壊れる精霊国家 ⑯
商人は小麦を買い占める。
街では小麦が高騰する。
街ではパニックになりつつある。
その状況は、一通の封書により王城へと届く。
ローディアス伯爵は額に手を当て、目を瞑る。
「…この状況を予想していなかった訳ではないですが……こうも早く進むとは………」
女王は机にある羊皮紙を見つめる。
「………」
すると、会議室のドアがノックされる。
ドアが開くとカシウス・エル・グラディア公爵が入ってくる。
胸に手を当ててお辞儀をする。
「陛下の招集により、参上致しました。」
女王はスッと立ち上がる。
「急な呼集に来ていただき、ありがとうございます」
カシウス公爵を見ると、頭を下げる。
女王が頭を上げると、カシウス公爵も頭を上げる。
「それで、ノルディア王国の交渉内容はおわかりかね?」
「はい、飢餓による食料不足の為に、食料支援をしてもらいたいと……」
一瞬周りを見やると、ローディアス伯爵の雰囲気に何かを感じたのか、カシウス公爵は顔を顰めた。
「何かあったのかね?」
女王は頷いた。
「…先程、隣町から報告がございまして、これを……」
女王が手紙を差し出すと、カシウス公爵は受け取った。
手紙に目を通す。
「……こんな事が……」
「…はい」
「では…」
ノックの音。
アルベルト・エル・フォルグレイ伯爵とルシウス・ヴァレンティ男爵が入ってくる。
「女王陛下の命により、参上致しました。」
「女王陛下の呼び出しにより参上致しました」
女王は二人に目をやる。
「お二方も、ありがとうございます」
軽く頭を下げる。
カシウス公爵も二人に目をやると、再び女王へと視線を戻す。
「では、提案と致しましては、一度小麦を買い戻し保管すると言うのはいかがでしょう?小麦を配給制にし、民に与える形をとると言うのは…」
カシウス公爵の歯切れの悪さに、女王は口元へと手をやる。
「…何か、ありますのでしょうか?」
カシウス公爵は頷く。
「食料の配給と言うのは、経済活動に国が手を入れる形になります。そうなると、自由な売り買いができなくなると言うデメリットも生じてしまいます。」
「…そうですか」
女王は息を吐いた。
視線はカシウス公爵へと向けられている。
「…もし、小麦を買い取ったといたしましょう。民は困らなくなりますでしょうか?」
カシウス公爵は顎を触る。
「配給制を取りますと、民が自由に買う事ができなくなりますので、少々不自由な状況になるかと思われます。配給は量を決めて行う形になりますので…」
女王は口を閉じる。
「では、こう言うのはいかがでしょう?」
アルベルト伯爵が手を上げる。
視線は全て、アルベルト伯爵へと移る。
「世帯別に小麦通帳を配布し、家族分を把握して配給を行う。そうすることによって、配給の量を調整すると言うのは」
女王の視線が天井へと向く。
「そうなると、多い世帯には多めに、単身の方には一人分が食べていける量にと言う事しょうか?毎週配る形にしたいのですが、大丈夫でしょうか」
ローディアス伯爵が羊皮紙へと何かを書き込んでいたが、手が止まる。
「陛下、現在市場に出回っている小麦は今年取れたものになります。ですので、その量を今計算してみましたら、それだけでも国民は全て食べていける量になります。ですので、商人から全て買い占めできれば、この問題は大丈夫だと思われます」
女王の口元が緩む。
「そうですか」
状況を見ていたルシウス男爵が動く。
「では、早々に国境を封鎖して、商人が外に出ない様にしないといけませんね。小麦が外に出る事を防がないと。マリー殿、申し訳ないが、議事録を変わりに取っていただけますか?」
マリーはルシウスを見る。
「かしこまりました。では、私が議事録を一時的に引き受けさせていただきます。」
ルシウスは会議室を出る。
女王は視線を真っ直ぐにする。
「では、今の状況が悪くならない様に、行動して参りましょう」




