壊れる精霊国家 ⑫
早馬が走る。
蹄は鋭く四拍子を刻む。
泥をはね、水を飛沫に変える。
蹄のリズムはやがて石畳を叩く。
街を駆け抜ける。
兵士の掛け声に、人々は避ける。
再び泥をはね、水を飛沫にする。
馬はローディアス伯爵の元へと向かう。
アンディー・ローは邸宅へ戻る馬車の中、額を抑えて目を閉じる。一定のリズムの呼吸。いつの間にか邸宅へと着いていた。
馬車の扉を開けると、ゆっくりと降りる。
足音が響くと、邸宅の扉を開く。
「おかえりなさいませ」
メイドが帽子と上着を受け取る。
一息つくと階段を昇る。
絨毯の引かれた廊下は足音が響かない。
書斎の扉を開くと中へ入りドアを閉めた。
書斎の椅子に腰掛ける。
机の上には羊皮紙が整理され置かれている。
ノルディア王国の使者から封書を貰うと、すぐさまローディアス伯爵へと使いを出した。
封書の中は確認していない。
封書は女王への物だったからだ。
片眼鏡を外すと、背もたれに寄りかかる。
目を瞑ると、呼吸がまた、一定のリズムを刻み始めた。
ローディアス伯爵の邸宅前に早馬が到着して暫くすると、扉が勢いよく開きメイドが走って外へ出る。
すぐに馬車が用意されると、ローディアス伯爵は早歩きで馬車へと乗り込む。
蹄の音と車輪の音は勢いがある。
少し大きく揺れる馬車。
「………」
ローディアス伯爵は羊皮紙へと手紙を書いている。
馬車の揺れが落ち着くと、王城が見えてくる。
城門を潜ると、やがて停まる。
ローディアス伯爵は素早く馬車を降りると、小走りで城の扉の前にやってくる。
扉が開かれると、すぐ様王城の会議室へと向かう。
「ローディアス様、いかがなさいましたか?」
ローディアス伯爵は手で持っていた封書を掲げる。
「セピア陛下に、急ぎこれを渡したい。ノルディア王国からの封書だ」
女官は眉間にシワを寄せると、小走りで女王の部屋へと向かう。
ノックの音が2回。
セピア・エル・グラディアはドアを見る。
「…は…い…」
返事をする前に扉が開かれた。
「陛下、緊急の呼び出しでございます。会議室へ」
女官が言うと、女王はスッと立ち上がり部屋を出る。
「…緊急って、何かありましたの?」
「はい。ノルディア王国の封書が届いております。」
「ノルディア王国ですか。難民の事でしょうか?」
「まだわかりません。セピア様がお開けにならないとなりません」
「…わかりました」
早歩きの女官についていく。
会議室に着くと、ローディアス伯爵がいた。




