白日の下に
窓辺から薄雲のかかった淡い月光が室内に降り注ぐ。
部屋の最奥、窓を背にして重厚な執務机が据えられている。
左右の壁には本棚が並び、革装丁の分厚い書物が整然と並ぶ。
『統治と秩序』『王政論』『予算と信義』——そのどれもが政治と理想を語る堅苦しい題名ばかり。
まるでこの部屋そのものが、“正しさ”という名の檻に閉じ込められた男の精神を映しているかのようだった。
机の上には、わずかに整頓された紙の束。
その中の一枚を手に取り、悦楽に酔いしれていた。
表紙には金箔で——「王室緊急修繕補助金交付許可証」と書かれている。
紙の中に書かれた膨大な銀貨の額に、文字列をなぞる指先が喜びに震えた。
(舞い込んできた僥倖を逃すなど……愚かな者のする行いだ)
何よりも心酔する”あの方”の理想を実現するための転用には十分すぎる額だ。
あの方の掲げた言葉が、今も耳の奥にこだまする。
——無駄を削ぎ落とし、秩序を築け。
——真に国を導く者の手に、金は集まるべきだ。
充足感が胸の中に満ち、熱のこもった息が漏れ出た。
「あぁ、閣下……これで、理想の国に一歩近づけますぞ」
今にも浮き足立ちそうな足取りで鍵穴のついた引き出しへと近づき、あの方の印章と朱肉をすぐさま取り出す。
小さな空欄部分にしっかりと捺印し、恍惚の笑みを浮かべた。
「——その印が押されるのを待っておりましたの」
突如、凛とした声が室内に響いた。
男は勢いよく顔を上げ、目を見張った。
「なっ!?お前は、リリィ・フェザースノウ!」
ヒールの音を鳴らしながら、彼の向かい側まで歩むリリィ。
その足取りは静かでありながらも、相手を確実に射抜くかのような圧があった。
「やはり、あなたが黒幕でしたか——グレイン長官様」
「な、何の話だ?」
ゴクリと生唾を飲んだグレインは、うわべを取り繕いながら答える。
その態度だけで、このまま知らぬ存ぜぬを貫き通す気だとリリィは悟った。
「こちらに刺客まで送っておいて、いまさら何も知らないふりとは……。大変、滑稽なことですわ」
リリィは容赦のない鋭い視線を、彼に向けた。
また次回
毎日が筋曜日!




