不安の種
「王宮内での襲撃——ということは、内部に手引きしている人物がいる可能性が高いですわ」
リリィは周囲に気づかれぬよう、声を落として言った。
「……ああ……そうだな」
カイゼルから返ってきた答えはどこか上の空だった。
(リリィ嬢が俺を庇ってくれた時……何かを感じた)
それは襲撃からの焦りか——はたまた、緊張の糸を張っていたせいか。
様々な答えが浮かんでは、どれも当て嵌まらずに消えていく。
(……どうにも釈然としないな)
「カイゼル殿下?」
「——っ!」
視界の先でリリィの手のひらが左右に揺れた。
カイゼルははっと我に返り、リリィへと問いかける。
「すまない……なんの話だっただろうか?」
普段と違った様子の彼にリリィは、不思議げに首を傾けながらも続けた。
「カイゼル殿下、敵は王宮内に潜んでいると思われます。護衛の増員の検討を」
「そうだな。どこに危険があるか分からないからな。今回の件に関してこちらでも調査を進める」
「ええ、わたくしも出来ることをいたしますわ」
リリィの言葉にカイゼルの表情が曇った。
「どうか……」
切羽詰まったような声音にリリィは立ち止まった。カイゼルも歩みを止め、体をリリィへと向けた。
「どうか、無茶だけはしないでくれ……」
彼の真剣な表情と声音に、リリィは一瞬、言葉を失った。二人の間に静かな沈黙が落ちる。
「……ええ、約束いたしますわ」
やがて、リリィは彼の思いに応えるように深く頷いた。
また次回
毎日が筋曜日!




