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想いに心は踊れど

流星群の夜から、はや数日。


リリィは自室にて、日課である筋トレに勤しんでいた。

壁につけられた二つの鉄製のリングに指をかけ、肉体を持ち上げる。


「……フッ!……フッ!」


心を無にして、自分と向き合おうとするが——脳裏にカイゼルの声が響く。


『すまない……くくっ……』


手の甲で笑みを隠しながら彼が笑う。

そんな些細な仕草さえも、気持ちを惹きつけて止まない。


リリィは頭を左右に振って、余念を払う。


「……よしっ!次ですわ」


気を取り直して部屋の隅に積まれた砂利の入った革袋を肩に担ぎ上げ、スクワットを繰り返す。


「……フッ!……っ!」

『……ははっ、頬が赤いな』

「あー!だめですわ!」


咄嗟に革袋を下ろしてから頬を両手で二回叩き、気合いを入れ直す。

ジンジンとした痛みが、思考を徐々に冴えさせていく。


すると突然、ノックの音が部屋に響いた。


「どうぞ」

「リリィお嬢様、失礼致します」 


配膳カートを押しながら入室したマチルダは、自然な動きで茶の準備を始めていく。


彼女の手元にあるリリィ専用のティーカップをちらりと見ると、またカイゼルがよぎってしまう。


ソファに移動して、目の前の卓上に置かれた紅茶を眺めながら考える。


(このままでは、わたくしらしくいられませんわ……冷静さを取り戻さなければ)


今のリリィはコントロールできない心の動きに戸惑い、自身を律することが困難になっていた。

初めての恋心の手綱を握るのは、思いのほか難しいことなのだと彼女は知った。


想いに心は踊れど、カイゼルは王族だ。

そう簡単に一令嬢が惚れるには相手が悪かった。


(恋だなんだと浮かれている場合ではない……まさか、この言葉が自分に返ってくるとは……)


リリィは思わず苦笑いを浮かべた。

しばしの沈黙に、部屋に静けさが訪れる。


リリィは自身の決意を鼓舞するように、素早くティーカップを手に取り——一気に呷った。


ティーカップを卓上に戻し、マチルダに視線を向けた。


「マチルダ、アンネリーゼお姉様とアメリアの都合のよろしい日を伺ってきなさい。お二人をフェザースノウ邸の応接室へとお招きしたいのです」

「かしこまりました。すぐに確認し、お二人に約束を取り付けてまいります」

「ええ、よろしくお願いいたします」


中身のなくなったティーカップを見つめ——新たな決意を胸に、拳を固く握りしめた。

また次回

毎日が筋曜日!

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