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公爵邸ツアー

ホーソンと別れ、建物を眺めながら進むと目の前には子供たちが見上げるほどの大きな玄関扉。その前でリリィが立ち止まり、振り向いた。


「続きまして、こちらが大広間ですわ」

「おおひろま?」

「ええ、パーティーやダンスをしたり、お客様を迎え入れる際に使いますわ」


再び扉へと体を向けたリリィは取っ手に両手をかけ——一気に開け放った。


「わあああー!!」


子供たちの視界に広がるのは見上げるほどの高い天井。

煌びやかなシャンデリアの光が反射し、大理石の床にキラキラと模様を描く。中央には赤い絨毯が敷かれ、壁際には美しい調度品の数々が置かれていた。


「……すごい!!」


子供たちはその大きな瞳を溢れんばかりに見開いた。

大はしゃぎしてその場でジャンプを繰り返す子。あまりの広さに自分が小さく思えて、思わずリリィの裾をギュッと掴む子もいた。


リリィは彼らに慈愛に満ちた笑みを向ける。


一人の男の子が両手を握りしめ、鼻息を荒くしながらリリィを見上げた。


「リリィのお家って凄いね!!」

「否定はいたしませんわ。わたくしたちにはこの場所を守り続ける義務があります」

「かっこいいね!!」

「ふふっ、ありがとうございます」


じっくりと大広間を見回った一行は次の場所へと向かう。



「さあ、皆さん。次は食堂ですわ。こちらは多くのお客さまを招いて食事が出来るように広く造られていますわ」


リリィが扉を開けると、再び歓声が上がる。


「ぼくたちのテーブルよりすっごく大きいね!!」


数名の子供たちが楽しそうに部屋の端に向かって駆け出した。その中の一人の男の子が足をもつれさせた。


「あっ!」


倒れると思った矢先——大きな腕が体を支え、足がふわりと宙に浮いた。


「走ると危ないですわ」


頭上から聞こえるのはリリィの優しい声。気づけば男の子はリリィの逞しい腕の中で抱っこされていた。


「……っ、……はい」


彼は少しだけ頬を赤くしながら俯いた。

倒れそうだったときよりも、今の方がとくとくと心臓がうるさい。


(これは……何?)


男の子はその感情に首を傾げた。


そんな彼を腕に抱えながら、リリィは子供たちを集めて軽く手を叩いて注目を促した。


「皆さん、次はお待ちかねの書庫へご案内いたしますわ」


子供たちは一斉に喜びを全身であらわす。そんな中、リリィの凛とした声が響き渡った。


「書庫ではこちらの決まりを守ってもらいますわ。まずひとつ、走らないこと。怪我の原因になりますわ。次に、汚したり破いてしまった場合はすぐにわたくしに伝えること」


リリィは子供たちを見回しながら続ける。


「会話はあまり大きな声でなければ大丈夫ですわ。高い場所にあるものはわたくしか、シスターの方々。また、書庫にいる公爵邸の者に声をかけること。わかりましたか?」

「はぁーい!」

「そして、皆さんにはフェザースノウ邸からお土産として二冊の本を差し上げますわ。本棚と何が欲しいのか心の中の気持ちをじっくりと照らし合わせてお選びください」

「二個……もらっていいってこと?」


魔力が少ないと泣いていた男の子——テオがくるりとカールした栗色の前髪の隙間から、期待に満ちた眼差しでリリィを見上げる。


「ええ。そうですわ」

「やった!あたし、料理の本がほしい!あとは手芸の本!」

「僕は冒険の話がいいなぁ」

「わたしは王子様とお姫様の本!」


それぞれが喜びながら口々に望む本を述べていく。


「では、そろそろ向かいましょうか」


そんな彼らをリリィは優しい眼差しで見つめながら移動を促した。

また、次回!

毎日が筋曜日!

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