秩序の果てに
「あなたのおっしゃる理想とやらのために、子どもたちが空腹で眠り、凍える夜を過ごす——それを過渡期と呼ぶのですか?」
「平民など愚かだ。導きのない民はいつまでも這いずるだけだ!我らが築く秩序の礎になれば、それでいい!」
リリィの炯眼が鋭さを増し、グレインの喉がわずかに震えた。
だが、彼は負けじと自論を捲し立てる。
「この行いがどれだけ崇高なことか、到底理解できないだろうな。カイゼルの掲げる理想など、腐っている!貴様ら偽善者どもが、この国を濁らせるのだ!!」
リリィは静かに彼の戯言を聞いていた。
彼女の手のひらがゆっくりと拳を作り出す。
「……私を追い詰めたとて、貴様たちは彼らの手によって消されるだろう」
狂った男の高らかな笑い声が室内に響いた——が。
「エルデナ国の残党のことをおっしゃっているのかしら?彼らなら、すでにわたくしが倒しましたわ」
「なっ、魔術師もいたはずだが!?」
「詠唱より速く動くことさえ出来れば攻撃することなど容易いですわ」
リリィの口調は冷静沈着そのものだったが、握りしめた拳を決して緩めはしない。
「今頃、わたくしの侍女が彼らを縛り上げている頃でしょう」
彼女の言葉にグレインは狼狽え——逃げ場を探すように視線を彷徨わせ、さらに後ずさった。
足音が床に落ちるたび、室内の空気がわずかに震えた。逃げ場を失った彼の背が、壁へとぶち当たる。
「わたくしだけではなく——王室及び孤児院を貶めたことは決して許されることではありませんわ!」
怒りを孕んだ拳が鋭く振り抜かれた。
「——ひっ!」
拳が、彼の頭を掠めて壁を穿ち、乾いた音が室内に響いた。
壁には深々と穴が穿たれ、砕けた木片が月光を受けてぱらぱらと床へ散った。
グレインの目が、その穴に釘付けになる。
「な……なんという、怪物が……」
「さあ、次はあなたの番ですよ。お覚悟はよろしいでしょうか?」
怒りの焔が灯った彼女の瞳がゆらりと揺らめいた——瞬間。
リリィは彼の鳩尾めがけて鋭い手刀を打ち込んだ。
「あなたのような方には、この程度で十分ですわ」
闇へと堕ちゆく意識の底で——怒りを孕んだ彼女の声が、耳の奥にこだました。
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これからもリリィらしさ全開で参ります




