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パウンドケーキの食べ方

その笑みにガクガクと震えながらカミラが隙だらけの右フックを振るう。


「こっ、こここ、こちらの目の前にある豪華なアフタヌーンティーセット。素敵でしょう?こち、ここ……こちらはグランシェ家専属のパティシエのものですのよぉ!」

「本当に、美味しそう!!あちらにいらっしゃる方がパティシエの方です!!︎」


続けて、ドロアが早口で捲し立てながら、狙いが定まっていない左フックでリリィを挟むように拳を振るった。


リリィはガゼボの脇に控えていたパティシエを一瞥し、すぐさまマチルダへ視線を送った。

彼女の意図を瞬時に汲み取ったマチルダは何も言わぬまま、パティシエに歩み寄り、耳打ちをしてから彼をそっとその場から遠ざける。


両サイドから攻める二人の拳に合わせ、ロゼリナがリリィの顔——ど真ん中を拳で狙う。


「こっ!この、バターたっぷりのパウンドケーキ!美味しいのですけれど太ってしまいますわ!!」


そう言いながら一口サイズにフォークで刺して口に運ぶ。もはや、これがマウントなのかそうでないのかロゼリナには分からなくなってきていた。


「太ってしまう……それなら、こうすればよいのですわ」


リリィはおもむろに、目の前に置かれているパウンドケーキを手のひらにのせ——思いっきり握りつぶした。

そして、それを口にひょいっと放り込む。


その行動に三人は驚愕に目を見張った。


「なっ、ななな、なんてことを!!」


ロゼリナは大いに狼狽えた。そんな彼女を涼しい目線で見ながらリリィは高らかに言ってのける。


「少々、無作法ではありますが……こうすればカロリーゼロですわ!!」


バックステップで半歩後ろへと下がり、三人の拳を素早くかわしたリリィ。彼女の鋭い拳が三人の腹部を的確に打つ。


「ぐっ……」

「かはっ!!」

「くぅ!!」

(そんなことってある!?)


再び、三人の心の声が綺麗に揃う。

ロゼリナの顔はすでに真っ青だ。


「わたくし、よってたかって弱いものいじめ……だなんて嫌いですわ」


リリィはすっと視線を卓上のティーカップへと落とし、ぽつりと呟いてから紅茶を飲み干した。


(弱いもの!?どの口が!!)


彼女の放った言葉に、三人は思わず心の中でツッコミを入れた。


一瞬の静寂が訪れ、穏やかな風が吹く。


「……っ……握りつぶした……パウンドケーキを握りつぶしましたわぁ」


どこか遠い目をしながら、カミラはうわ言のように繰り返す。


「……勝てない……こんなの無理よ!」


ドロアは目の端に涙を溜め、震える全身を両腕で抱きしめている。


「……完敗……ですわ」


ロゼリナはそう溢しながら椅子に深く背を預け、真っ白に燃え尽きている。

勝敗は一目瞭然だった。戦いの終わりを告げるゴングの鐘がガゼボに鳴り響く。


リリィ・フェザースノウには何もかも敵わない。むしろ、手を出してはいけない相手だったのだと三人は放心状態のまま悟った。


「……あら、もう終わりですの?それでは、わたくしは筋トレのお時間が迫っておりますので失礼いたしますわ。ご機嫌よう、皆さま」


彼女たちの様子を一瞥し、スッと立ち上がりガゼボから出る。

三人に向かって丁寧にカーテシーをしてからリリィは庭園を去っていく。


花が咲き誇る華やかさの中。

三人の放心した表情と力の抜けた姿だけが、ひときわ異様に際立っていた。

これにて、令嬢たちの茶会 閉幕です

また、次回!

毎日が筋曜日!

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