壊れる精霊国家 ⑤
東の空が赤い輪をつくる。
空はまだ暗く星がきらめく。
街はまだ静かだ。
霜柱が踏みしめられ、バリバリっと音がする。
グラディア王国の国境に近い場所、彼らは夜通し南へと歩き続けた。
日が頭を覗かせると、葉についた氷を輝かせる。
彼らに希望を見せる様に。
―――――――――
朝、グラディア王国の北の街
硝子職人が窯に火を入れる。
火は意思を持っているかのように、次第に大きくなっていく。
大きくなった火に空気を送ると、青白く轟音を立てる。
火の粉が宙を舞う。まるで楽しく踊る様に。
商人達は硝子細工を見て回る。光に当たると細かく光を反射する。
商人達はそれらを仕入れる。
街には人々が行き交い、思い思いに過ごしている。
街の郊外にある邸宅。
背の高い男は片眼鏡をつける。
帳簿を一枚づつ確認すると、倉庫に入った分を数字に加えた。
「この街の人々が、3年は食べていける計算になるな」
帳簿を閉じると椅子を回転させて外を見る。
空は青く、白い雲がゆっくりと流れる。
グラディア王国の国境の門、兵士達は交代の時間。
グラディア王国に入国した人数、馬車の数、手形が合っているかの報告。
それらが終わると、さっきまで門を護っていた兵士達は街へと戻っていく。
門にはさっき交代した兵士が立つ。
青い空にはゆっくりと流れる雲。
道には誰もいない。
兵士は前を見続ける。
商人達が硝子細工を仕入れると、城下町へと隊列を作って戻っていく。
硝子職人は新しい硝子細工を作り上げると、一息ついて水を飲む。
飲食店に人々が入り始める時間になると、お店の中は騒がしくなる。
話し声に食器の音、料理人が鍋を振るい、街には香ばしい香りが漂い始め、街ゆく人々はその香りに導かれる。
門番の兵士が弁当を広げる。
すると、道の奥に小さく見える4人の家族連れがゆっくりと歩いているのが目に入る。
兵士達は広げていた弁当を包み直す。
そして、4人の家族連れをじっくりと観察する。
顔は青白くやせ細り、多くの荷物を持っていた。
ゆっくりと近づいてくる家族連れは、身なりがしっかりと整っている。
「今日はどの様なご用件で」
家族連れに声をかける。
しかし、家族連れは言葉を発しない。
そして、子供を見つめた。
「……今日はどの様な…」
「食べ物を分けてください」
兵士が再度問いかけようとすると、母親が声を出した。
兵士は返答に困る。
『どう言う事だ?食べる物が無いと言う事か?』
兵士は横に並ぶ兵士と顔を見合わせた。
「どう言う事でしょうか?とりあえず、こちらへ」
兵士は詰め所の小屋へと家族連れを案内する。
兵士達は家族連れから事情を聞く事にした。
家族連れに出される保存食。
コップに注がれた水。
家族連れはそれを見ると涙をながした。
「…ありがとうございます。ありがとうございます……」
その様子を見て、兵士達は顔を見つめ合った。
家族連れに状況を聞く。
「つまり、畑には何も育たなくなり、市場への流通もストップしていると、そう言う事なんですね?」
「…はい。街では行き倒れてる者も発生しております。」
「……そんなに深刻な事に…」
兵士達は顔を見合わせた。
門番の兵士は報告書を作るなり、それを街の役人に届ける事にした。
アンディー・ローの元へ報告が入ったのは夕方頃。
北の国のノルディア王国で深刻な飢餓が発生しており、一家族だけではあったが、難民が発生しているとの報告。
その報告書に目を通すと、帳簿を開いた。
「これから、大量の難民が押し寄せてくる可能性があるな」
その考えを元に計算するが、食料の余剰は残りそうだ。
アンディー・ローは手紙を書くと封蝋を押し、早馬でその報告を出した。
一息つくと、片眼鏡を外す。
椅子を回転させると、暗くなった空を眺めた。
現実的な静かな始まりって、きっとこんな些細な事なんだろうなって
そんな感じで書いてみました。
何かが始まる時、何かがズレる。
それって、普通とは違うものだと思うんですよね。
だから、普通とは違う何かを加えた感じです。
その加える物って、いざ書いてみると難しい。




