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幻影国家再建記  作者: 白波ほずみ
第二章 セピア・エル・グラディア

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セピア・エル・グラディア③

人々の慌てる様子を見ると、セピア達はお店の外へと出た。


人々が逃げてくる方に目をやると、屋台が1軒赤く燃え上がっている。


油に燃え移ったのか、炎はますます大きくなっていく。


「危ないぞ!近づくな!逃げろ!」


叫び声が危機を伝えている。


井戸から桶を持って一人の男性が駆け寄ってくるが、足をもつれさせて地面に転んでしまった。


水は地面にばらまかれてしまう。


炎は隣の屋台にも、手を伸ばしかけている。


セピアはその様子を観察する。


炎は人の手では抑える事ができない程に、大きくなっている。


その時だった。


「助けて!!!」


屋台から女性の声が聞こえた。


「誰かいるの?」


セピアの胸が跳ねる。


セピアは一瞬躊躇するも、水の精霊の力を使う。


手から出てきた水は溢れんばかりの渦となり、1本の水柱を形成し屋台へと向かっていく。


水が熱を奪う音が聞こえると、黒い煙は白く空に広がっていく。


炎が小さくなると、桶を落とした男性が屋台へと走る。


セピアは自分の手を見つめると、燃えた屋台へと視線を移す。


「よかった…」


セピアが胸を撫で下ろすと、鼓動が高鳴っていることに気がついた。


「エマ!!!大丈夫か!!!」


男性が駆け寄ると、女性が倒れていた。


セピアは恐る恐る近づいた。


女性は横に倒れている。

煤にまみれ、腕や背中が赤く腫れていた。


セピアはその様子を見ると、自分の手が震えている事に気がついた。


「セピア…」


レオンが名前を呼ぶ。


セピアは倒れている女性を見ながら震えている。


しかし、口をキュッと結ぶと、女性に近づいた。


「わたくしが治します。」


皆がセピアに注目する。


エマの前に膝をつくと、彼女の傷に手を触れる。


「癒やしの精霊よ。この者を治し給え。ヒーリング」


その言葉と共に、手のひらからエメラルドグリーンの光が彼女を照らす。


赤く腫れていた傷は、次第に薄れていく。


その様子を見ていた人々は、安心に満ちた呼吸をする。


「…ありがとう」


エマは力ない言葉でお礼を言うと、街の病院へと運ばれていく。

セピアはその場に座ったまま。


「…レオン、立つの手伝っていただけますか?腰が抜けてしまいました」


少しはにかみつつ、セピアは言った。


レオンがセピアに手を貸すと、ヨロヨロと立ち上がる。


「まだ、手が震えてます」


セピアを見ると、手どころではなく全身が震えていた。


「さすが皇女様だ。家で休んでいけ」


酒屋のビルが二人に声をかける。


市の活気が戻りつつある。


二人は再び、ビルのお店に入っていった。


席につくと、セピアは両手でコップを持つ。


震える手で、飲み物を口へと運ぶ。


「しかし、凄かったな。やっぱりこの国の未来の王様だ」


ビルが言うとセピアははにかんだ。


「でも、わたくしは怖かったですわ。もしも、誰かが亡くなったりしたら、立ち直れそうにもありませんでした。」


そんなセピアにビルは言う。


「エマさんはな、お腹に子供がいるんだよ。」


セピアはビルの方を向く。


「え?そうだったんですの?」


「ああ、だから、セピアちゃんが救ったのは、エマさんだけじゃない。お腹の中の子供も、救ったことになる。」


「スゲーやセピア。二人も同時に救えたなんて」


セピアはほっと胸を撫で下ろした。


自分が救った命の重さは、未来を繋げる力だった。



城の鐘が鳴る。


3回、3回、3回


「…バレましたわ!」


セピアは立ち上がる。


セピアが城から抜け出した時に鳴らされる鐘の音。


「あー、今回は少し遅かったな。新記録じゃないか?」


いつもは早く給仕が気がつく。

しかし、セピアは少しベッドに細工をしていた。


「近衛が城から出る前に、戻りますわよ」


ビルは笑顔で見送る。


「おう!気をつけて戻れよ」


ビルが言うと、セピア達は店を出て走り出す。


外にいた人々は、セピア達に声をかける。


「転ぶんじゃねーぞ」


「元気でね。また来るんでしょ?」


そんな声が、セピア達にかけられていた。


街の石だたみはでこぼこで、走りづらい。


レオンもまた、セピアに続く。


何回かセピアと行動をしていた為か、レオンも慣れていた。


走るセピア達に手を振る人々。


皆笑顔で見送ってくれる。


この国の当たり前の光景は、昔から変わらない。


大きな橋を走り渡る。


釣り人が二人に手を振る。


セピアは釣り人に笑顔で手を振り返す。


鐘が鳴ったらセピアが走って橋を渡るのを知っていた。


エリーが岩の上に腰掛けているのが目に入る。


お城に続く道、鐘が鳴るとエリーはここで毎回セピアを待っていた。


「エリーおばあちゃん!銀板使わなかった」


エリーの前で立ちどまると、セピアは銀板を取りだす。


「まったく、いつもいつも懲りないねぇ」


エリーは嬉しそうにセピアと話す。


「だって、わたくしの楽しみの1つですもの」


セピアの笑顔を見送ると、銀板は別の袋に入れられた。


城壁の門が開いている。


見ると近衛の騎兵隊が用意されているが、門を出ようとする気配は無い。


セピアは少し気まずそうに門へと入る。


「殿下!困ります!毎回毎回お城を抜け出すなど」


騎兵の声は大きいが、目は決して怒ってはいない。


「申し訳ありません」


セピアが言うと、騎兵は穏やかに話す。


「街での事、ご立派でした殿下」


セピアは目を丸くする。


近衛は既に街での火事の事。そして、人を助けた事を知っていた。


「王がお呼びです。」


セピアは玉座の間に向かう。


「陛下、ご機嫌麗しゅう」


「おかえり、セピア」


威厳を放つ王の迫力。


しかし、娘のセピアを前に、父親へと戻る。


「今日は大変だったな。怪我はなかったのか?」


「はい、大丈夫でしたわ。街の方が怪我をしてしまいましたが、なんとか救うことができましたわ」


王は頷くと


「そうか。我が娘ながら、立派になったな」


その言葉を聞くと、セピアは頭を下げる。


「ありがとうございます。お父様」


セピアを見つめる瞳は、とても誇らしげに輝いていた。

やっと、ここで前半って感じでしょうか。


整理しつつも、こんな感じでいいかな?とか


いろんな考えが浮かんでいました。


また、近く更新できたらいいな。


まだまだ、第二章は中盤です。

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