短編
短編
彼女はずっと迷っていた。
これでよかったのか、と。
自分で選んだはずなのに、どこかで後悔している気がして、その感情に触れないようにしてきた。
考えないようにしていた。
泣けば病んでしまうから。
好きだった気持ちを思い出せば、前に進めなくなるから。
だから彼女は、感情を誤魔化した。
日々を回すことを最優先にした。
ご飯を食べられているか。
お風呂に入れているか。
笑えているか。
それだけを大切にして、生きていた。
関心がないふりをして、強がって、
ときには悪口を言って、
感情を殺したつもりでいた。
でも、それは消えたわけじゃなかった。
ただ、奥にしまい込んでいただけだった。
声を聞いた瞬間、
凍らせていた感情が一気に溶け出した。
涙が止まらなくなった理由を、彼女はもう否定しなかった。
「そうか……」
ちゃんと好きだったんだ。
ちゃんと愛していたんだ。
彼女は、泣きながら笑った。
それは後悔でも未練でもなく、
自分の感情をやっと認められた証だった。
「よかった。これで、前に進めるね」
そう呟いた声は、静かで、でも確かだった。
ずっと表に出さないようにしてきた後悔も、
誤魔化してきた気持ちも、
この夜ですべて役目を終えた。
彼女はもう、自分を責めなかった。
優しすぎた自分も、拒絶を選んだ自分も、
全部含めて、正しかったのだと知ったから。
夜はまだ深い。
けれど、彼女の中には確かな朝があった。
短編、恋の終わり




