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ティーカップがエスプレッソカップのよう

アメリアに誘われてリリィはローゼンクロイツ邸のガゼボで優雅に紅茶を嗜んでいた。


アメリアを助けたデビュタント以来、彼女とは手紙のやり取りを繰り返し、心安い友人となっていた。


リリィの視線の先では、肩口で綺麗に整えられた亜麻色の髪が揺れる。


丸みのある濃い茶色の瞳は、初めて会った時から変わらず人懐っこく、微笑むたびに頬にできるえくぼが可愛らしい——そんな彼女と過ごす時間は、自然と心がほどけていく。


「その……普通の茶器では紅茶がいただけないと断られたのは初めてでびっくりしたのですが……。そちらの茶器は、どこで作ってもらったんですか?」


彼女はその大きな瞳に輝きを宿しながら、テーブルに身を乗り出した。


「ご興味がおありで?こちらは、王立騎士団御用達の工房にて特注で作ってもらったものですわ」

「……へええ、そういうのも作ってもらえるんですね。面白そうですけど、持ち上げられそうにないので遠慮します……」

「あら、そんなことはありませんのよ?鍛えればどうってことありませんわ」


そう言いながらリリィはアメリアに向かってドレスの長袖越しに力こぶを作ってみせた。


「さすが、リリィ様。おっしゃることが違う!」

「そんなにお褒めにならなくても……」 


リリィは少し嬉しそうにしながら紅茶を飲んだ。


アメリアはリリィが手にしている鋼鉄製のティーカップをまじまじと見つめ——何かに気づいたかのようにはっと目を見開いた。


「もしかして……」


自身のティーカップをリリィの目の前にそっと置く。

リリィはそんなアメリアの動作を不思議そうに見つめていた。


「……ああ、ダメです!もう……っ!!」


アメリアはもう耐えられないというようにぷふぅと空気の抜けるような音を口からもらした。

彼女はにやけた顔を手のひらで隠しながら肩を揺らしている。


「どうかなさったのですか?」 


くすくすと笑っている彼女を見ながらリリィは首を傾げる。


「んふ……す、すみません……んふふ。私のティーカップをリリィ様の前に置くとサイズ感がエスプレッソカップにしか見えなくて!」

「あら?……本当ですわね」


リリィは少し驚いてから柔らかく微笑み、納得したように頷いた。

そして自身のティーカップに手を添えながら語り始める。


「本来のサイズのティーカップでは飲める量も少なくなってしまいますの……なので、こちらの鋼鉄製のティーカップは大きめに作ってもらいましたのよ」

「どうりで重量感がすごいんですね」


目元の涙を拭いながら納得したようにアメリアも頷いた。


「ええ。……縁も口当たりが滑らかになるように拘りましたのよ?」

「全て計算して作ってもらっているんですね。……やっぱりリリィ様は、すごいなぁ」


アメリアは尊敬の眼差しをリリィへと向けながらふぅと息を吐いてから紅茶を口にした。


コロコロと表情を変えるアメリアはとても愛らしく、自然と視線が惹きつけられる。


「そういえば、話は変わりますけど……。手紙でおっしゃっていたカイゼル殿下とは、今どんな感じなんですか?」


彼女の質問にリリィはカイゼルとの邂逅を思い出しながら答える。


「カイゼル殿下は視察でよく孤児院に顔を出してくださいますわ」

(本当は褒章の儀でもお会いしましたが……それは伏せておきましょう)

「リリィ様から打診したという孤児院への支援の様子をですか?」

「ええ、そうですわ。それに湖にもご一緒いたしましたわ」


リリィの言葉にアメリアが驚きに目を見張る。


「えっ?それは……デートでは?」

「デート?そんなことはありませんわ」

「ええっ?それ、絶対デートですよ!」

「湖はわたくしからお願いいたしましたの」

(まあ、カイゼル殿下からのお礼でしたし……)


衝撃的な一言にアメリアの目がさらに丸くなる。


リリィの説明が足りないためにアメリアは「リリィ様から!?カイゼル殿下も許可したってこと!?ええええ?」と一人で大騒ぎを繰り広げている。


そんな彼女をよそに、リリィはティーカップに注がれた紅茶の波紋を見つめた。


「……そういえば、こんなこともありましたわね……」


リリィはぽつりとぽつりと孤児院での出来事について静かに語り出した。

また、次回!

毎日が筋曜日!

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