表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/127

答え合わせ

「それでは、答え合わせといたしましょうか。孤児院への支援金は基本的に王室から直通です。ですが、施設の維持や修繕といった経費だけは財務局を通す形でした。そして——そこにこそ、あなたの仕掛けが潜んでいた」


リリィは机上に一枚の書類を置いた。


「こちらは、孤児院修繕補助金交付申請書です。表向きは管理費として孤児院の壁の補修、屋根の改修が申請されていました。ですが、現地には修繕の記録も請負業者の足跡もない」


彼女は鋭い視線をグレインへと向ける。


「他の名目でも管理費が引かれていました。帳簿だけが動き、お金はどこか別のところに消えていたのです」


リリィの指先が、書類の印章欄を一度だけ強く叩いた。それは抑えていた怒りが、一瞬だけ形を取ったようだった。


「ご存じで?ルドルフ宰相様の印影は春以前の書類に比べて、印の傾きや圧が異なっておりましたの」

「なん……だと?」

「ルドルフ宰相様は几帳面な方のようです——真っ直ぐに、丁寧に整えられた印影がその性格を如実に物語っていますもの」

「はっ!そんなものが何になるというのだ!」


少しの動揺をみせはしたが、彼はすぐさま彼女の指摘を鼻で笑い、一蹴した——しかし。


「そうおっしゃられると推測いたしましたので、事前にそちらの朱肉に特殊な蛍光粉を仕込ませていただきました」


捺印されたばかりの許可証を手に取り、リリィは彼の隣へ歩み寄る。


彼女の圧に押されるように、グレインは数歩ほど後ずさった。


リリィは彼がよく見えるように目線の高さまで紙を上げ、窓から差し込む光明の下へかざしてみせる。


「通常の状態では変化が見られませんが……月明かりの下では——ほら、この通り」


捺印されたばかりの印影は、彼の罪を白日の元へ晒すかのように淡く光を放っていた。


グレインはその光景に刮目し、ぐっと歯を食いしばった。


「こちらが、あなたがルドルフ宰相様の名を騙り、印を偽造していた何よりの証拠ですわ」


決定的な裏付けを目の当たりにしたグレインは顔を真っ赤にさせ、拳で机を殴打した。


「理想の国を築くために手を汚して何が悪い!あの方の理想を実現するために、私は動いたのだ!」


怒号を飛ばしながら、勢いのまま語り続ける。


「貧困も、孤児も、すべては過渡期だ。犠牲なくして進歩などない!ルドルフ宰相閣下が掲げる秩序こそ——本物の王政だ!」

「……犠牲、ですの?」


聞き捨てならない言葉に、リリィの眉がピクリと反応した。

また次回

毎日が筋曜日!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ