大樹の記憶
我はかつて国であった。
栄華を誇る大国であった。
民は幸せな笑顔を見せ、子供たちは楽しそうに走り回る。
ある日、それは来たのだ。
世界的な大飢饉。
他の国の者は飢え、明日にも命がなくなる。
人々は腹を減らした。
しかし、この国には人々を飢えさせない為の食料があった。
我らは、人々に食料を配った。
無償で。
しかし、それを良く思わなかった者もいた。
それはそうであろう。
なぜならば、この国の民が飢えるかもしれないのだ。
しかし、土壌の良いこの国には大きな問題ではなかった。
そして、とうとう始まってしまった。
他国の者に食料を分け与えたこの国は、目をつけられてしまったのだ。
ここの土壌を手に入れれば、民は飢えることが無い。
そう思った国があったのだ。
彼らは、財宝を持ってきた。
この国の畑が欲しいと。
この飢饉では、財宝など価値は無い。
人々は生きる為に食べたいのだ。
この国の選択は、食料は分け与える。
しかし、財宝はいらないと言う物であった。
この国には、財宝と呼べる宝を外国に売る程の資源も持っていたのだ。
この事により、財宝を持ってきた国には疑念が生まれてしまった。
本当に、食料を分け与え続けて貰えるのだろうか?と言う疑念だ。
疑念を持つ者は、必ず管理をしたがる。
そして、我が国に彼らは見張りを置きたいと要求したのだ。
我らを信じられないと。
しかし、我らは空腹の民に食料を分け与え、飢餓から救おうと奮闘していた。
我らは管理者を受け入れる事になった。
他国の民にも食料を分け与え、そして我らの民にも食料を与え、そして管理者を置く国にも分け与えていた。
そして、同じ様に我が国に食料を支援してほしいと言う国が、もう一国増えたのだ。
その国は、最初の国とは違い、財を持ってこなかった。
我が国の中には、これを良く思わない者がいた。
そして、生まれた感情。
自国民に与えず、他国の者に与えるのか?
と言うものだ。
そして、彼らは管理者を追い出せと煽る様になってきたのだ。
支援してもらっているのに、まるでこれは監視であると。
彼らの考えは一理ある。
今後、自分達が食べられなくなる可能性を心配しているのだ。
財宝を持ってこなかった国の管理者は、とうとう配られる食料について注文を始めた。
もう少し小麦を融通してくれないか?
もう少し、野菜を融通してくれないか?
しかし、我らは皆に平等に行き渡る様にしていたが、不満が出てきてしまった。
平等に行き渡る様にしているのに、不満が出る。
そして、新しく管理者を置いた国の管理者を追い出せと言う論調が生まれ始めた。
そして、ついに起きてしまった。
新しく管理者を置いた国の管理者が、我が国民に石を投げられると言う事件が。
新しく管理者を置いた国は、管理者を守る名目で、軍を置きたいと要請してきたのだ。
しかし、流石にこれは断る。
軍の派遣とは、治安を護る事ではない。
法治国家に他国の軍が入るとは、その法治を他国の憲法や法で裁いてもいいと言う意味にもなる。
我が国は警官隊による警備を始めた。
民はこう言った。
なぜ、他国の者をこの国の警官隊が守るのかと。
その矛先は、同じ国民である警官隊に向いたのだ。
民衆による警官隊への投石による怪我が増えると、警官隊は武装を強化した。
しかし、剣は持たず鎧と盾のみ。
我が国の警官隊は、とても勇敢に仕事をしてくれている。
民衆による怒号、投石、暴力。
全てを受け流しつつ、管理者を守り続けた。
そして、新しくきた管理者は、食料品を数え始めた。
全て平等に配られているのか?と言う名目で。
もちろん、平等に配られている。畑の作物を纏めているのは、この国の民なのだから。
我が国としては、この国の管理者について、帰国してもらう判断をとった。
最初にきた国の管理者は、何も言わず、我が国を信頼してくれていた。
そして、我が国もこの管理者に第三国への食料供給について、見て貰う事にしたのだ。
面白くないのは、第三国である。
少しでも、民を飢えさせたくはない。
それは、正しいだろう。
だから、数を数えて不平等が無いかをしっかりと見たいのだ。
しかし、それを良く思われなかった事により、管理者は帰国させられた。
第三国は、最初に管理者を送った国と、とある交渉に入った。
その交渉とは、第三国と同じ様に、配分される食料を数えてほしいと言うもの。
最初に管理者を送った国は、我が国に要請を出した。
小麦の量だけ、数えさせてほしいと。
この世界では、小麦は主食である。
手のひらにあるだけの小麦で、子供なら何とか救える程の物だ。
他の食料については貴国を信頼しているが、小麦は粉になっているから、目分量的には見る事ができないと。
計量する時だけ、立ち会わせてほしいと。
我が国としては、この提案に合意した。
全ての食料品ではなく、主食であったからだ。
勿論、不誠実にはしていない。
この合意に対し、第三国であった国はこう言ってきたのだ。
なぜ、その国の管理者は良くて、我らの管理者はダメなのか?
不誠実ではないのか?
第三国の民は、現状餓死者がとても多かった。
財も少なく、支援を頼もうにも頼めない。
そんな国にとって、我が国が食料支援について無償で行うとなれば、飛びつきたくもなる。
彼らも国民を餓死から救い、生き残ろうとした国なのである。
我が国は国民に、第三国の行いについて許す考えを示し、小麦だけは数える事を許す事について、説明した。
国民は納得してくれた。
その年の小麦の収穫量は、この二国を含めても、充分に飢餓を脱せる程の収穫量となる。
この年、この二国を招いての収穫祭が執り行われる事となる。
第三国は全ての民を救え、最初に管理者を送った国もまた、全ての民を救えたからだ。
しかし、世界的な大飢饉。
我が国と交渉をしたい国はたくさんあった。
この国の畑は、狙われていた。
奇跡的に、この3つの国の民は飢餓から救われた。
この二国、我が国からは隣り同士の国である。
良からぬ考えは、最初に管理者を置いた国から出たのである。
収穫祭から数週間後、それは起こったのだ。
この国の国境沿いに、3000の兵力が駐屯したのだ。
第三国は、治安維持の為に兵を置きたいと言っていたが、国境を越えて動かせる兵力は存在していなかった。
国境沿いに駐屯してから1週間程経った頃、進行が始まった。
我が国も国境沿いに兵を置いていたが、この地域は畑がある地域。
そこに駐屯させる訳にもいかず、少し離れた場所に兵を置いていた。
我が国の兵士達は、この畑を作ってきた農民達であった。
もしもの時、志願兵として戦うと言って、王女と話しをしていた者達だ。
王女は
もしも、本当に戦争になったら絶対に逃げてください
と、言われていた。
相手国の進軍が始まった。
一糸乱れぬ隊列で、この場所へと進んでくる。
相手国の兵士達は、足音を揃え、鎧で表情も伺えず、行進してくる。
背筋が冷たくなる程の威圧感。
しかし、農民達は逃げない。
王女の言いつけを守らず、この地を守ろうとしているのだ。
農民兵達が抜剣すると、敵兵も抜剣する。
心臓の音が早くなる。
そして、頭に感じる冷たい感じ。
鳥肌がとまらない。
一人の農民兵に剣が突き立てられた。
それを見た他の農民兵は、歯を鳴らしながら敵兵に切りかかる。
しかし、槍でつかれてその場に倒れた。
農民兵達は、ここで王女の言葉を思い出す。
しかし、進行が進んだ中で、もう手遅れとも言えた。
農民兵達は撤退を開始する。
しかし、敵の騎兵隊の進撃の速さには敵わない。
またたく間に倒れていく。
農民兵は歩兵で構成されていた。
退却戦も分からず、必死に逃げるが、弓で射抜かれ、剣で切られ、槍でつかれて倒れていく。
我が国の騎兵隊が到着する。
まだ逃げ続ける農民兵を救う為に、敵騎兵隊に猛攻を仕掛けていく。
先遣された騎兵隊は僅かな数。
しかし、農民兵を逃がす為には充分であった。
先遣された騎兵隊にも倒れた者が出たが、農民兵の一部もまた、逃げ切れたのだ。
その報告に、王女は涙を流した。
畑はまた作ればいいのです。
なぜ、あなた達が倒れなければならないのですか。
この国の国土や土壌なら、いくらでもやり直せるのに。
王女の涙は、怒りへと変わる。
侵略軍は、この地域の畑を全て占領した。
土壌がいいのもあり、この地域の村は、全て壊されていく。
王女は力を使った。
すると、我が国の兵士は疲れない体となった。
街や村が壊され、そして人々は奴隷の様に使われ始めたのだ。
人々を救い出す為には、力が必要だった。
兵士達は敵を殺し続けた。
この大国は、戦争をした事がなかった。
古よりも遥か昔、建国の時から。
戦争は力があれば勝てると、思い込んでいた。
兵士は疲れを知らない。力も強い。
しかし、敵に攻撃を受けていないのに、倒れたのだ。
王女は何故かわからない。
側近達も理由がわからない。
兵士達は敵に勝ったが、全滅してしまったのだ。
戦争が終わった翌年、この国の作物は育たなくなった。
農民達は必死に畑を耕し、種を植え、水をやり、頑張ってきたが、土はまるで砂のよう、水は塩分を含んでいて、飲める様な状況ではなくなっていた。
この年もまた、世界的な大飢饉が発生しており、この国の人々もまた、犠牲になってしまう。
我はかつて、国であった。
どうか、今を救ってほしい。
我の根本にある土は、死んでいないのだ。
後書きです。
こんにちは、こんばんは、ほずみです。
最初から重い雰囲気になってしまった感じの序章です。
この国の滅びた様子、読んでみて不思議に感じたと思います。
そして、入れたい内容は国を滅ぼす為にどうしたらいいか?
何と言うか、王女は強化魔法を使える存在?とか、感じたと思います。
そして、大樹を語り部とする事で、この国の記録者と言う感じを出せたと思います。
まだ続きますが、ゆっくりと物語の性質を考えて、書いていこうと思います。
もし、この作品に興味を持っていただいた方がいたとしたら、とても嬉しく思います。
序章から第一章は、終わりと始まりを書こうと思っています。
まあ、続ける事ができたらですが(笑)
今後とも、よろしくお願いします。




