ランプが揺らめく書庫にて
公爵邸の長い廊下を子供たちを引き連れながら歩く。左側には大きな窓が嵌め込まれ、外の光が廊下を明るく照らす。
右側のドアを四つすぎ、五個目の扉の前でリリィはピタリと立ち止まった。
彼女たちの目の前には公爵家の紋章と緻密な彫刻が施された重厚感のある両開きの扉。
いかにも威厳のある造りの扉を見上げ、子供たちは思わず唖然とした。
「……でか」
「重そうな扉だね……」
「ええ。とても頑丈に造られていますのよ」
そう言いながらリリィがドアを開け放った。彼らの目に飛び込んできたのは——。
天井までを埋め尽くすほどの本棚に、数え切れない数の本たち。室内からは革の匂いと紙の古い香りで満たされていた。
書庫は二階建ての作りになっている。
部屋の奥の左右には二階へと続く階段が設えられ、壁にはオイルランプが揺らめき、穏やかな光が室内を包んでいた。
リリィが言っていた通り、所々に使用人たちが配置されている。
「……っ!」
「すげっ!すげぇぇ!!」
好奇心の赴くままに頭を左右に忙しなく動かしながら子供たちは書庫内を見回す。
「なにこれ!なにこれ!」
「わああああ!」
「さあ、皆さん!時間は沢山ありますわ。じっくり選んできてください」
「はい!」
元気よく返事をした子供たちは駆け出したい気持ちを抑えながら、思い思いに書庫探索を始めた。
書庫の一角にある長机。リリィはその中央の席に座る。そして棚から持ってきていた本を卓上に置いた。
「リリィ、なに読んでるんだ?」
腕立て伏せが出来ないと泣いていた男の子——ユアンがリリィの右隣の椅子に腰を下ろしながら聞く。
「こちらはサバイバル本ですわ」
「サバイバル?」
「ええ。これがあれば自然の中でも困りませんわ」
リリィは語りながら表紙を手のひらで軽く撫でた。
「リリィはなんでもできるのか?」
ユアンが好奇心旺盛な眼差しでリリィを見上げた。
「ええ。魔獣狩りに、火起こし、紐の結び方。野営地の作り方までも知り尽くしていますわ」
「野営地?」
「その日に寝たり起きたりする場所ですわ」
「へぇー!やっぱりリリィってすげぇな!」
「ユアンもご興味があれば教えてさしあげますわ」
「面白そうじゃん!」
リリィは彼の返答に嬉しそうに微笑みながら説明していく。
「まずは野営地の場所を決めますわ。高台や川辺は獣害、水害がありますので避けること」
「うんうん。それで?」
ユアンが前のめりになりながら続きを促す。
「地面は石や根を取り除き、落ち葉や草で下敷きを作りますわ」
「痛くないように?食べ物はどうするんだ?」
「毒のない野草を食したり、小動物を罠で捕まえたり……または魔獣を狩りますわ」
「……魔獣。それはリリィにしか出来ないと思うぜ……」
「そうでしょうか?コツを掴めれば皆さんにもいずれ出来るようになりますわ」
「……それは難しそう」
眉を潜めながら答えたユアンを見つめながらリリィは首を傾げた。
子供たちとのゆっくりとした時間
また、次回!
毎日が筋曜日!




