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筋肉ではどうにもできん

——カイゼルが魔球に気づき、駆け出した頃。


リリィは王宮の一角にある鍛錬場にて騎士たちに指導を施していた。


目の前に並んだ面々を見回し、声を張り上げる。


「皆さんは、一年前の敗因をどうお考えでしょうか?そちらの方、お答えください」


指名された一人が逡巡しながら口を開く。


「敵の魔石を使った戦略……でしょうか?」

「それもありますわね。敵は魔石により魔力の供給を行い、常に最適な状態で動いていました。しかし、そこではありません」


彼に続いて、後ろの方で背の高い者が答えた。


「……指揮官が消えたことでしょうか?」

「それもありますが、一番はそこではありません。それは——」


リリィは深く息を吸い、一気に吐き出すように言い放った。


「筋肉ですわ!!」


彼女の発言に男たちは何を言っているのだと、互いに顔を見合わせあっている。


「惜しくもあの場で命を落とした方々。そして、生き抜いた方々……圧倒的に筋力が足りませんわ!」

「ですが、筋肉ではどうにもなら——」


否定しようとしたギルベルトの言葉をリリィが遮る。


「皆さんには、魔力に頼りきっています。魔力を失ってしまえば、生身で戦わなくてはいけません」


リリィは自身の腕を力強く叩き、周囲の視線を一身に集めた。


「その時こそ、筋力量の有無が勝敗を分けるのです。……わたくしは魔力を拳だけに一点集中させ、消耗を抑えることができますわ。ですが、それは誰もができる芸当ではございません」


一拍置き——男たちを、もう一度ゆっくりと見回す。


「魔力が切れれば、残されるのは己の肉体のみ。その時、動けるかどうかを決めるのが筋力なのですわ。魔力に頼りきった体では、剣も盾も重く感じられるでしょう」


彼女の言葉に空気を一変させたのは、男たちの声ではなかった。

また次回

毎日が筋曜日!

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