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想いの先にいるのは

「……彼はわたくしのことを、ただ一人の令嬢として接してくれます。そして何より、彼の真っ直ぐな意思や行動に惹かれましたの」

「じゃあ、頑張ってアピールしないとですね!」


アメリアが胸の前で拳をぎゅっと握り、自分のことのように気合をいれる。

だが、リリィは困ったように、わずかに眉を寄せながら答えた。


「……いいえ、わたくしは彼との恋の成就を望んではいません」

「えっ!?」

「は?どういうこと?」

「望んではいないと申し上げましたが、少し語弊があるかもしれません……。正しくは、『望めない』でしょうか」

「リリィが望んでも落とせない相手なんているわけ……」


アンネリーゼは足を組み、ふんぞり返りながら言いかけ、何かに気づいたようにはっと息を呑んだ。アメリアも目を見開いて驚いている。


「リリィ様、もしかしてそのお相手の方は……カイゼル殿下ですか?」


リリィは二人へ交互に視線を送ってから、観念したように答えた。


「ええ、ご名答ですわ」


その返答に二人は思わず唖然とした。


「……カイゼル殿下のお相手に、わたくしが釣り合わないと思ってはおりません。ですが、わたくしの気持ちだけでどうこうできる方でもありません」


リリィは少し目を伏せて、ふぅっと息を吐いた。


「なので、わたくしはこの気持ちを胸に秘めたまま墓場まで持っていく所存です」

「いや……でも、そんなことって悲しすぎませんか?気持ちを伝えないままリリィ様は前に進むってことですよね?」

「リリィは強情すぎるとお姉ちゃんは思うよ?たとえ恋が叶わない相手だとしても、気持ちを伝えるだけなら不敬にはならないんじゃないかな?」


二人の優しい言葉に、胸に温かいものが込み上げてくる。

だが、リリィは微笑みながらも首を横に振った。


「いいえ、そのようなことはいたしません」


リリィは少し逡巡したあと、心に決めていたことを二人に伝え始めた。


「わたくしは来年の春頃、公募で婚約者を探そうと心に決めました」


彼女の発言に二人はさらに驚きをあらわにする。


「公募で!?お姉ちゃん、何も聞いてないんだけど!?」

「私も初耳です!!」

「この話はもうすでにお父様とお母様に通してありますわ」


決めてから行動に移すまでの速さに、彼女の決意の硬さを二人は察した。


「公募……カイゼル殿下への気持ちを秘めたまま未来の婚約者を……」


アメリアの口角がみるみるうちに下がっていく。

やるせない気持ちを抱えながら、それでも必死にリリィに訴えかける。


「リリィ様は本当にそれでいいんですか!?」

「ええ、もう決めましたもの……」


リリィは虚空を見つめながら答えた。


「——でもっ!」

「アメリアさん、私たちが何をいってもリリィの中で答えを出したんだ。諦めるしかないよ……」

「そんな……」


肩を落としながら俯いた彼女に、リリィは優しい眼差しを向ける。


「アメリア。アンネリーゼお姉様も、ありがとうございます。……前に進むしかありませんの。それが、わたくしの選んだ道……」


自分に言い聞かせるようなその言葉に、二人はただ眉を下げることしかできなかった。

また次回

毎日が筋曜日!

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