2.誰がレディを守るのか
そんなリリィなりのストレッチを繰り返している時だった——。
「——助……けて!」
彼女の耳がピクリと反応を示す。
噴水のせせらぎに紛れて、微かに聞こえた声をリリィは聞き逃さなかった。
素早く姿勢を戻し、神経を集中させながら再び耳を澄ます。
「助けて!……っ……誰か!」
必死に助けを求めるその声は澄んでいながらも、どこか幼げな響きを含んでいた。
リリィは素早く頭の中に王宮の見取り図を広げる。
(——今の声は、南東。庭園の奥、背の高い生け垣が立ち並ぶ一角から聞こえましたわ)
「こっちですわね」
無駄な動きを一切せず、迷いなく声のする方へと歩を進める。
噴水のせせらぎから離れるにつれ、日差しが緑の葉を透かし柔らかな光と影が入り混じる。
まるで昼下がりの夢のような、長閑な庭園の一角——だからこそ、不穏な声は際立って聞こえた。
どうやら揉めているのは一組の男女のようだ。
「やっ、やめてください!」
「いいだろ?エスコートの相手がいなんだったら、俺でも!」
「……嫌っ!!」
リリィは足音を立てず、彼らの後ろまで近づいた。
それはまるで風のように静かな登場なのにも関わらず、圧倒的な存在感を纏っていた。
リリィは一人で助けられるのでしょうか……
次回も、お楽しみに!
毎日が、筋曜日!