 顔面きらきらの金髪の男性がとても苦しげな顔をしながら「よく来て下さった、聖女様」と言ってきて、私は理不尽にもこの世界に招かれた事を理解した。

 そこからあれよあれよと王城に連れていかれ、偉そうな態度の国王とかいうおじさんに色々言われたけれど、話半分にしか受け止めなかった。

 王子を世話役につけるから、なんて言われたけど冗談じゃなかった。なんで男に世話されなきゃいけないの。


「いやよ。女の人はいないの?男の人がそばに居るなんてやめて欲しい」


 どれだけイケメンだろうが、私としては『なし』だった。

 第一、聖女とか言うなら教会とかに行かせて欲しい。欲望丸出しの王城とかには居たくなかった。

 だけど私の訴えはことごとくおっさんに無視された。

 女の人、って言ったのに王子をとゴリ押しされたし、教会に行きたいと言ったのにほぼ監禁。何のために私がここにいるのか、意味がわからなかった。


 王子は申し訳なさそうにしていて、婚約者と引き合わせてくれた。私の話し相手や相談役として。

 それがアンネリーゼ。

 アンネリーゼはとても落ち着いた女の子で、私と同じ歳。私とは違って頭が良くて動きが綺麗で、そして王子の事が大好きだとすぐに分かった。

 王子とは二歳の年の差で、小さな頃から婚約していたんだって。

 まわりの大人達は私と王子をくっつけようとしているけど、私は王子とアンネリーゼが一緒のところを見るのが大好きだった。

 アンネリーゼはこの世界のことを何も知らない私に色々と教えてくれた。そして聖女の役割も。

 私は異世界の存在で、この世界で飽和している力とは真逆の力を持っていて、中和させる事で安定させることが出来るそうだ。

 いるだけでいい。

 なら、別に王城にいる必要はないのに、権威の為とかそんなものの為に私は監禁されているようだった。


 無理やり連れてきた上、私の自由を奪い、私の望まないことをする人達の為になんで私は我慢しなければならないの?

 アンネリーゼはどうやら私と王子をくっつけたい人に虐められているらしい。私が表に出ないようにさせた上で、私と王子は心惹かれあっているのにアンネリーゼが邪魔をしているとクソジジイが情報操作しているようだった。


 私が王子に心惹かれる?そんなわけない。好みでもなんでもないし、アンネリーゼのことが大好きで仕方ないという男を好きになるはずがないのに。


 ある日、アンネリーゼが毒を飲まされた。

 死ななかったけど後遺症は残って、立つ事が出来なくなった。そうなると王子のお嫁さんには相応しくないとかで強制的に婚約が解消された。


 王子は発狂した。


 私は許せなかった。私と王子をくっつける為に邪魔なアンネリーゼを排除しようとしたことは許せなかった。


 この世界に神がいるならば教えて欲しい。

 どうしたら、復讐が出来るのかを。


 私の毎日の祈りはついにこの世界の神に届いた。




「アンネリーゼを害したあんた達に呪いを」


 私が神様に特別に貰った力は、一回だけ使えるとてもとても強い呪いの力。呪いではなくて、正確には祟る力。

 呪いは解くことが出来ても祟りは解除出来ない。死ぬまで、いや、死んでからも苦しめられる力。


「アンネリーゼを邪魔だと思った全ての人が呪われますように」


 呪いの中身は、色彩を失うというもの。

 色彩というのは大事だ。感情を揺さぶるには色が必要。それに、危険かどうかも色で判断出来る。

 それを私は奪い去った。

 アンネリーゼのように立てなくなった訳じゃないし、命の危険に直面した訳でもない。

 だけど、金貨が大好きな人にとって色が無くなったら本当にそれが金貨かどうか分からなくなるし、食べ物が美味しそうに見えなくなる。服だってチグハグになるだろうし、宝石の色もわからなくなるよね。


「これは絶対に解けない呪い。神様が私に与えてくれた力。ざまあみろ」


 私は王子の手を掴んで走った。私に同情してくれていた侍女が身動きの取れるようにと服を選び、靴はここに来た時のスニーカーを履いていたから、私はとにかく走った。


「アンネのところに行くよ!呆けてないで!」

「ああ」


 発狂していた王子を一喝したらようやく正気に戻ったらしい。

 馬の方が速いと言われて、私は乗馬なんてしたこと無かったけど王子にしがみつき、アンネリーゼのお屋敷に走ってもらった。

 足腰はガクガクだけど、お屋敷に入れてもらってアンネリーゼの部屋に案内してもらった。

 ベッドに横になって痩せ細ったアンネリーゼ。絶望に満ちた顔。私が来なければ幸せだったはずのアンネリーゼ。

 私が悪いのかって言ったらそうでは無いけど。

 だって私だって被害者。アンネリーゼや王子も被害者。

 加害者は私を召喚したヤツらだし、アンネリーゼを傷つけたヤツら。


「アンネリーゼ、私のただ一人の友達」

「ユナ、さま」

「ごめんね。私がもっと早くに神様にアンネを守れる力をくださいって祈っていればこんな事にならなかったのに」

「いえ……ユナ様、が、いらっしゃらなくても、わたくしを、殺したい人は、たくさんいましたから」


 王子の妃になりたい人はたくさんいて、権力欲に取り憑かれた人達はアンネリーゼではなくて自分の娘を妃にしたかった。

 王子の妃になって贅沢したい人も同じ。


「馬鹿じゃないの。王妃って一番報われないのにね」


 自由なんてない。贅沢なんて国を思えば出来るわけもない。ああ、今の王妃が贅沢三昧だからそう思っちゃうのか。馬鹿じゃないの。


「アンネ。私はね、この世界が大嫌い。私から家族も友達も何もかも奪った。でもね、アンネがいるから我慢出来るんだよ」


 どうしたらアンネリーゼを守れるのかなぁ。

 私はこの世界が大嫌い。だけど、アンネを守る為には、誰も逆らえない力が必要だよね。


「ねえ、王子。私をお飾りの王妃にして、アンネだけを大切に出来る?」


 そんなに私と王子をくっつけたいなら、そうしてやればいいのかと気付いた。アンネリーゼはこのままだと誰とも結婚できない。そもそも、アンネリーゼは王子が大好きだから、他の人と結婚なんてさせたくない。

 だけど、側室なら?

 私には王妃の仕事なんてほとんど出来やしないけど、やってみなきゃわからない。好きでもない王子の子供は産みたくない。

 毒で弱ったアンネリーゼに酷な事を言うけど、アンネリーゼがもしも許してくれるなら王子との子供を産んで欲しい。

 元々王子とアンネリーゼが結婚して子供を産んでその子が王様になるはずだったんだから。

 後宮で王子とアンネリーゼがラブラブなのを私は見ていたい。私もアンネリーゼと一緒にいたい。

 お飾りのお仕事としての王妃なら我慢出来るよ。

 私がアンネリーゼを守り、王子とアンネリーゼが一緒にいられる方法ってこれだと思うの。

 歩くことが出来なくなったアンネリーゼに無理をさせたくない。大変な仕事を私がするの。もしもね、アンネリーゼが今まで頑張ってきた勉強で私を助けてくれるなら嬉しいけど。


 私は王子の名前もまともに覚えていないけれど、アンネリーゼの名前は覚えてるの。ていうか、アンネリーゼの名前しか覚えてないや。


「私はね、推しカプは見て満足したいの」

「おしかぷ、とはなんだ?」

「私が全力で応援する恋人同士ってこと。王子とアンネリーゼの二人のラブラブを見てるだけでハッピーなの」


 王子の疑問に答えると、めちゃめちゃしかめっ面。

 王子の事は無視はしてアンネリーゼの窶れた手をそっと握り締める。


「さっきの話はアンネが嫌なら断っていーよ。これまで頑張ってきたアンネを馬鹿にしてるような提案だもん。愛されるだけの側室でいて、なんて」

「いえ……わたくしが、フェドリック様のお傍にいられる、唯一の方法ですよね?」

「私の考えだけどね」


 王子の名前、フェドリックだったのか。忘れてたわ。王子で通じてたし。


「フェドリック様が、それで良いのであれば」

「聖女様はいいのか?」

「うん。この世界のやつと結婚とか出産とか絶対にお断り。でも、アンネリーゼと一緒にいられるならいーよ」


 まるでアンネリーゼに恋をしてるみたいな発言だけど違うからね。アンネリーゼは私にとって精神安定剤なの。不安定な私のそばにいて泣き言を聞いてくれていて、家に帰りたいって泣き喚いた私をただ一人抱き締めてくれたの。

 アンネリーゼが平穏に暮らせることが私にとって最優先のこと。

 お願い、生きて。笑っていて。二人が一緒にいて笑っている姿が好きなの。



 そうして私は王子と結婚した。

 私に呪われた奴らは私を恐れたけれど、お前らがそうしろってずっと言い続けてアンネリーゼを損ねたんだから喜びなよ。

 国王はあれほどまでに偉そうだったのに、私を恐れて王の座を捨てた。逃げたんだ。王妃もアンネリーゼに危害を与えていて、あれほど大好きだった宝石も見分けがつかなくなって病んだみたい。

 沢山の鬱陶しい邪魔なお偉いさん達が無能になった。

 王子は国王になり、私はお飾りの王妃になった。

 結婚式は異例のことをして、聖女の私とずっと王子を支えていたアンネリーゼで王子を挟んで行った。アンネリーゼの花嫁姿を私が誰よりも見たかったから。

 一応、アンネリーゼに教えて貰いながら王妃の仕事もきちんとしていった。

 約束通り、国王になった王子はアンネリーゼだけを大切に愛して、そして二人の子供が生まれた。

 幸いなのか、アンネリーゼの後遺症は足だけで、腰とかは無事だったから地球で使われていた車椅子を作らせた。

 イスに車輪が付いてるだけのようなものは安定感はないし危ない。だから、朧気な知識で何となくこんな感じ、というのを絵で描いて職人に作らせた。

 これはアンネリーゼだけでなく、老人とか怪我人にも使えるものだと思ったのね。

 王様だって休みがある。そんな日はアンネリーゼの車椅子を押して庭園を散策している光景が見られる。

 私もそこに混ぜてもらうことがあるけれど、仲の良い二人の姿に私は幸せを感じる。

 時間の移ろいとともに過去の所業を知らない若い子が、私のことを愛されない王妃とか言っているけれど、私は最初からお飾り王妃でしかないし、王妃業は仕事でしかない。

 二人の子供は王子と王女で、どちらも私を二人目の母親だと言ってくれる。それで充分じゃない?

 アンネリーゼが育てているからどちらも本当に賢くて、きっと立派な国王になるだろう。



 最初に亡くなったのはアンネリーゼだった。

 やはり一度毒を与えられた体はゆっくりと体を蝕んでいたのかな。

 王子が十八歳の時に立太子の儀をしたのを見届けて、三十八歳の若さで亡くなった。

 フェドリックは憔悴しきるほど嘆いて後を追うんじゃないかと思った。

 私も悲しくて悔しくて、なんでアンネリーゼがって泣いたけど、アンネリーゼがフェドリックと子供達をお願いと言ったから何とか立て直した。

 フェドリックが暫く使い物にならないのは分かっていたから、私が臣下と共に出来るだけ凌いだ。

 フェドリックがどうにかまともに動けるようになるには三年くらいかかって、その間を乗り切った私が今度は情緒不安定になった。

 アンネリーゼがいたから私は頑張れた。この世界で生きようと思った。そのアンネリーゼが居なくなって、がむしゃらに仕事をして、落ち着いた時に一気に襲いかかってきた不安感。

 そんな私を支えたのは同じ悲しみを共有出来るフェドリックであり、二人の子供だった。

 フェドリックはあくまでも戦友であり、アンネリーゼについて語り合える貴重な友人だった。

 王子と王女には婚約者がいて、それぞれ心の支えがあったのは良かった。


 アンネリーゼが亡くなって十五年。王子も結婚して子供も大きくなって余裕が出来た頃。

 フェドリックが病で倒れた。五十五歳の彼は、治療を拒んだ。早くアンネリーゼに会いに行きたい、と。

 私はその気持ちを優先した。

 フェドリックは国王としてとても誠実だった。前王が逃げ出して僅か二十歳で王になり、王子に安心して引き渡せるまではと粘っていた。

 子供が幼い頃に中々一緒にいてあげる時間も取れなかったからこそで、三十三歳の王子の上の子が十二歳ならもう大丈夫かなと思ったんだろうね。

 それでもまだ早いとは思うけれど、これ以上フェドリックを頑張らせるのもなぁ。


 病で苦しいだろうから、少しでも楽になれるようにと鎮静作用のある薬だけを処方してもらい、一年足らずでフェドリックはアンネリーゼの元へ駆けて行った。

 私は多分長生きすると思うの。だって地球にいた頃、ひいおじいちゃんとひいおばあちゃん生きてたし、長生きで病気知らずの家系だったし。

 王子が国王になり、私は王太后という立場になったけど、二人がいない王城は辛いだけだったので、教会に身を寄せることにした。

 神様の元へ行った二人が幸せでいられるようにと祈る日々。

 時折、二人の子供がそれぞれ私を呼んでくれた時にお茶を楽しむくらいで、この世界に来て初めて、私は何も考えることなく、失った世界や先に逝ってしまった二人を偲ぶことが出来ている。


 そんな私も遂には寿命を迎えたらしい。

 八十九歳まで生きたのって中々じゃないだろうか。


 聖女として召喚されて、この世界で嫌々ながらも生きて、何だかんだがんばって寿命を迎えたのよ。

 わんわん泣く国王や公爵夫人になった子供達はとっくにアンネリーゼやフェドリックの年齢を超えている。

 その二人の子供にはそれぞれ三人の子供がいて、更に孫までいる。


 アンネリーゼとフェドリックの血を継いでいる子孫が沢山いて、私を囲んでいるのって、かなり幸せな事だと思わない?


 私が死んだら私の魂はどこに行くのだろう。

 この世界の神様のところ?それとも地球?

 地球に帰れないのならせめてアンネリーゼとフェドリックに会いたいなぁ。



 この世界のことは嫌いだったけど、でも今は結構好きだよ。

 だからね、ばいばい、この世界。

主人公は「推しカプを壁になって眺めたい」派です。

主人公視点の話なので分かりづらいですが、主人公はかなり病んでいます。

アンネリーゼとフェドリックに依存しているところがありました。二人だけが信頼出来る人達。

二人がいなかったら自死もやむ無し。お前らの為に生きるものか。と世界からさよならバイバイしてました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 聖女ちゃんが元の世界に戻れなかったのが気がかりですね後はざまあ
うううーん、ハッピーエンドじゃない。 いや王子とアンネはある程度ハッピーだったけど主人公が。 元の国に帰る方法とか王子たちと研究して戻れればよかったんだけどさ。国王へのザマァも足りない気がしてスッキリ…
主人公も幸せになって欲しかったな〜。 というか、呪いを掛ける力を与えられるのなら元の世界に戻せや神様!!(怒)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ