宇宙からの通信
データの着信を示すLEDの点滅とサーバの稼働するくぐもった音に満ちた室内で、田島は黙々と作業を続けていた。彼は諜報機関に所属する通信技術者で、特に暗号通信のスペシャリストだった。国を守るために情熱と技術の限りを尽くして不眠不休で懸命に働いていた。
「何だ、これは?」
田島はその日偶然、宇宙からの暗号通信を傍受した。彼は早速、暗号を解読した。とても深刻な内容だった。それは地球に送り込まれたスパイに向けて、宇宙人が発信した通信だった。田島は愕然とした。自分たちが地球の中で互いに相争っているうちに、奴らは着々と地球侵略を推し進めて来たのだった。すでに地球人になりすました宇宙人が少しずつ各国の要職に就いているようだった。こうしてはいられない。一刻を争う事態だった。そして田島は傍受した通信の内容を地球防衛軍に連絡しようと考え、その支部を訪れた。
「もうすでに閣僚の何人かが宇宙人と入れ替わっています。一般大衆の中にも不特定多数の宇宙人が紛れて、機会を伺っています。一刻を争う事態です」
地球防衛軍の窓口を訪れた田島はそこにいた隊員に一生懸命掛け合った。このままでは手遅れになってしまうと力説した。けれども彼らはニヤニヤ笑っているだけだった。また頭のおかしな奴が紛れ込んで来たよ。なんとかしてほしいのはこっちだよと言いたげな感じだった。
「あなたの隣に宇宙人が紛れ込んでいるかもしれないのですよ。のんびりしている場合じゃないですよ」
田島は必死だった。
「そんなことを言われてもねぇ」
窓口の隊員は、もう一人の隊員に語り掛けていた。
「本当にねぇ」
もう一人の隊員も適当にあしらおうという考えのようだった。
「あなたの隣にと言われてもねぇ」
そう言った隊員は、いつの間にか宇宙人の姿をしていた。緑色の肌で大きな頭と大きな目をしていた。
「運が悪かったですね。あなたには消えてもらいましょう」
宇宙人はそう言うと田島に光線銃を向けた。
「危ないっ!」
咄嗟に別の隊員が飛び出して来てくれて田島を救ってくれた。
「以前から怪しいと思っていたら、やっぱりそうだった」
そしてその隊員は光線銃を宇宙人に向けて発射した。宇宙人たちは攻撃をかわしつつ逃げて行った。
「もう大丈夫です。それで具体的にはどんな内容でしたか?」
その隊員は言った。田島は閣僚の中でそれと思しき人物の名を語った。
「そうでしたか。そこまで知られていましたか」
そういうとその隊員も宇宙人の姿になった。さっき逃げて行った宇宙人も戻って来た。どうやら田島を信用させるために演技をしていたようだった。
「以前から怪しいと思っていた」
そこへまた別の隊員が現れた。田島はじっとその隊員を見ていた。
「あなたも宇宙人じゃないのですか?」
田島は聞いた。
「そう思います?」
結局、地球防衛軍の隊員は宇宙人だらけだった。これでは地球は守れない。それが現実だった。
「あなたも仲間になりませんか?」
宇宙人は言った。そして田島は彼らの仲間になった。それ以来、田島は地球政府の動向をつぶさに調べることになった。田島の技術と経験が十分に活かせそうだった。重要な情報を入手すると宇宙人たちはとても喜んでくれた。その時、田島は生きていて良かったと心から思うのだった。




