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夢見る先には

本を手にユアンの目の前に座ったリゼットが彼に聞く。

今日の彼女は肩下まで伸びた髪を両サイドで三つ編みにし、先を赤いリボン付きのゴムで結んでいる。


「ユアンはなんの本にしたのよ?」

「もちろん、筋トレの本だ!そういうリゼットは?」


ユアンは日焼けした頬をさらに赤くさせながらリゼットに向かって胸をはり、本の表紙を見せびらかした。


「私は料理の本にしたわ!」


三つ編みを気にしながら、少し大人っぽく言葉を選んだ。


そんな彼女の話し方に違和感を覚えたユアンは「……ん?」と声を漏らしながら不思議そうにリゼットに聞く。


「……なんか聞いたことあると思ったら……それ、リリィの口調そっくりじゃん」

「私だってお姉さんだもん。すこしくらい背伸びしたっていいじゃない!」


リゼットは恥ずかしさを誤魔化すためか、口を尖らせながら続ける。


「リリィは優しいし……それに憧れの人だから……」


彼女の言葉にユアンは軽く目を見開いた後、少し気まずげに視線を落とした。


「まっ、まぁ……リゼットがそれでいいと思ってるならいいけどさ」


そんなやり取りをしていたリリィたちの周りに、思い思いの本を手にした子供たちが集まっていく。


「なににしたのー?」

「わたしはお姫さまの話!」

「僕は強そうな剣士の本」

「……私は魔力について……」


優しい笑みを浮かべながらリリィは子供たちに聞く。


「皆さんは将来、何になりたいのですか?」


ユアンが「はいっ!」と元気よく手を上げながら答える。


「俺はもちろん、騎士だな!筋トレ頑張って孤児院を出たら国を守るんだ!」


ユアンはニカッと歯をみせながら、筋肉がつき始めた腕で力こぶをつくってみせる。

そんな彼をみながらリゼットは少し恥ずかしそうに口篭りながら言う。


「私は……料理人!……その……リリィのお屋敷で働きたいから!」

「まあ!素敵な夢ですわ!ぜひ、よろしくお願いいたしますわ」


リリィはリゼットを見つめながら嬉しそうに顔を綻ばせる。

リゼットは頬を薄らと赤く染めながらは「えへへ……」と呟きながら俯いた。


「わたしはパン屋さん……」

「僕は街の工房で働きたいなぁ」

「あたしはお花屋さん!」


子供たちは口々に未来への希望を述べていく。


リリィはゆっくりと頷いてから、子供たちの心に届くように語る。


「皆さん、とても素敵な夢ですわ。これから先、数えきれないほどのいい事……または悪い事も起きるでしょう」


子供たちは真剣な表情で彼女の話に耳を傾ける。


「ですが、挫けそうな時は嬉しかった事、楽しかった事を思い出してください。それはきっと皆さんの心の支えになりますわ」


彼女の言葉は子供たちの胸の奥底にしっかりと刻まれていく。


「はい!」


子供たちが声を揃えて元気よく返事をした。

リリィの周りには温かな火が灯ったかのように子供たちの笑顔が輝いていた。


「……リリィの夢は?」


テオがおずおずとしながら問いかける。


「わたくしの夢はこの国が平和で、周りの人たちが幸せだと嬉しいですわ」

「それじゃあ、ほかの人の幸せじゃない!リリィのためじゃない!」 


リゼットが頬を膨らませながらリリィに抗議する。

彼女の言葉に同調するように他の子たちからも「そうだよ!」と声が上がった。


リリィはほんの少し視線を落とし、考える。


(わたくし自身が望む事……)


家の繁栄。

貴族としての務め。

淑女として正しくあること。


(どれも当たり前のことですわね……)


暫しの沈黙の後、真剣な眼差しを子供たちに向けながらリリィは口を開いた。


「……筋肉の増強でしょうか?」


子供たちは一瞬——きょとんとした表情をした。


そしてお互いに顔を見合わせ合い、やがてぷっと吹き出したように笑い出した。


「ぞうきょうってなにぃ?」

「リリィらしいな!筋肉を増やすって事だよな?」

「なにそれー!おもしろい!!」


そんな子供たちの賑やかな笑い声の中、リリィは幸せそうにふわりと微笑んだ。


また、次回

毎日が筋曜日!

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