セピア・エル・グラディア
私は、一時の間、ここで眠る⋯
古よりも遥か昔、グラディア王がこの国を作ったとされる。
その王は精霊の力を糧に、国を栄えさせた。
数千年の時を経て、新しい王が誕生する。
セピア・エル・グラディア。
彼女は民を愛し、人々がこの国で幸せに生きる事を望んでいた。
その想いは、グラディア王の誕生から、長き時を越えて受け継がれてきた。
城の鐘が2つ鳴った。
城に産声があがる。城に女の子が産まれた合図と共に、新たな王を知らせる鐘。
「新たな王は、女王陛下だ!」
畑を耕していた農夫は、青空を眺めた。
その日の夜は、街が祝賀ムードになった。
酒を飲み交わし、人々の笑顔が街を包んでいた。
畑に浮かぶ無数の小さな光の玉。
まるで踊るように宙を舞う。
この出来事を喜ぶ様に。
城の窓が開く。
すると、こっそりと顔を出し、誰もいないのを確認する。
「誰もいなさそうですね」
ベッドの足に結ばれたロープを下に垂らすと、セピアはゆっくりと下に降りる。
芝生の上は柔らかく、とても綺麗に手入れがされている。
高くそびえる城壁。
セピアは土の精霊に話しかける。
「ここに穴をあけてくださいな」
すると、土の精霊はセピアが通れるくらいの穴をあける。
そこを通ると、セピアは城を抜け出した。
「戻しておくの、お忘れにならないように」
穴は塞がり、元の状態に。
セピアは走り出す。
城門を護る近衛兵に見つからない様に、とうきび畑の中に紛れ込む。
数回近衛兵に見つかり、すぐに連れ戻された事があったが、どうやら今回は成功した様だ。
「うーん、今日はどこへ行きましょう」
とうきび畑を抜けると青空を見上げる。
「これっ!!!また抜け出したのか!」
セピアは肩をすくめつつ振り返る。
「エリーおばあちゃん?」
「まったく、皇女殿下なんて身分の人が、毎度毎度お城を抜け出しては、こんなところまで遊びに来て」
セピアは困惑気味にも言い訳をする。
「だって、毎日毎日お勉強とか習い事とか、大変なんですもの。たまには息抜きだってしたいですわ」
ため息をはきつつも、呆れることはない。
「今日は何していくんだい?」
セピアは眉を寄せつつ首を傾ける。
「うーん、特に考えておりませんでした」
エリーは岩に座ると持っていたカゴを置いた。
「そうかい。これから休憩だから、お菓子でも食べていくかい?」
セピアは満面の笑みを浮かべる。
「はい、頂いていきます」
セピアはカゴを挟んだ岩に腰掛ける。
カゴの中に入っていたのはクッキーだった。セピアは1つ手に取ると、一口分かじりつく。
口の中に広がる小麦の香りと砂糖の甘さ。
お城で食べる焼き菓子も美味しいが、エリーおばあちゃんが作ったクッキーは格別だ。
「紅茶もお飲み」
コップに入った紅茶を手渡される。
「ありがとうございます」
クッキーに紅茶。
とても美味しい。
「あれー?セピアじゃん。また城ぬけだしたんか?」
声のした方を見ると、同年代ほどの男の子。
日に焼けた顔に、白い歯が目立つ。
「抜け出したなんて人聞きの悪い事を言わないでいただけます?」
エリーは呆れつつも、特に何も言わない。
「で、今日はどこまで遊びに行く気なんだよ?」
少し考えると
「そうですわね、街まで行こうと思っております」
とうきび畑の先には小麦畑、この集落の村の先には小さな街がある。
街の人々の顔を見る事は、セピアの楽しみの1つでもある。
「街まで?結構距離あるじゃん。俺も一緒に行こうか?」
「よろしいのですか?」
セピアの目が少し大きくなる。
「セピア、レオン、今日は街で市が開催されてる日だよ」
エリーが言う。
街の市は、セピアはまだ見た事がない。
「市やってるのか、って事は、屋台も多いな」
レオンが言うと、セピアは首を傾げる。
「屋台?なんですの?それ」
「屋台って言うのは、美味しい物を少し食べられるお店の事だよ」
「まあ」
二人のやり取りを見ると、エリーは腰布から銀板を1枚取り出した。
お金にすると、3000円程の価値がある。
「これ使って、何か美味しい物でも食べてきな」
セピアにそれを手渡す。
「え?いいんですの?ありがとうエリーおばあちゃん。必ずまた、お返しに来ますわ」
「セピアだけズリー、俺のは?」
「あんたはさっき手伝い賃貰っただろ」
エリーは眉をよせつつも、二人が街へ行くのを見送った。
「あの子が将来の女王陛下になるなんて、私達は凄く幸せ者だねぇ」
エリーは空を眺める。
少し段階を追って、更新して行く感じにしました。
大体2000字程度ですが、この国の雰囲気は伝わってくれたと思います。
次の更新は、また近くにでも。




