セピア・エル・グラディア②
「あの方もまた、城を抜け出していた。」
エリーがまだ少女だった頃、今の王もまた、民の中に混じって歩いていた。
畑を手伝い、街では人々の顔を見、子供たちと遊んでいた。
歴史は繰り返され、今の王国が存在していた。
それが、セピアにも自然と受け継がれていた。
二人の背中が見えなくなると、エリーは農作業へと戻った。
セピアとレオンは大きな橋を渡る。
城下にはいろいろな畑が広がっている。この畑に水を与える役割りが、このグラディア川となる。
「このグラディア川、畑に水を与える役割りになってるんだよな。凄い数の用水路も作られてる」
橋の欄干に手をかけると、セピアは川を眺める。
「この川はとても大きいですわ。流れも穏やかで…」
橋の上から見ると、川は澄んでおり魚が泳ぐ様子もしっかりと見る事ができる。
釣り人が釣りをしている。桶の中には、数匹の魚が入っている。
グラディア川はとても大きく、天然のお掘りを形成している。
川を挟む様に、金色の小麦畑が広がる。
橋を渡り終えると、街が見えた。
前に来た時よりも、人々が多い。
セピア達は街へと入る。
金色の瞳に金色に近い白い髪。少し尖った耳。
とても目立つ。
「あら、セピアちゃん。肉ぐしが焼けたけど、食べていく?」
声をかけられセピアは振り向く。
入り口近くにある肉屋の女将さん。
「あ、ベリーさんこんにちは。頂いてよろしいので?」
お店に近づくと、焼きたての肉ぐしを1本受け取った。
「俺のは?」
「あんたのは、おまけしとくよ」
レオンはお金を払おうとすると、セピアも銀板を出そうとする。
「セピアちゃんの分は、レオンから徴収しとくよ。女の子にお金を出させようとするなんて、なんてダメな男だろうねぇ」
「ズリーだろ!それ!」
ベリーは大きく笑う。その様子に、セピアはクスリと笑った。
街の市は、まるでお祭りの様に賑わっている。
珍しいお菓子を売る店の前には子供たちが集まり、お酒を提供するお店には大人が集まる。
人々は思いのままに過ごしている。
セピアは珍しいお菓子を売るお店の前で足を止めた。
1本の棒、それをお店の人がくるくると回すと、白い綿が生き物の様に棒に絡みついていく。
セピアはレオンの腕に絡みつきつつ引き止める。
「ねえ!レオン!あれ!あれなに?」
レオンはセピアの少し慌てた感じの様子に、吹き出す。
「あれは、綿菓子だよ。初めて見たのか?」
「はい、初めて見ました。ものすごくふわふわしてて、あんな食べ物があったなんて知りませんでしたわ」
「銅板1枚だって、買ってやろうか?」
セピアの目が輝く。
お店の人から綿菓子を手渡される。
自分の顔くらいある大きさ。
「こんなに大きなお菓子、食べ切れるのかしら?」
セピアの疑問はすぐに解消された。
一口食べると、口の中に広がる香ばしい甘みと共に、その綿は溶けて無くなる。
口に手を当てると、その驚きに目が開いている。
「なんですの?これ。口の中で無くなりましたわ」
レオンが自分の分で買った綿菓子を一口分引きちぎると、口の中に入れる。
「どうよこれ。美味しいだろ?」
「はいとても」
レオンに習って、綿菓子を一口分引きちぎる。
その一口分の綿を、じっくりと観察する。
繊維は白く、陽の光でキラキラと輝く。
少しギュッと力を入れると、綿は固まり指についた。
「セピア、それ握りすぎ。」
セピアの指についた綿をみながら、レオンは笑う。
「こっ、これはどうしたら」
セピアが少し慌てている。
「そんな時は舐めればいいんだよ」
セピアは自分の指についた綿を舐める。一瞬でなくなるが、指のべとつきは取れない。
セピアは周りを見ると、井戸がある事に気がついた。
「ちょっと失礼しますわ」
桶に水が入っている。そこにハンカチをつけると、絞る。
その時だった。
片手で不安定になっていた綿菓子を、桶の中に落としてしまったのだ。
水の中に吸い込まれる様に、一瞬で無くなる綿菓子。
セピアはショックで言葉が出ない。
その様子を見ていたレオンは、後ろで笑っている。
「俺のやるよ。」
少し綿を引きちぎると、セピアに渡す。
「⋯ありがとうございます……」
桶の中には、さっきまでもふもふに綿菓子がついていた棒が1本、浮かんでいた。
綿菓子を食べ終わると、少し元気の無いセピア。
「セピア、元気出せって。他にも美味しいものあるんだから、食べに行こうぜ」
「…はい。そうですわね。」
腰掛けていた花壇のレンガから立ち上がると、市を見渡しつつ歩き始める。
少しうつむきかげんのセピア。
「おう、セピアちゃんじゃねーか。」
酒屋のビルがセピアに声をかける。
「こんにちは、ビルおじさん」
少し元気の無い様子にビルは気がついた。
「なんだぁ?レオン、お前まさか、セピアちゃんいじめてなんかないよなぁ」
「そんなことしてねぇって!」
レオンがさっきの経緯を説明すると、ビルは大声で笑う。
「なーんだ、それで元気がねぇのか」
ビルは店の中へと二人を入れた。
綺麗に並べられた酒の瓶にジュースの瓶。
ジュースの瓶を1本取ると、氷の入ったコップに注ぐ。
「これでも飲んで、元気出しな」
セピアとレオンに差し出されるジュース。
セピアが口をつける。
酸味の中で甘さが広がる柑橘系。
「とても美味しいですわ。」
「だろ?この国の南にある畑で作ったオレンジジュースだよ。」
もう一口飲もうとすると、外が突然騒がしくなった。
近いうちにと思い、少しづつ構成を考えている訳ですが、セピアの章は少々長くなりそうですね。
年明けしないうちに、第二章を書き上げることはできるのか?
思考錯誤です。




