壊れる精霊国家 ⑧
馬が走る。
地面には水溜り。
踏むと大きく飛沫が上がる。
馬に乗る兵士に雨が叩きつける。
肩掛けのバックには、大切な封書。
兵士は急ぎ向かう。
―――――――――
ローディアス邸の一室。
「紅茶が入りました。どうぞ。」
ソーサーの上に小さなスプーンとティーカップが乗っている。それが机に置かれると、カチャっと音がした。
ゆっくりと香りを楽しむと、ローディアス伯爵は紅茶を一口すする。
王城での会議は無難に終わっていた。
窓の外は相変わらず暗く、雨音が叩きつける。
羊皮紙に書かれた会議の内容。
難民は一家族だった事もあり、今後増えても500程と、多めに想定していた。
この数が押し寄せても、計算では倉庫には余剰が多く残った。
「これだけ残れば、民も安心できるだろう」
時間は優雅に流れる。
蹄の音が近づいてくる。
「早馬か」
ローディアス伯爵は窓を少し開ける。
蹄の音は次第にゆっくりになり、停まる。
甲冑の音が響くと、玄関がノックされる。
メイドが対応すると、兵士を屋敷の中に入れた。
ローディアス伯爵はゆっくりと席を立つ。
階段を駆け上る音がすると、部屋の前で止まった。
コンコンコンと、ノックの音。
「入りたまえ」
すると、ドアが開く。
「アンディー・ロー様より、急ぎ報告が届きました。お目通しください」
兵士は封書を取り出すと、ローディアス伯爵へ差し出す。
ローディアス伯爵は何も言わず封書を受け取ると、ナイフで封を開ける。
紙を取り出すと目を通す。
[緊急の連絡であります。北の街の関所に、複数の難民が現れました。一応ではありますが、数が増える想定で200人分の食料を関所に送り、対応いたしました。]
ローディアス伯爵はこの報告を見ると、顎を触る。
続きを読む。
[しかしながら予想は外れ、それ以上の難民が押し寄せてまいりました。]
『…なるほど。と、言う事は、こちらで予想をしたくらいにはなるか』
[その数は、1000人を超える…]
ローディアス伯爵はそこまで読むと、額を抑えた。
「何と言う事だ!予想を遥かに超えている!」
ローディアス伯爵は小走りに机の上の羊皮紙を取り上げた。
「…今の状況、数……」
ローディアス伯爵は計算を再度試みる。
算出された難民の数は、1万を遥かに超えた。
町や村の範囲ではなく、北の国の飢餓は、予想を遥かに超えていた。
ローディアス伯爵は椅子に座ると背もたれに寄りかかり目を瞑る。
「これは、大変な事になる…」
ローディアス伯爵は馬車を用意させた。
そして、手紙を書くと王城へと使いを出す。
そして身支度をすると馬車に乗り、王城へと向かう。
王城にローディアス伯爵の使いが封書を持ち込む。
女官が封書を開封すると、手紙を取り出し女王へと渡す。
セピア・エル・グラディアは手紙に目を通す。
[陛下、緊急のご報告がございます。すぐにお伺いします。
ローディアス・エル・ヴァルグレイン]
手紙を確認すると女官を見る。
「会議室の準備をしてください。これから、緊急の報告をしたいとローディアス様が」
「かしこまりました。早々に準備をいたします。」
女官は頭を下げると、部屋を出ていく。
セピア・エル・グラディアは、手紙を机へと置くと、ゆっくりと椅子に腰掛けた。




