柔らかな微笑みの中で
彼に寄り添うリリィは淑女らしさを崩さず、それでいて実用的な乗馬服を身に纏っていた。
深い焦茶の革製ジャケットは体に沿うように仕立てられており、腰のあたりまでの丈がすっきりとした印象を与える。
動きやすさを重視した乗馬ズボンは淡いベージュ色で、革ジャケットとの色合いが上品に調和していた。足元は膝下まで覆う黒の乗馬ブーツ。
そして腰まである赤髪は視界を邪魔しないように後頭部の高めの位置でまとめられていた。
リリィはアークを連れ、馬場内をゆっくりと一周歩いてみせた。
最初の位置まで辿り着くとリリィは鞍を掴み、左足を鐙にかけて台を使わずにアークへと颯爽と乗ってみせた。
姿勢を正し、手綱をしっかりと握る。両足の側面でアークの腹部を軽く蹴り、合図を送った。
「ハッ!」
リリィの掛け声が響いたと同時にアークは常足でゆっくりと馬場内を歩き出した。
常足で二周ほど歩いた後、アークは速足へと移行する。リリィはリズムに合わせ、鐙を踏む両足に力を入れながら鞍の上で立ったり座ったりを繰り返す。
遠目だったがリリィとアークの姿は子供たちの瞳にはっきりと映っていた。
「……すごい。かっこいい」
「まぁ、リリィだからあんだけ出来て当然だよな!」
「なんでユアンが偉そうなのよ」
胸を張るように背を反らしているユアンの小脇をリディアが小突いた。
ユアンが「いてぇよ!」と言いながらも誇らしげに笑う。ユアンとリディアは一瞬、顔を見合わせ——そして。
彼につられるように嬉しげに笑った。
アークを馬房の中に入れた後、リリィが子供たちのいる厩舎まで戻ってきた。
子供たちは一斉にリリィへと歩み寄る。
「アークもリリィもかっこよかった!」
「すごかった!!」
「あんなに大きいのもいるんだね!!」
リリィは一人一人の感想をしっかりと聞きながら満足げに頷き、微笑んだ。
「楽しんでいただけたのでしたらよかったですわ。名残惜しいですが、もう孤児院に戻らなくてはいけない時間ですわ」
時刻はすでに夕刻。
楽しい時間というのはあっという間に過ぎていく。
リリィの言葉に子供たちは落胆の声を上げた。
「皆さんにとっては夢のような時間だったと思います。ですが、決して皆さんの未来にないとは言い切れませんわ。わたくしがお伝えした言葉を覚えていますか?」
テオがこくりと頷いて、リリィの言葉を思い出しながら復唱する。
「今は孤児院だけど、頑張れば未来は変わるんだよね」
「その通りですわ。未来は変えられる。そのことを忘れずに過ごしてくださいね」
「はい!」
子供たちの元気のいい返事と、未来への希望がつまった表情にリリィは目元を和らげながら優しく微笑んだ。
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感謝感謝です
これからもリリィの物語をお楽しみください
孤児院編2はこれにて閉幕です
また次回
毎日が筋曜日!




